鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

鋲図目貫 古金工

2020-01-31 | 鍔の歴史
鋲図目貫 古金工


鋲図目貫 古金工

 これも実は良く判らない。足のような部分が二つに割れている。ここを何かに貫き通して割り広げることによって留めるための道具か。であれば鋲。鋲などのような道具とも言えないものを装剣小道具の図柄にするところの面白さもあるのだが。

鏃図小柄 後藤程乗 Teijo Kozuka

2020-01-30 | 鍔の歴史
鏃図小柄 後藤程乗


鏃図小柄 後藤程乗

 鏃としたが、実は良く判っていない。手裏剣のように用いた武具ではないかとも思うのだが、分からない。柄の部分がねじれているのは、空中を進む際に回転して、直進するための工夫か、先端をドリルのように食い込ませるための工夫か、とにかく面白いのだが、よく分からない。

矢筒図小柄 後藤即乗 Sokujo Kozuka

2020-01-29 | 鍔の歴史
矢筒図小柄 後藤即乗


矢筒図小柄 後藤即乗

 金唐革仕立ての矢筒。高彫金色絵で見事に再現されている。分かり易い道具ではある。桃山文化の時代に活躍したことから、華やかな作風が好まれた時代背景が良く判る出来。

道具図小柄 古金工 Kokinko Kozuka

2020-01-27 | 鍔の歴史
道具図小柄 古金工


道具図小柄 古金工

 先端の尖った竹に紐。鎌と筒乱らしきものが添え描かれている。この道具は何だろう。全く分からない。ご存知の方がおられたら教えてほしい。時代の上がる作で、赤銅魚子地高彫仕上げ。

筒乱図目貫 後藤乗真 Joshin Menuki

2020-01-25 | 鍔の歴史
筒乱図目貫 後藤乗真


筒乱図目貫 後藤乗真

 時代の上がる道具を図柄とした作品を紹介している。筒乱は鉄砲の弾入れ、薬入れなど小物を持ち歩くための鞄のようなもの。革などで造ったものとみえ、この目貫も皺革風に微細な凹凸があり、腰に結び付けられるような構造となっているのが分かる。後藤乗真の作例が続いたが、確かに乗真には道具の図が多いように思われる。

馬具図三所物 後藤 Mitokoromono Goto

2020-01-24 | 鍔の歴史
馬具図三所物 後藤



馬具図三所物 後藤

 武士の備えとして弓馬の術が真っ先に挙げられるように、馬具は装剣小道具には良く採られている。赤銅魚子地高彫金色絵。江戸時代の後藤の作。

馬具図小柄 後藤乗真

 これも馬具図。江戸時代の作と単純に比べてほしい。



馬具図目貫 古金工

 古拙な造り込みで、色合いも山銅独特の古びた感じ。

独楽図小柄 後藤乗真 Joshin Kozuka

2020-01-23 | 鍔の歴史
独楽図小柄 後藤乗真


独楽図小柄 後藤乗真

 独楽にはどのような意味があるのだろうか。現代では玩具として考えられているが、この小柄が製作された室町時代末期には…やはり玩具だろうか。だが、物体を回転させると細い一本足で自立するという原理は単純に面白い。どこで見出されたのであろうか。不思議な玩具として、題に採りたくなるのだろう。
 下の目貫も独楽の図。作風は、古金工らしい、時代の上がる特徴が顕著である。裏側の造り込みも観察してほしい。

