鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

蕨手透図鍔 神吉深信 Fukanobu Tsuba

2018-08-31 | 鍔の歴史
蕨手透図鍔 神吉深信


蕨手透図鍔 神吉深信

 以前にも紹介したことのある肥後鍔。蕨手も巴と似ている。若葉が拳のようにむっくりと成長し、シダのような葉を広げてゆく。その頃の成長は目覚ましい。若竹のように、分単位で成長してゆく。その生命力が好まれたことは間違いない。しかも、蕨の新芽の渦巻きは巴と同様に螺旋を示している。永遠の生命を意味していることは間違いない。古くから好まれた文様の一つである。江戸後期の肥後金工深信の名作。□

巴透図鍔 甲冑師 Kachushi

2018-08-30 | 鍔の歴史
巴透図鍔 甲冑師


巴透図鍔 甲冑師

 これも時代の上がる甲冑師の鐔。簡潔な陰陽が素敵だ。二つ巴、三つ巴など、組み合わせた多々あるが、このように左右に並んでいると、スマイルマークに加えても決しておかしくないようで、なんとなくうれしい。戦国時代にこんな文様を見せられたら戦意を失ってしまう・・・なんてことはないか。

結雁金透図鍔 古甲冑師 Kachushi Tsuba

2018-08-30 | 鍔の歴史
結雁金透図鍔 甲冑師


結雁金透図鍔 甲冑師

 単純化された文様が魅力の古鐔。この鳥のような文様が雁金で、くるっとしている所から結び目を想わせる結雁金の呼称が付されている。一方の兎の足あとのような文様が、丁子。

雁金透図鍔 古正阿弥 Ko-Shoami Tsuba

2018-08-30 | 鍔の歴史
雁金透図鍔 古正阿弥


雁金透図鍔 古正阿弥

 優れたデザインである。京で培われた文様文化が良く示されていると思う。細い線の、しかも曲線の組み合わせ。微妙に対称性を崩しており、計算された構成である。翼のような曲線に鳥の頭を加えただけの文様を雁金という。文様を構成する曲線の美しさをただ眺めていたい感じ。武用のものであることを忘れて・・・。

沢瀉透図鐔 Tsuba

2018-08-28 | 鍔の歴史
沢瀉透図鐔


沢瀉透図鐔 

 分かり易い図柄。河骨や沢瀉など水草は、蜻蛉が羽根を休める植物。蜻蛉は後ろに下がることなく飛翔する虫であることから、勝虫と呼んでいる。勝虫の留まる植物だから沢瀉を勝軍草と呼んでいる。いたって分かり易い意味を備えている。丁子は薬種の代表格だから、図柄としては問題なく理解できる。この鐔では、丁子の葉に波打たせている。丁子の葉は、多少だが波打っているという特徴がある。鉄地肉彫地透の工法。

鞍透図鍔 金山 Kanayama atsuba

2018-08-27 | 鍔の歴史
鞍透図鍔 金山


鞍透図鍔 金山

 馬の背に乗せる鞍を意匠したものではなかろうか。円弧を組み合わせると七宝文になる。雁金文の組み合わせで多彩な文様ができるように、単純な文様素材を組み合わせることによって新たな文様ができることの面白さは理解できよう。もちろん武具が文様の素材として好まれたであろうことも想像される。

三葉に花文透図鍔 尾張 Owari Tsuba

2018-08-25 | 鍔の歴史
三葉に花文透図鍔 尾張


三葉に花文透図鍔 尾張

 これもなんとなく笹の葉のような意匠とされているが、菊花かもしれないし、なかなかストレートにこれだと言えない。作者も「何だか判るか」と問いかけているように感じられる。そうかもしれない。禅問答の隆盛は、例えば瓢箪鯰図などのように、難解な問いかけを提示して思索することの重要性を確認させる装剣小道具の図柄に到達している。多々ある難解な図柄には、そのような意味合いが隠されているのではなかろうか。しかもデザイン性も優れている。尾張と極められているが、京の雅な風情も感じられる。

