TULIP DIARY

届くといいな やさしい風に乗って

旅屋おかえり

2016年04月05日 | 読書日記
旅屋おかえり 原田マハ 著 集英社文庫
この小説は礼文島出身の旅の番組のレポーターとして活躍していたタレントおかえりが自身の唯一のレギュラー番組を打ち切られてしまいます。その後、いろいろな理由で旅ができない依頼人に代わって旅をするという旅屋という仕事を続けていくというお話です。この小説の中では角館や内子に旅してました。角館の桜や内子のしっとりした街並みなどの情景を思い浮かべながら一緒に旅してるような感覚を持てる楽しい小説でした。主人公のおかえりが元気で前向きで一生懸命なのがよかったです。最後のほうのところで、内子の旅の最中に、和紙を作るときに紙の繊維は叩かれて叩かれて強く美しくなる、それは人間に似ている。いいことよりも、きっと、つらいことが多かったに違いないけど、いろいろな事情を抱えながらも、みんな一生懸命に叩かれて叩かれて強くなった人たちと似ているという内容の文章がありました。取ってつけた文章ともとれるけれど、この箇所が一番心に残りました。原田マハさんの小説を読んだのは初めてでしたが、こんな文章を書ける作家さんだったんだなあと思いました。この主人公おかえりが旅を通して人生の機微を知り成長していく姿が頼もしく読んでいて元気をもらえました。また、旅の醍醐味や旅の本質を再考できた小説でもあり、旅をまたしてみたいなあと思えた本でした。
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