『モンサントの不自然な食べもの』巨大バイオ企業が牛耳る「食」。9月1日より全国順次公開
2012-08-27 19:11:17 | 世界
●マリー=モニク・ロバン監督『モンサントの不自然な食べもの』
世界の食卓に一石投じる力作―巨大バイオ企業が牛耳る「食」
木下昌明の映画の部屋/レイバーネット
マクドナルドのハンバーガーを食べ続けるとどうなるかを実験した『スーパーサイズ・ミー』以来、『ありあまるごちそう』『フード・インク』など「食」に関するドキュメンタリーが多く作られた。いずれの作品も多国籍企業によって生産された食べ物が世界中に広がっている実態に目を向けている。それは人々の食生活が様変わりするとともに、食自体の安全性が問われるようになったからだ。
フランスの女性ジャーナリスト、マリー=モニク・ロバンが監督した『モンサントの不自然な食べもの』は、多国籍企業がもたらす食のあり方の根本を問う一本だ。
彼女は米国を本拠地とする巨大企業「モンサント社」を相手取り、最大の武器としてインターネットを駆使する。企業の歴史や事件などを検索し、「これは」と思った問題にアクセスして確認のために現地に赴き、当事者の話を聞き、隠蔽(いんぺい)された実態に迫るという手法をとっている。取材で回った国は10カ国に上る。
同社の主力商品「遺伝子組み換え作物(GM)」は、果たして安全な食べ物か。それにかかわった科学者や元政府高官にあたって検証していく。これによって、GM大豆がレーガン→ブッシュ政権下の規制緩和政策のなかで始まり、科学的根拠よりも「政治的判断」を優先させた経緯を明らかにする。
同社はベトナム戦争で多くの奇形児を生んだ枯れ葉剤の製造で知られる化学薬品会社。それが、除草剤(ラウンドアップ)に耐性のある遺伝子組み換え大豆を発明したことで食品会社に転じた。これは原爆を原発に変えた発想とよく似ている。会社は政府にGM大豆の特許法を作らせ、タネと除草剤をセットで売り、従わない農家を、モンサントお抱えの探偵が次々と摘発し、全米の大豆の90%を占めるに至った。
大豆農家の一人は言う――「彼らは世界中の食糧を支配しようとしている」と。
TPP(環太平洋パートナーシップ協定)を考える参考にもなる。
(木下昌明/『サンデー毎日』2012年9月2日号)
(mokeihikiさんの許可を得て転載しました。)