TUTAYAで借りてきたDVDの2本目は山田洋次監督の『母と暮らせば』でした。吉永小百合さんが出演された映画は今までたくさん鑑賞してきましたが、この映画は見損ねていました。このお話は長崎の原爆投下で一瞬のうちに死んでしまった医学生の息子浩二が原爆投下から3年後、母の元に幽霊として姿を現すファンタジーの映画でした。助産婦をしている母親伸子役は吉永小百合さん、息子は嵐の二宮和也さんです。息子の許嫁の町子役は黒木華さんが演じておられました。母と息子が原爆で一瞬のうちに引き離されてしまい、ひとりぼっちになってしまっても生き続けないといけなかった母の悲しみ、残されてしまった許嫁がほかの人と一生をともにすることを決意するまでの悲しみ、母や許嫁を置いて、一瞬で死んでしまった息子が守りたくても守れなくなった母や許嫁を思う悲しみ、それぞれが抱えている深い悲しみが痛いほど伝わってくるお話でした。母の伸子が亡くなる寸前に息子の浩二がこれからはずっと一緒にいられるのだと言われたときの最後のほうのシーンが一番印象に残りました。息子とこれからずっと一緒におられることに微笑む母のシーンは悲しみがどれだけ深いものであったのかがよく伝わってくるシーンでした。この映画の最も訴えたかったものがこのシーンに凝縮されていたような気がしました。掛け替えのない些細な日常生活を送ることが人々の本当の幸福であり、その些細な日常を壊してしまうような行いは決して許されるべきものではないということだということを痛切に感じた映画でした。
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