しばらく更新が滞ってしまったが、世界価値観調査(WVS、World Values Survey)について分析を続けていきたい。
つい先日から世界価値観調査協会(WVSA)のサイトで、2017年~2020年に各国で実施された調査結果をまとめた、最新のWAVE7(第7次調査)のデータが公開され、一般にダウンロードできるようになっている。http://www.worldvaluessurvey.org/WVSOnline.jsp
以降は仕切り直してこのWAVE7のデータを紹介することとし、過去記事もそのうちアップデートしたいと思う。
さて、改めて述べれば、このWVSの調査結果で何より注目すべきことは、ヒトの内面の核心、すなわちコスモロジー(世界観・宇宙観・人生観の総枠)とそこから生じるコアな価値観をストレートに問うた質問項目に対する回答で、われら日本人が極めて顕著な特徴を示していることである。
コスモロジーという視点からある程度予想していた結論ではあったが、これほど明瞭に確認できるものだとは、分析前には思いもしなかった。これまで文化論的にある種あいまいな形で論じられてきた日本人の内面の特徴とは、数値と国際比較によってはっきりと確認できるのなのである。
このコスモロジーという枠から見えてくる、WVSの調査結果の世界全体に関する結論は、「近代化の度合いが進行するほどに、神話が担っていた伝統的コスモロジーは崩壊する」という事実が確認できること、しかしその進行の度合いは様々な要因によって一様ではないということにある。
とりわけ私たちにとって重要なことは、一つには伝統的コスモロジーの崩壊、言い換えれば内面の非宗教化、社会の価値観の世俗化の進行度合いが、日本は(中国やスウェーデンと並び)世界全体においてその極の側にあることである。
そしてもう一つ、価値の空白状態の急激な進行、すなわち急性アノミーの度合いにおいて、おそらく私たち日本人が世界の最先端にあるだろうということである。これは重要なことであり、なぜそう結論しうるかは、おいおい説明していきたいと思う。
さて、続いては人生で「宗教が大切だ」と答えた人の割合の国際比較である。
先にも述べたが、この日本社会の空気の中では、「宗教」に関する話題など、ほとんどタブーに近いものがある。要するに「変人扱い」されざるを得ないということだ。
この空気に抗して「宗教が大切」などと断言できる人は、特定の教団・信仰体系としての宗派をよほど強く信じている人に限られるだろう。
一般に「宗教」とひとくくりにされているが、その主流であるはずの伝統的コスモロジーを素朴に信じている人など、この「空気」のもとではごくわずかにすぎない。
あらかじめ述べておけば、もちろん、この回答には年代差がきわめて大きいに違いない。近代化が世代を通じて進行していくものだとすれば、年代の上下は伝統的コスモロジー崩壊の進行度合いと強い相関関係を持っていて当然である。
それについては本来であれば各項目ごとに詳細に分析する必要があるが、それは統計の門外漢の筆者には時間的に手に余ることであり、データはウェブ上で公開されているので、その点は専門家や有志の方々に任せよう。
むしろここでは、単純化することで見えてくるものを読み取ることにしたいと思う。
との質問に、いくつかの項目から「宗教 Religion」の重要度に関する回答を、国際比較したのが次の横棒グラフである。
ここでは「とても重要」「どちらかというと重要」の2つを「宗教は人生で重要」と回答したものとみなし、その割合の多い順に上から並べている。
これまで紹介してきたWAVE6から調査対象国・地域はさらに増え、この項目では77か国・地域にのぼっている。このため画像ではさらに見づらくなったが、以降、日本については赤、それとある意味で対照的な位置にある米国については青で囲むこととする。
さて、日本では「宗教が重要」と答えた人の割合は世界で2番目に少なく、わずか14.5%である。最下位の中国の13.0%とさほどの差はない。
私たちの感覚からすれば当然のように思われる調査結果ではあるが、それが世界の人々の中では全く当たり前ではないことが、はっきり確認できる。
世界全体では「宗教が重要」と答えた人の割合で62.0%である(TOTALの横棒グラフ)。
また、下から3番目のデンマーク19.3%を除けば、それより上で2割を下回る国は存在しない。
この日本及び中国の回答は、世界的に見て突出したものなのである。
このことは私たちの内面にとって何を意味しているだろうか。
(続く)
