猿猴捕月図鐔 金家
猿猴捕月図鐔 山城國伏見住金家
禅の問答に似て深い意味を備えており、しかも装剣小道具の題として良く見られるのが猿猴捕月(えんこうほげつ)図である。水に映った月を取ろうと腕を伸ばすも、それが適わず、ついには水に落ちてしまう。即ち、無謀な望みを避け己の力量を知ることの重要性を示しているわけだが、図柄構成としても面白いと思われたのであろう。
良く知られている桃山時代の絵師長谷川等伯の同図(南禅寺金地院蔵)にも似ているのが、ここに紹介する金家(かねいえ)の鐔である。鉄地を抑揚変化のある槌目地(つちめじ)に仕上げ、耳も打ち返して肉高く量感を持たせ、高彫と象嵌を駆使している。鐔という特殊な画面に描かざるをえないとはいえ、墨絵のような簡素な表現ながら今にも水面に手が届きそうなこの瞬間に動きを与えている。
金家の作品を鑑賞する上で興味を抱くのが表面処理。鍛えた鎚の痕跡を鮮明に残し、これに鏨を加えて地荒し風に変化を与えている。例えば裏面の右下の山裾あるいは草叢と思われる部分や、左上の堂塔の背後の空間など。特に空に当る部分の地の動き、変化は自然味があり、指先において鑑賞すれば、まさに古刀匠や古甲冑師の古作の世界。表の地も同様の処理だが、月が映っている水面の毛彫による微妙な動きも金家らしい繊細さと古調を兼ね備えており、見どころと言えよう。
猿猴捕月図鐔 山城國伏見住金家
禅の問答に似て深い意味を備えており、しかも装剣小道具の題として良く見られるのが猿猴捕月(えんこうほげつ)図である。水に映った月を取ろうと腕を伸ばすも、それが適わず、ついには水に落ちてしまう。即ち、無謀な望みを避け己の力量を知ることの重要性を示しているわけだが、図柄構成としても面白いと思われたのであろう。
良く知られている桃山時代の絵師長谷川等伯の同図(南禅寺金地院蔵)にも似ているのが、ここに紹介する金家(かねいえ)の鐔である。鉄地を抑揚変化のある槌目地(つちめじ)に仕上げ、耳も打ち返して肉高く量感を持たせ、高彫と象嵌を駆使している。鐔という特殊な画面に描かざるをえないとはいえ、墨絵のような簡素な表現ながら今にも水面に手が届きそうなこの瞬間に動きを与えている。
金家の作品を鑑賞する上で興味を抱くのが表面処理。鍛えた鎚の痕跡を鮮明に残し、これに鏨を加えて地荒し風に変化を与えている。例えば裏面の右下の山裾あるいは草叢と思われる部分や、左上の堂塔の背後の空間など。特に空に当る部分の地の動き、変化は自然味があり、指先において鑑賞すれば、まさに古刀匠や古甲冑師の古作の世界。表の地も同様の処理だが、月が映っている水面の毛彫による微妙な動きも金家らしい繊細さと古調を兼ね備えており、見どころと言えよう。