鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

花文小透図鍔 赤坂忠重 Tadashige Tsuba

2016-03-31 | 鍔の歴史
花文小透図鍔 赤坂忠重


花文小透図鍔 赤坂忠重

赤坂派の魅力を伝え、しかも新趣の作風を展開して人気を博したのが忠重。梅花に撫子とはすぐに判るが、歪めた意匠としているところが面白い。歪めた車透に通じるところがあるのだが、明らかに独創的だ。また、忠重は大胆な作風をも得意とした。本作のように異風でしかも大きく花文を布置しているところは、同時代他工にはないところ。何度も紹介しているが、とても素敵な作だ。

歳寒三友透図鍔 古赤坂 Koakasaka Tsuba

2016-03-30 | 鍔の歴史
歳寒三友透図鍔 古赤坂


歳寒三友透図鍔 古赤坂

松竹梅に雪を加えて歳寒三友とした作。全体が地透の手法になる作であるため、板鐔に小透の趣とは異なるが、陰陽の表現が素敵だ。独特の意匠からなる透かしの線と構成は、赤坂鐔工の大きな特徴。ここでは枝振りに現れている。梅花は甲冑師鍔に見られるような古典的小透の継承で頗る分り易い。面白い作例である。因みに古赤坂とは、初、二、三代までの時代の上がる赤坂派の作を指す。

花文に車小透図鍔 Tsuba

2016-03-29 | 鍔の歴史
花文に車小透図鍔


花文に車小透図鍔

素銅地に銀色絵であろうか、味わい深い色調の地金も魅力の一つ。放射状に切られた線模様を背景に、梅花を想わせる小透と、蒔絵作品であまりにも有名な、流れるような車の図を陰に表現して透かし去っている。意匠の面白さがあろう。

轡紋小透図鍔 古金工 Kokinko Tsuba

2016-03-28 | 鍔の歴史
轡紋小透図鍔 古金工


轡紋小透図鍔 古金工

 平造の刀に装着されていたであろうことが推考される、面白い作。古拙な素銅魚子地に薄肉彫りで天衣のような細い花のような、帯状に広がる文様が配されており、左右に轡を重ねた紋が陰陽に表現されている。上部のミッキーマウスのような小透は家紋ではなさそうで面白い。下の腕抜緒の小穴は後に設けられたもの。

酢漿草紋小透図鍔 山吉兵 Ymakichibei Tsuba

2016-03-26 | 鍔の歴史
酢漿草紋小透図鍔 山吉兵


酢漿草紋小透図鍔 山吉兵

 明らかに家紋。酢漿草紋だが、アルファベットのHあるいはTに横一は何を意味しているのだろう。腕抜緒の小穴が別に設けられていることから、これらの小透は明らかに文様としての意味が求められたもの。紐を通すにしても線状の透かしでは用を為さない。山吉兵らしい表情豊かな鍔面が大きな魅力であることに加え、謎に満ちた陰透が興味深い作である。

花文図鍔 埋忠 Umetada Tsuba

2016-03-24 | 鍔の歴史
花文図鍔 埋忠


花文図鍔 埋忠

桃山頃の埋忠派の特徴が良く現れた作。金色絵はかなり擦れて失われているため素地がうっすらと見えて景色となっている。ここが古作の面白さであり、健全度の高いものが良いのであれば幕末の手綺麗な作を求めればよろしい。大胆で妙なる表情…これが魅力だ。小透が面白い。花文は比較的分り易い。□

山水図鍔 鎌倉 Kamakura Tsuba

2016-03-23 | 鍔の歴史
山水図鍔 鎌倉



山水図鍔 鎌倉

 だから、これも判らない。背景は山陰に東屋、雲が流れ、松樹に菖蒲のような植物…曲線の透かしは下の方に位置していることから川の流れか?すると縦長の細い楕円形は何だろう。鎌倉鍔の面白さは、こうした文様の組合せで、ここから何か通じ合う意味を導き出すことの無意味さを思い知らされることにあるようだ。

鳥に雅文図鍔 鎌倉 Kamakura Tsuba

2016-03-22 | 鍔の歴史
鳥に雅文図鍔 鎌倉


鳥に雅文図鍔 鎌倉

 もう何だか判らない。後に開けられた透かしではないから作者は意図しているはず。だから、我々も想像を逞しくして鑑賞すれば判るだろうと考えてはいるのだが、鳥、菊、山陰に東屋、花…、そして陰透かしの部分は旗?風?