巴透図鍔 尾張

2018-08-24 | 鍔の歴史
巴透図鍔 尾張


巴透図鍔 尾張

 図案となっているそれぞれの要素に全く関連性が見いだせない作だ。辛うじて巴を瑞雲とみれば鳥との関わりが考えられるも、図柄の要点がそこにあるとは思えない。なんだかわからないが、面白い。こうして眺めると、戦国時代の実用武具ながら、意匠に凝っているというか、用途とは無関係に様々な意匠を生み出していることに驚かされる。このような図案という点での急速な文化的発展は、広く室町時代後期と捉えているものの、いったいどの時代にあったのであろうか。

瓢透図鐔 金山 Kanayama Tsuba

2018-08-23 | 鍔の歴史
瓢透図鐔 金山


瓢透図鐔 金山

 瓢箪を組み合わせると、このようになる。ダンゴのような連続模様を首繋と説明している人もある。それが正しいのか、実は良く判らない。なんとなくだが瓢箪、酒壺、盃、酒といった方向に意識が動く。以前にも瓢箪透の意匠をいくつか紹介したことがある。大小の連続したふくらみだけが要素だが、なんて面白いんだろうと、つい見入ってしまうのが瓢箪だ。鐔に意匠しても面白いことは間違いない。

桜花透図鍔 肥後 Higo Tsuba

2018-08-22 | 鍔の歴史
桜花透図鍔 肥後


桜花透図鍔 肥後

 満開の桜からの木漏れ日。天地左右非対称として、しかも造形にもわずかに歪みを持たせた、西垣勘四郎以降の肥後金工が間々見せる、手捻りの焼物の美観を漂わせる作。図柄は明らかに木漏れ日。桜が活きている。同じ肥後金工に、図案化され金象嵌の加えられた桜霞透があるも、本作は、気ままに透かしを施したような、西垣の感性を伝えている出来。

茗荷透図鍔 尾張  Owari Tsuba

2018-08-21 | 鍔の歴史
茗荷透図鍔 尾張


茗荷透図鍔 尾張

 これも、左右の櫃穴を構成している部分の茗荷紋が判ることからタイトルを茗荷透としたが、全体の構成が良く判らない。良く分からないけれども、この鐔も頗る面白い。粘菌?地衣類?何かの細胞を拡大して観察しているような気分。あるいは、樹木の隙間から日陰の植物(例えば茗荷)に届いた木漏れ日と捉えれば面白いがどうだろう、謎めいた文様も、そうかもしれないと思えてくる。


富嶽透図鐔 金山 Kanayama Tsuba

2018-08-20 | 鍔の歴史
富嶽透図鐔 金山


富嶽透図鐔 金山

 おそらく、前回に紹介した鐔と同じ意味のある透かし文様であろうが、こうなると富士山に見えてくるのが不思議だ。配されている要素は、たぶん同じだ。飛翔する鳥(雁金)も効果的。すると、上部の尖っているところは?とにかく面白い。

花弁透図鍔 金山 Kanayama Tsuba

2018-08-18 | 鍔の歴史
花弁透図鍔 金山


花弁透図鍔 金山

 これも何を意味しているのか良く判らない。良く判らないけれども頗る面白い。左右の櫃穴が構成している部分を花びらとみるか、銀杏の葉とみるか、下には雁金がある。雁金は透鐔に多く用いられる要素。茎櫃の上部の尖り加減に創造的な意図を感じるが、良く判らない。総体の三角は飛翔する千鳥か。

文透図鐔 古赤坂 Ko-Akasaka Tsuba

2018-08-16 | 鍔の歴史
文透図鐔 古赤坂



透図鐔 古赤坂

 骨太の感のある鐔。赤坂でも時代の上がる作は、後の粋に通じる風情はまだ備わっておらず、むしろ武骨な印象が強い。尾張鐔などにもありそうな図柄。構成美に優れた作で、文様の要素は、雁金、扇までは判るのだが、あとは角形の文様と楕円の組み合わせ。各々は簡素ながら、このように組み合わせると、複雑で洒落た、面白い文様となる。