(2019年10月31日)
書は本文621頁の大作で、神話学の最終巻にふさわしい内容の充実を質量ともに見せている(量には圧倒される)。全巻の紹介は長大になるうえ、投稿子の力量として不可能であろうから、今回連載は;家族の秘密Secrets de famille (第一部)と木霊合わせJeux d’echos(二部)を取り上げます。量にして140頁、全体の約4.5分の1となり、部分紹介の枠を超えない事につきご容赦を。
前文(Prologue)は取り上げる部族の名称、居住域、民族誌が語られます。主としてKlamath、Modoc族が取り上げられます。居住はロッキー山脈西側、プラトーと呼ばれる高原となります。(HPアラカルトにネットから採取した両部族の人物像、居住地をまとめている、HPへの投稿は11月にも)
神話学における基準神話M1(Bororo族、火と水の起源)はブラジルマトグロッソ地に発生し北アメリカの太平洋沿岸に伝播したとレヴィストロースは主張している。経路について説明はないが、まずアマゾニアに居住していたTukuna族、Arawak族に移動しカリブ海諸民族へ、北米には小舟で渡れるフロリダから上陸、ミシシッピー、ミゾーリを経て大草原、大平原地域(Arapaho、Seyenne族など、食事作法の起源の後半で紹介している)に伝播したとは想像に易しい。冒頭に2の神話を挙げている。
写真:Klamath族婦人ネットから採取
M529 Klamath-Modoc族 英雄の誕生(25頁)
女Letkakawashは子を背に負い、燃えさかる薪火の前に立った。因縁浅からぬ一人の魔女の死骸を焼かむと熾した業火であった。一震えもたじろがず火に見入るは背に負うこの子を道連れ、飛び込んで自からこの火に死に絶えるつもりであった。飛び込むすんでのところ、Letk…の動きを怪しみ空から見張っていた俗神Kmukamchが後ろから二人を跳ねとばした。しかし助けられたのは背の子のみ、それも手足胴がばらけ飛び散り、母親の勢いはそがれず飛びこみ焼け死んだ。Kmu..は子の破片を丁寧につなぎ合わせ、再生を目論むべく;
<Embarrasse du petit être , il l’introduisit dans son genou, rentra chez lui et se plaignit a sa fille d’avoir contracte un ulcere qui le faisait beaucoup souffrir. La fille essaya d’extraire le plus. A sa grande surprise , un enfant sortit de la plaie>
上の小写真の拡大。胸飾りはヤマアラシのトゲ毛。
この子を如何にせん、俗神は己の膝に埋め込んだ。帰り道はびっこ引き引き、自宅に戻って娘に潰瘍が腫れて痛くてたまらない旨訴え、膨れあがりを娘が除いていると切り口から子が飛び出てきた。
子は泣きやまない。「父親」は名を与えれば泣き止むかと、いろいろな名を呼び上げるのだが一向に止まない。<Aishilamnash>その意味「体の中に隠された者」が発せられたら泣きを弱め、愛称にAishish(以下イシス)を選んでやっと泣き止んだ。イシスは「父」のもとで育ち立派な若者に成長した。賭け事に天分を持ち、誰にも負けない手練れ者ぶりを発揮し、その富は豪華な衣服を着するに至った。賭で父にも手加減せず、それがもとで諍いに発展する。
図:青がKlamath族の現在の居住域(保護地区)ORオレゴンとCAカリフォルニアにまたがる。
母Letka…が自殺を選んだ経緯、死骸とはてた魔女の関係は本神話には説明がない。もう1の神話を。
M530a Klamath族 鳥の巣あらしle denicheur d’oiseux(26頁)
養父Kmu…とイシスは動物を創造した、特に魚類にはそれらの創造のみならず、漁労を上手く運ぶための簗場を作るなど便宜をはかった。
イシスは複数の妻を持つ。妻の一人にKmu…が懸想しイシスを村から放逐しようと画策した。<Il pretendit que des oiseaux niches sur un plant étaient des aigles, et il ordonna a son fils d’ aller les capturer après s’etre deafait de sa tunique, de sa ceinture et de son bandeau frontal. Le héros mis a nu grimpa et ne trouva que des oisillons d’espece vulgaire.
