愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

高文祭(愛媛県高等学校総合文化祭)郷土芸能部門

2009年11月22日 | 祭りと芸能
本日は高文祭(第23回愛媛県高等学校総合文化祭)。ひめぎんホールで郷土芸能部門の発表会があったので会場へと向かう。昨日の鳥取の疲れが抜けず、やはり無理な遠出はするものではないと、改めて悟る。

今日は、日々練習を積み重ねてきた郷土芸能部門の参加高校をじっくりと見なければいけないが、高校生が郷土芸能に打ち込んでいる姿を見ると、疲れはすぐに吹き飛んだ。

今年の参加高校は8校。これまでの高文祭で一番多い。①川之江高校郷土研究部「二洲(じしゅう)太鼓」、②東温高校郷土国際研究部「櫟(くぬぎ)獅子」、③伯方高校郷土芸能部位「渦潮太鼓・天狗太鼓」、④松山聖陵高校郷土芸能愛好会「虎舞」、⑤今治西高校郷土芸能部「寿太鼓『春駒』」、⑥上浮穴高校郷土芸能愛好会「久万山五神太鼓」、⑦長浜高校郷土芸能部「伊予長浜豊年踊り」、⑧内子高校郷土芸能部「内子騒乱、彩、シン」、以上の発表があった。

発表を見ての簡単な感想。川之江高校は、2年ぶりの出場。今年から大太鼓が加わり迫力を増していた。部員数も増えており、1年生も多い。和太鼓としての成長の伸びしろが多く、来年が楽しみである。東温高校は地元の獅子舞を演じていた。力強い獅子の演技と小気味良い太鼓のリズム。少ない部員で2頭の獅子をよく演じきっていた。伯方高校の和太鼓。昨年より人数は減ったものの、全員の息が揃っており、太鼓の音も充分に出ていた。天狗役の演技・身体の動きも良く、5名という少人数ながら、見事な演技でレベルが高かった。来年はこのレベルを維持しつつ、部員が増えることを期待したい。松山聖陵高校の虎舞。昨年度からの出場。前回の初出場より確実に演技が上手になっていることに驚かされた。2頭の虎をバランスよく演じきり、太鼓、拍子木などの囃子も揃っていた。松山古三津の独特の民俗芸能であり、愛媛県内では1箇所。他には見られない芸能である。伸びしろはまだまだある。地元と連携しながらこの活動が継続できれば、将来、全国高文祭出場も夢ではないと感じた。今治西高校の寿太鼓「春駒」。今回の出場校では、和太鼓の心・技・体を体得し、自信を持って表現できていたのは今治西が一番だった。全員の息が揃っており、弱音部の表現が上手い。そのため「破」や「急」の迫力のある音が引き立っていた。何より太鼓を打ち込む身体の完成度の高さに感心させられた。発表が始まった瞬間、出演者の姿勢を見ただけで、日々練習を積み重ね、鍛え上げているのがわかるほどだった。今後、他の和太鼓出場校は、今年の今治西の演技を一つの模範にしてほしいと思った。何せ基礎がしっかりしており、このレベルに達しないことには全国は難しい。上浮穴高校の久万山五神太鼓。ダイバの面をつけての和太鼓。しかもダイバの恐ろしさを体で表現しなければいけない。これを充分にマスターするには太鼓も舞(仕草)も鍛え上げなければならず、五神太鼓は付け焼刃の練習では体得できない。難しい演目に挑戦しているだけに、練習を重ねるほど、成果は出てくる。来年以降も成長した姿を見てみたい。ほら貝も良かった。欲をいえば、もっと音が伸びるように練習してほしい。次に長浜高校。長浜といえば「豊年踊り」と言われるほど地元に密着し、有名な郷土芸能。三味線、唄い、太鼓、笛の囃子があり、3人が軽妙なテンポでユーモラスに演じていた。舞・唄・台詞など伝統芸能のいろんな要素が含まれており、それぞれをレベルアップしなければいけない。その中でよくまとまって発表ができていた。さいごにオープン参加の内子高校。今年8月の三重県での全国高文祭に出場した経験もあり、貫禄がみられる。学校・地域あげての取り組みは県内でも屈指の熱心さ。地元の指導者に教わりながら、イベント等に頻繁に出演して地域を元気にしている。地域に教わり、地域に還元し活性化する。この循環ができていることは素晴らしく、今後も続いていってほしい。

今年は、高文祭郷土芸能部門は出場校が8校。しかし、県内どの高校にも、必ず地元には何らかの郷土芸能がある。ただ、多くの郷土芸能は後継者育成で悩みを抱えている状況にある。今回出場した高校の郷土芸能は、地域を元気にすることに確実に寄与している。後継者育成だけでなく、高校生に郷土芸能という貴重な地域資源を深く学び、感じてもらう良い機会でもある。8高校だけでなく、来年以降、さらに出場校が増えていき、愛媛の郷土芸能が活性化することを切に願っている。

高文祭郷土芸能部門に参加した高校生の皆さん。お疲れ様でした。去年よりもレベルアップした発表を見て、日頃の大変な練習の姿も伝わってきました。来年の出場も期待しています。今年で部を引退する生徒さんは、卒業してからも郷土で学んだこと、芸能で体得したことを忘れることなく、地域を誇りに生きていき、そして後輩の練習・演技を見守ってあげてください。郷土芸能は継続・継承・伝承が大切です。卒業生の協力も今後の部の発展につながります。

参加した高校生、指導された教員、地元の方々、そして郷土芸能部門の開催を支えたスタッフの皆様、ご苦労様でした。