〈私〉はどこにいるか?

私たちは宇宙にいる――それこそがほんとうの「リアル」のはずである。この世界には意味も秩序も希望もあるのだ。

罪を憎んで人を憎まないことはできるか

2006-07-18 | Weblog
さいきんイヤなニュースばかりなので、とくに新聞の事件の頁とかを見る気がしません。

もちろんニュースというのは主にマイナスなことがらを報ずるものなので、
世の中のイヤな面が凝縮されているのだから
当たり前と言えば当たり前なのですが…

またそういう事件を見て「世も末だなあ」なんて思うことは、
日常生活を生きるうえでも、
そういう社会現象をマシな方向へ持っていくうえでも、
ほぼなんの役にも立たない、どころか単にマイナスなだけです。

そうしてみると、ああいう扇情的な報道というのは、
いったい皆様の出歯亀根性に奉仕する商業主義というの以外に、
何の意味と目的があるのでしょうか?

そういう意味でも、日常を生きるわれわれは、
「見たくないものは見ない自由」を行使した方がいいのではないかと思われてなりません。

いわば自分に「情報管制」を敷き、心を防衛するというのも、
大いにありな選択なのではないでしょうか。

それはともかく、
人の子を殺し、自分の子を川に投げ落として殺したというあの荒みきった母親、
そのきわめて身勝手な行動にはひじょうに許しがたいものを感じます。

「罪を憎んで人を憎まず」という、
典拠がよくわからないのですがよく知られている“いい言葉”があります。
昔のテレビなんかであった正義の味方のシリーズとかで、よく使われてました。

最近まで、その言葉の意味するところが文字通りわかりませんでした。

憎いのは、憎むべき犯罪を犯した人間自身ではないか。
そいつが存在しなければそのようなひどい事態は起こらなかったのだ。
罪もない人を殺したやつを憎まずにいられようか。

だから、そんな言葉は単なるきれいごとのウソにしか聞こえませんでした。

今にしてわかることは、
そういう犯罪や犯罪を犯す人間というのが実体として存在するわけではなく、
それはほんとうにどうしようもない生育歴、
この社会に餓鬼・畜生の世界を現出しているかのような無惨な生活環境、
価値判断をマヒさせるような全体としての荒廃した文化状況、
人格形成という使命を怠るどころか逆に阻害しているかのような教育体制、
大多数の人間を疎外せずにはいない経済システム、
そういう諸々が人間をそうさせてしまうのだということ。

しかも人間にはそういう負の要因を超えて、方向性を知り、
方法さえ踏めばよりよい存在になることのできる、
驚異的な可塑性・成長力があるということ。

さらに人間には人間自身による価値判断を超えた、
現代科学の知見からそう読みとれる宇宙的な存在価値すなわち尊厳があるのであり、
したがって行動の愚かしさは裁かれても、私たちが人間自身の存在を裁くことはできないこと、

つまりようするに「罪を憎んで人を憎まず」ということになるわけですね。

単に無知だっただけのような気がしますが、その言葉には学んでみれば確固とした根拠があるのでした。
それは学べば、アタマではきわめてよくわかる理屈です。

しかし感情としてはやはり納得できないものを感じます。
これは理屈がハラにおさまっていないからなのでしょう。
現状、あの母親には、報道されているとおりならば、死刑が当然だと感じられます。

それ以外に、ああいう罪を償う方法というのは、はたしてあるのでしょうか?


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3 コメント

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こんにちは (ちこ)
2006-07-18 14:14:38


 いつも色々とご苦労様ですね。



 本当に嫌なニュースが多く、まるで観たくないドラマのような事件が日常的に起きています。とても影響を受け元気が出なくなってしまいます。



 本質をみると、罪を憎んで人を憎まず、なのですが、なかなか心からそう思うのは難しいですね。



 特に子供に関しての事件には、とても憎しみに近い感情がわいてしまいます。
返信する
Unknown (サトミ)
2006-07-19 22:16:11
こんばんは。



「罪を憎んで人を憎まず」の本質と感情の矛盾、なるほどなーと思いました。

理屈は分かるというか、それが本質なんだとしても、

なかなか受け入れられないこともあります。

むしろ、受け入れられないことが多い気がします。



それにしても、いつもながら鋭い分析ですね。

すごい!!!

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Unknown (ぐんそう)
2006-07-20 00:14:09
>ちこさま

どうもコメントありがとうございます。

ちょっと忙しくなってきましたが、学びを兼ねて楽しくやっております。

それにしても、子どもに関わるああいう事件というのは本当にいやですね。

まして被害者の親族の方のお気持ち、察するにあまりあります。

もちろん犯人を憎んでも何の解決にもならないわけですが…



>サトミさん

どうも、ご無沙汰しております。おいそがしいでしょうか?

たしかに、本質的には人を裁けないし、まして死刑とかはよくないことなのでしょうが、いまのところの凡夫の感情としては、どうしてもそういうことになってしまいます。

これまでの常識という理屈からくる抵抗があるし、あたらしい理屈はなかなか定着しないようです。

ほめ言葉、ありがとうございます!
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