Kmu…は鷲が木の上に巣を作ったと主張し、イシスによじ登って雛を捕らえよと命じた。登るさいには上衣(tunique)、ベルトそして額飾りを脱げとも(身軽にならねば、巨木には登れぬとの指示)。イシスが樹上に見たのはありふれた鳥の巣と価値のない雛だけだった。その直後、木がどんどんと生長しイシスはもはや、木から下りられない。
<Kmukamch s’appropria le coutume de son fils et prit son apparence physique. Seule la belle-fille qu’il convoitait fut dupe de la supercherie ; les autres le rebuterent , convaincues qu’il n’était pas leur mari.
根元に脱ぎ捨てられていた イシスの服を着こしめし、顔つき体つきを真似してイシスになりすましたKmu…、何食わぬ顔でイシスの妻達に迫った。ただ一人、彼が首っ丈の「可愛い娘」は騙されたが、他の妻らは化け姿を疑い、夫イシスではないと決めつけた。
骨と皮だけになったイシスはチョウチョに救われ、回復し村に戻る。始めに息子が気づいて、第一妻、二妻、三妻と続いた。息子にKmu..が放さないパイプを取り上げさせて火に投じKmu... を殺害した。Kmu...はイシスら家族に復讐せむと燃えさかる木ヤニを降らせた。地上はとけるヤニで被われた、イシスらは小屋に籠もって耐えしのいだ。
神話学4巻「裸の男HommeNu」を読む 1の了
次回は11月2日を予定 部族民通信HP(WWW.tribesman.asia)と同時掲載を計画しています。HPとブログの体裁の差異からブログ2回分をHPの1頁にと考えます。HPの開始をブログで案内いたします
書は本文621頁の大作で、神話学の最終巻にふさわしい内容の充実を質量ともに見せている(量には圧倒される)。全巻の紹介は長大になるうえ、投稿子の力量として不可能であろうから、今回連載は;家族の秘密Secrets de famille (第一部)と木霊合わせJeux d’echos(二部)を取り上げます。量にして140頁、全体の約4.5分の1となり、部分紹介の枠を超えない事につきご容赦を。
前文(Prologue)は取り上げる部族の名称、居住域、民族誌が語られます。主としてKlamath、Modoc族が取り上げられます。居住はロッキー山脈西側、プラトーと呼ばれる高原となります。(HPアラカルトにネットから採取した両部族の人物像、居住地をまとめている、HPへの投稿は11月にも)
神話学における基準神話M1(Bororo族、火と水の起源)はブラジルマトグロッソ地に発生し北アメリカの太平洋沿岸に伝播したとレヴィストロースは主張している。経路について説明はないが、まずアマゾニアに居住していたTukuna族、Arawak族に移動しカリブ海諸民族へ、北米には小舟で渡れるフロリダから上陸、ミシシッピー、ミゾーリを経て大草原、大平原地域(Arapaho、Seyenne族など、食事作法の起源の後半で紹介している)に伝播したとは想像に易しい。冒頭に2の神話を挙げている。
写真:Klamath族婦人ネットから採取
M529 Klamath-Modoc族 英雄の誕生(25頁)
女Letkakawashは子を背に負い、燃えさかる薪火の前に立った。因縁浅からぬ一人の魔女の死骸を焼かむと熾した業火であった。一震えもたじろがず火に見入るは背に負うこの子を道連れ、飛び込んで自からこの火に死に絶えるつもりであった。飛び込むすんでのところ、Letk…の動きを怪しみ空から見張っていた俗神Kmukamchが後ろから二人を跳ねとばした。しかし助けられたのは背の子のみ、それも手足胴がばらけ飛び散り、母親の勢いはそがれず飛びこみ焼け死んだ。Kmu..は子の破片を丁寧につなぎ合わせ、再生を目論むべく;