梅花雅文図鍔 鎌倉 Kamakura Tsuba

2016-03-22 | 鍔の歴史
梅花雅文図鍔 鎌倉


梅花雅文図鍔 鎌倉

 梅花だから分かり易い。肉彫部分の丁子とも笹とも思われぬ文様も頗る面白い。棚引くのは雲か山裾か、それも何とも判断できないところがまた面白い。鎌倉鍔の面白さは、このような意味不明の組合せがあるところ。この鍔での陰透かしは分かり易かった。

酸漿図鍔 古甲冑師 Ko-Kachushi

2016-03-19 | 鍔の歴史
酸漿図鍔 古甲冑師


酸漿図鍔 古甲冑師

 これもなんとなく酸漿(ほおずき)のように見えるのだが、実のところ良く判らない。確かに薬種として利用されていることから、鐔の題材に採られても不思議ではない。複雑に組み合わせた透かしによる構成だけでなく細い透かしがいい。

雪文透図鍔 古甲冑師 Ko-Kachushi

2016-03-18 | 鍔の歴史
雪文透図鍔 古甲冑師


雪文透図鍔 古甲冑師

 降りかかる雪の様子を、古典的な雪輪文とは異なるものの、それ風に意匠した小透。江戸時代後期に流行した雪の結晶の文様表現とももちろん異なり、何ともほんわかとした陰透の表現だ。それでいて面白い。

茸透かし図鍔 古刀匠 Ko-Tosho

2016-03-17 | 鍔の歴史
茸透かし図鍔 古刀匠


茸透かし図鍔 古刀匠

陰透の歴史は、甲冑師や刀匠と分類される鉄地板鍔に施された、腕抜緒の小穴に始まるようだ。家紋図の作品でも紹介したように、簡潔な、家紋のような小さな透を設け、ここに手に下刀を打ち合いなどの衝撃で落とさないように紐を通して手首に巻き着けていたのが始まり。大きく地透にした鍔も同様の目的があってのもの。この鍔では簡潔な意匠で茸を二つ透かしている。文様と言って良いだろうか、あまりにも簡素であるが、味わいは格別。陰影美の基礎であり、純化された意匠の一つ。ところが、それが故に問題がある。茸透かしとは言うも、茸のように見えるというだけで、はたして茸であるのか不明。昔はくくり猿と呼ばれていた。お守りや呪術的な意味合いのある人形の一つだが、それもどうだろう。

枝牡丹図鍔 埋忠 Umetada Tsuba

2016-03-16 | 鍔の歴史
枝牡丹図鍔 埋忠


枝牡丹図鍔 埋忠

 江戸時代前期の、埋忠派の手法が活かされた作。赤銅地を平滑に仕上げて片切彫平象嵌と、陰透かしを組み合わせた表現。いずれも埋忠派の得意とする技術。江戸時代の装剣小道具における文様美の追求は、桃山時代に琳派の美意識が急速に広まったことも影響している。埋忠明壽が琳派の美観を採り入れたのである。この鍔では葉を巧みに陰に透かしている。陰に意匠した透かしを、そのまま陰透(かげすかし)と呼んでいる。頗る略されながらも主題の意味やそのものを明確に示している簡潔な陰影が魅力だ。この鍔のように平象嵌や毛彫など他の手法との組合せもあるが、古くは小さな陰透を施すだけの作が多かったようだ。□

牡丹獅子図鍔 美濃 Mino Tsuba

2016-03-15 | 鍔の歴史
牡丹獅子図鍔 美濃



牡丹獅子図鍔 美濃

 文様化された主題を肉高く表現し、その周囲である地面を深く掘り下げて平滑に仕立て、魚子地に仕上げている。美濃様式の鍔。江戸時代初期の作ながら古美濃の時代の作に通じる美観が備わっている。美濃極めだが、桃山頃の作風を留めているのである。漆黒の赤銅魚子地に、牡丹と四肢が躍動的。特に牡丹の意匠は古様式で、後藤に見られるような構成。耳の仕立ても古式に倣って素敵だ。耳にも牡丹を唐草風に表現している。小柄笄の櫃穴が大きく、見るからに堂々としている。□

牡丹獅子図二所 紋程乗 Teijo Futatokoro

2016-03-14 | 鍔の歴史
牡丹獅子図二所 紋程乗


牡丹獅子図二所 紋程乗

 後藤宗家九代程乗の作であることを、十五代光美が極めた作。赤銅一色の高彫表現は貫禄があり、美しいだけでなく重厚感に満ちている。牡丹の表現が後藤。決して写実的ではないが、見るからに牡丹。複雑な曲線の組合せからなる牡丹は古様式であり、衣服などに見られる織物のように文様的であり、味わいが格別。