宮本苑生(みやもと・そのえ)さんから詩集『あかね雲』をご恵投いただいた。
宮本さんは東京都住。日本現代詩人会、日本詩人クラブ、日本ペンクラブの各会員。
いつもは<あとがき>に触れてから読み出すのだが、たまたま、あとがきを目にしないまま読み
進めていたところ、なにか全体が”死者”との語り、あるいは関わり合いを描いていることに気付い
た。あとがきを開いてみて、なるほどと頷く。
『Ⅰの「ひかり」は、東日本大震災のその年のうちに編んだ個人詩誌「ひかり」に、
作品「水底の骨」を加え、他は、ほとんどそのままの形で掲載しました。あとがきに
「震災の犠牲となられた方々にこの小さな作品集「ひかり」を捧げます。」と記しまし
た。』
とある。大震災の時、詩を書く者には何ができるのかとか、詩を(あるいは詩らしきものを)
こぞって直截的な事象として書くだけ・・そんなものか?と問われていた。詩を書く人がそう思っ
てそのように問う姿が多かったということは、ある意味での限界とか無力さを感じていたからに違
いない。詩はどうあるべきか、などと私はとても言い得る素養を持ち合わせていないが、宮本さん
のこの詩集に収められている作品群を読み進めて行くと、亡くなられた人の側とこの世の側の人と
の交感が実に現実的な感じさえして、こういう表現の仕方に感動した。詩は何をすることが出来る
のかという問いへの、より近接した<コタエ>の一つかも知れない。
見つけたかしら
この川は あの川と同じですか
渦巻き 逆巻いた
あの川と同じですか
この私は あの時の私と同じですか
こんなに儚くなったけど
同じですか
随分遠くまで探しにきました
哀しみだけが点る
ここは いったい どこですか
わたしの胸は張り裂けて
もはや記憶も曖昧です
私はあなたを探しています
水の匂いたよりに 探しています
あなたは 私を見つけたかしら
蛍になった あなた
蛍になった 私を
見つけたかしら
発 行 2023年5月10日
著 者 宮本苑生
発行所 土曜美術社出版販売
頒 価 2,000円
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