独楽図目貫 古金工



鉈豆に鉈図小柄 後藤乗真 Joshin Kozuka

2020-01-21 | 鍔の歴史
鉈豆に鉈図小柄 後藤乗真


鉈豆に鉈図小柄 後藤乗真

 洒落ではなかろうが、鉈豆を描きながらも、鉈を図の中に忍ばせている。鉈豆は暖かい地方で採れる豆の仲間で、古くは薬とされたようだ。薩摩の鐔工も鉈豆図を得意としていた。
 ちょっとそれるが、刃物ながら相手と直接闘う武具としてのものではない刃物がある。「逆刃刀」と呼ばれてマンガに出てきたもので、相手を傷つけないために棟側に刃がある刀が考えられている。傷つけたくないなら、刃などつけなければよかろうがと思うが、それでは話が成り立たないらしい。マンガはどうでもいい。短刀ほどの寸法で、棟側、即ち反りの内側に刃の付いている刃物が、鐔の付いた拵に収められた状態で出てきた。これが逆刃刀の本物かと一部で騒がれたそうであったが、その刃物は、馬の爪を削るための道具であったようだ。だが、面白いのは、武士が腰に備えるうえで様式として正しい短刀拵に収められていたという点。即ち、単なる馬の世話をする下級労働者の道具ではなく、馬の管理に携わっていた位の高い武士の持ち物であったことが浮かび上がってくる。短刀とは形が異なるため鑑定書は発行されなかったそうだが、むろん刀や短刀と同じ鍛錬方法で製作されたものであり、武士の持ち物である。逆刃刀ではないが、広く戦場での武士の仕事を考えるのであれば、短刀とは形が異なっていようとも、短刀と同じ思考をして良いのではなかろうか。

自在鉤図目貫 古金工 Kokinko Menuki

2020-01-20 | 鍔の歴史
自在鉤図目貫 古金工


自在鉤図目貫 古金工

 今の子供は自在鉤を知らないかもしれない。吊るした鍋などの、火にかける高さを自在に調整するための道具だ。時代の上がる目貫や笄には、このような日常のあるいは戦場で用いる道具が彫り描かれたものがある。この目貫は時代の上がる特徴が良く現れている。裏面を見てほしい。かなり薄手に仕立てられている。裏側から打ち出しが強く、表を見るとふっくらとしている。側面(際端)が絞られているのもわかるかと思う。自在鉤が若者には分からないかもしれないとは言ったものの、田舎のほうへ行くと未だに使われていることがあり、あるいは目にする機会があるかもしれない。小道具には、実はまったく分からない道具類が描かれていたりすることがある。

香道具図目貫 加賀金工 Kaga Menuki

2020-01-18 | 鍔の歴史
香道具図目貫 加賀金工


香道具図目貫 加賀金工

 香包に香箸の図。下は香包、羽根箒、香合。香道具の3点セット。我が国に古くからある香の遊びに用いられる道具類で、道具とはいえ風雅な雰囲気が漂っている。目貫は加賀で発展した平象嵌を駆使しており、鮮やかでしかも繊細。

活け花図笄 Kougai

2020-01-18 | 鍔の歴史
活け花図笄

 
活け花図笄 

 植物図は多いのだが、束ねられた植物図が間々見られる。明らかに飾るための植物、活け花の文化が隆盛したことが示されている。左の水仙は束ねられているだけだが、右の笄は壁に掛けられる花入れに活けられている椿の図だ。茶室の飾りと考えてよいだろう。下の小柄は、桶に放り込まれた梅の花。これも、活けられるためにある梅、あるいはこの梅の放り込まれた桶そのものが飾りなのかもしれない。鉢や桶などは、植物を活かすための道具として脇役ながら存在感を示している。

瓜に桃図小柄 古金工 Kokinko Kozuka

2020-01-16 | 鍔の歴史
瓜に桃図小柄 古金工


瓜に桃図小柄 古金工

 鉢に盛られたいくつかの果物。外に転げているのは瓜。枝のまま飾られているように見えるのは桃だろうか。この小柄は、糖質の多い果物を題材に採っているのだが、同時に鉢の存在が大きな意味を持っている。食べ物として鉢に盛られているのであろうか、あるいは、茶室の飾りとしてのものであろうか。いずれとも考えられる。室町時代には茶や花が文化として存在感を大きくしている。装剣金工としては、茶道具や束ねられた植物図などがあるのが良い例だ。こうしてみると時代の上がる金工には銘がないのが普通だが、金工は単に職人としてのみ生きていたのであろうか、不思議に感じる。今の時代、私たち工芸品を扱う者からは職人としての技術を高めてほしいと願っている一方で、職人側は芸術家としての意識を先に持ち始めてしまい、その小さな誤差が次第に大きくなってゆくように感じられる。