鈴木修一氏の第一詩集『緑の帆船』が出版された。
新旧90編の詩を6つのテーマに分けて配列し、各章の扉には著者の俳句を並べている。
更に特徴的なのは、各章の終わりに掲載作品の初出を掲示し作品を振り返る、背景に触れる
著者の言葉を付していること。ある意味作者と読者とを結びつける、作品へより近づけるヒ
ントにもなっている。
心象や事象を豊かな言葉で纏っている作品群は、俳人として活躍されてきた著者の詩情が
なせる世界とも言えそうだ。
「緑の帆船」 ー教室の窓にそよぐ樹々に寄せてー
風をはらんでゆさゆさと
大樹の緑が揺れている
春の日
わずかに萌え出した枝々から
空の青さを仰いだ時
太い幹が帆柱となって
ぐらりと揺らぐ目まいを覚えた
夏を迎えようとする今
木々は緑の帆を張って
春の予感を鼓吹している
われらこそ
大空をわたりゆく帆船の群であると……
そしてそのことを
私もまた諾うほかはない
送り返す光のシグナルは
地球をひと巡りしてきたものの喜び
巡る度に繁りゆくものの誇りの証しであるから
帆をふくらませている風と
同じ風に吹かれて
私の内部に満ちてくる思いがある
おまえもまた大空をめぐる旅人
繁りゆくこの帆船の水夫であったのだと……
著 者 鈴木修一(秋田県現代詩人協会会員、現代俳句協会会員、俳誌「海原」同人)
出 版 書肆えん(秋田市新屋松美町5-6)
発行日 2020年7月7日
定 価 2,000円+税
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