<Embarrasse du petit être , il l’introduisit dans son genou, rentra chez lui et se plaignit a sa fille d’avoir contracte un ulcere qui le faisait beaucoup souffrir. La fille essaya d’extraire le plus. A sa grande surprise , un enfant sortit de la plaie>
上の小写真の拡大。胸飾りはヤマアラシのトゲ毛。
この子を如何にせん、俗神は己の膝に埋め込んだ。帰り道はびっこ引き引き、自宅に戻って娘に潰瘍が腫れて痛くてたまらない旨訴え、膨れあがりを娘が除いていると切り口から子が飛び出てきた。
子は泣きやまない。「父親」は名を与えれば泣き止むかと、いろいろな名を呼び上げるのだが一向に止まない。<Aishilamnash>その意味「体の中に隠された者」が発せられたら泣きを弱め、愛称にAishish(以下イシス)を選んでやっと泣き止んだ。イシスは「父」のもとで育ち立派な若者に成長した。賭け事に天分を持ち、誰にも負けない手練れ者ぶりを発揮し、その富は豪華な衣服を着するに至った。賭で父にも手加減せず、それがもとで諍いに発展する。
図:青がKlamath族の現在の居住域(保護地区)ORオレゴンとCAカリフォルニアにまたがる。
母Letka…が自殺を選んだ経緯、死骸とはてた魔女の関係は本神話には説明がない。もう1の神話を。
M530a Klamath族 鳥の巣あらしle denicheur d’oiseux(26頁)
養父Kmu…とイシスは動物を創造した、特に魚類にはそれらの創造のみならず、漁労を上手く運ぶための簗場を作るなど便宜をはかった。
イシスは複数の妻を持つ。妻の一人にKmu…が懸想しイシスを村から放逐しようと画策した。<Il pretendit que des oiseaux niches sur un plant étaient des aigles, et il ordonna a son fils d’ aller les capturer après s’etre deafait de sa tunique, de sa ceinture et de son bandeau frontal. Le héros mis a nu grimpa et ne trouva que des oisillons d’espece vulgaire.
Kmu…は鷲が木の上に巣を作ったと主張し、イシスによじ登って雛を捕らえよと命じた。登るさいには上衣(tunique)、ベルトそして額飾りを脱げとも(身軽にならねば、巨木には登れぬとの指示)。イシスが樹上に見たのはありふれた鳥の巣と価値のない雛だけだった。その直後、木がどんどんと生長しイシスはもはや、木から下りられない。
<Kmukamch s’appropria le coutume de son fils et prit son apparence physique. Seule la belle-fille qu’il convoitait fut dupe de la supercherie ; les autres le rebuterent , convaincues qu’il n’était pas leur mari.
根元に脱ぎ捨てられていた イシスの服を着こしめし、顔つき体つきを真似してイシスになりすましたKmu…、何食わぬ顔でイシスの妻達に迫った。ただ一人、彼が首っ丈の「可愛い娘」は騙されたが、他の妻らは化け姿を疑い、夫イシスではないと決めつけた。
骨と皮だけになったイシスはチョウチョに救われ、回復し村に戻る。始めに息子が気づいて、第一妻、二妻、三妻と続いた。息子にKmu..が放さないパイプを取り上げさせて火に投じKmu... を殺害した。Kmu...はイシスら家族に復讐せむと燃えさかる木ヤニを降らせた。地上はとけるヤニで被われた、イシスらは小屋に籠もって耐えしのいだ。
神話学4巻「裸の男HommeNu」を読む 1の了
次回は11月2日を予定 部族民通信HP(WWW.tribesman.asia)と同時掲載を計画しています。HPとブログの体裁の差異からブログ2回分をHPの1頁にと考えます。HPの開始をブログで案内いたします