つい先日から世界価値観調査協会(WVSA)のサイトで、2017年~2020年に各国で実施された調査結果をまとめた、最新のWAVE7(第7次調査)のデータが公開され、一般にダウンロードできるようになっている。http://www.worldvaluessurvey.org/WVSOnline.jsp
以降は仕切り直してこのWAVE7のデータを紹介することとし、過去記事もそのうちアップデートしたいと思う。
さて、改めて述べれば、このWVSの調査結果で何より注目すべきことは、ヒトの内面の核心、すなわちコスモロジー(世界観・宇宙観・人生観の総枠)とそこから生じるコアな価値観をストレートに問うた質問項目に対する回答で、われら日本人が極めて顕著な特徴を示していることである。
コスモロジーという視点からある程度予想していた結論ではあったが、これほど明瞭に確認できるものだとは、分析前には思いもしなかった。これまで文化論的にある種あいまいな形で論じられてきた日本人の内面の特徴とは、数値と国際比較によってはっきりと確認できるのなのである。
このコスモロジーという枠から見えてくる、WVSの調査結果の世界全体に関する結論は、「近代化の度合いが進行するほどに、神話が担っていた伝統的コスモロジーは崩壊する」という事実が確認できること、しかしその進行の度合いは様々な要因によって一様ではないということにある。
とりわけ私たちにとって重要なことは、一つには伝統的コスモロジーの崩壊、言い換えれば内面の非宗教化、社会の価値観の世俗化の進行度合いが、日本は(中国やスウェーデンと並び)世界全体においてその極の側にあることである。
そしてもう一つ、価値の空白状態の急激な進行、すなわち急性アノミーの度合いにおいて、おそらく私たち日本人が世界の最先端にあるだろうということである。これは重要なことであり、なぜそう結論しうるかは、おいおい説明していきたいと思う。
さて、続いては人生で「宗教が大切だ」と答えた人の割合の国際比較である。
先にも述べたが、この日本社会の空気の中では、「宗教」に関する話題など、ほとんどタブーに近いものがある。要するに「変人扱い」されざるを得ないということだ。
この空気に抗して「宗教が大切」などと断言できる人は、特定の教団・信仰体系としての宗派をよほど強く信じている人に限られるだろう。
一般に「宗教」とひとくくりにされているが、その主流であるはずの伝統的コスモロジーを素朴に信じている人など、この「空気」のもとではごくわずかにすぎない。
あらかじめ述べておけば、もちろん、この回答には年代差がきわめて大きいに違いない。近代化が世代を通じて進行していくものだとすれば、年代の上下は伝統的コスモロジー崩壊の進行度合いと強い相関関係を持っていて当然である。
それについては本来であれば各項目ごとに詳細に分析する必要があるが、それは統計の門外漢の筆者には時間的に手に余ることであり、データはウェブ上で公開されているので、その点は専門家や有志の方々に任せよう。
むしろここでは、単純化することで見えてくるものを読み取ることにしたいと思う。
問 次にあげるそれぞれが、あなたの生活にとってどの程度重要かをお知らせください。(一つずつ〇印)
との質問に、いくつかの項目から「宗教 Religion」の重要度に関する回答を、国際比較したのが次の横棒グラフである。
ここでは「とても重要」「どちらかというと重要」の2つを「宗教は人生で重要」と回答したものとみなし、その割合の多い順に上から並べている。
これまで紹介してきたWAVE6から調査対象国・地域はさらに増え、この項目では77か国・地域にのぼっている。このため画像ではさらに見づらくなったが、以降、日本については赤、それとある意味で対照的な位置にある米国については青で囲むこととする。
さて、日本では「宗教が重要」と答えた人の割合は世界で2番目に少なく、わずか14.5%である。最下位の中国の13.0%とさほどの差はない。
私たちの感覚からすれば当然のように思われる調査結果ではあるが、それが世界の人々の中では全く当たり前ではないことが、はっきり確認できる。
世界全体では「宗教が重要」と答えた人の割合で62.0%である(TOTALの横棒グラフ)。
また、下から3番目のデンマーク19.3%を除けば、それより上で2割を下回る国は存在しない。
この日本及び中国の回答は、世界的に見て突出したものなのである。
このことは私たちの内面にとって何を意味しているだろうか。
(続く)
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