日刊ゲンダイより
【TPP参加悲観論】
国民も国会議員もダマしてきた亡国官僚
最初から米国の言いなりだった
大新聞・TVは今頃になって、TPPの問題点を取り上げているが、ふざけた話だ。
問題点はとっくに分かっていたのに、官僚の情報操作に乗っかり、見て見ぬふりを決め込んできたのである。
東大大学院の鈴木宣弘教授(農学国際専攻)も「この間、TV局のスタッフがTPPのメリット、デメリットを並べようとしたら、メリットが見当たらなかったとか言うのです。
もっと早く気づいて報道してほしかった」と呆れていたが、本当だ。
TPPの真相はなぜ、覆い隠され、国民に伝わらなかったのか。
TPP交渉は2011年11月、野田首相(当時)がハワイで、「参加に向けて関係国と協議する」と表明したことが事実上のスタートだ。
これは、実を言うと、大震災の直後から練られていたシナリオだ。
内閣官房は大震災を“チャンス”と捉え、抜き打ち参加表明をもくろんだフシがあるのだ。
「世間が大震災一色になれば、TPPに関する情報を出さずに済む。
国民的議論をさせないで、11月に滑り込み参加表明すればいい。
参加の話は直前の10月ごろに急浮上させて強行突破すればいい」と、こんなプランを口にする官僚が実際、いたのだ。
大マスコミの報道を見ていると、安倍首相が初めて参加表明に踏み込んだように見えるが、真相はまったく違う。
「野田首相のハワイでの表明のあと一部の官僚が秘密交渉を始めたのです。
というより、この間の交渉は米国に参加を承認してもらうための事前交渉でした。
何でもいいから参加したい日本に対して、米国は『それならまず、入場料を払え』と言ってきた。
米国がこれまで規制緩和を求めてきた自動車やBSE、郵政の問題をまず解決せよ、ということです。
この中には『米国車の最低輸入義務台数を設定せよ』というような理不尽な要求も含まれていた。
しかし、それを国民に知らせたら、TPP反対論が湧き起こる。
だから、内緒で交渉を重ねてきたのです」(鈴木宣弘氏)
<「国民を騒がせないことが仕事」>
交渉参加の入り口から、無理難題を吹っかけられ、それでもポチのごとく、シッポを振ってきたのが日本の一部の官僚なのである。
TPPにメリットがないのは当たり前。
最初から米国企業のための、米国企業による協定なのだ。
この間、カヤの外に置かれていたのは国民だけではない。
民主党の国会議員が交渉内容の開示を求めても、官僚は「情報収集とアイデアの交換をしているだけ」とスットボケてきた。
「この2年間、彼らはウソをつき続けてきたのです。
国民や国会に何も説明しないまま、国を売るような協定のお膳立てを着々と進めてきたのです。
民主党政権がなかなか正式参加表明ができなかったのは、国民の懸念が大きかったからではありません。
米国が入り口で妥協しなかったからです」(鈴木宣弘氏)
そのたびに頭を下げて、妥協する秘密交渉が何度も繰り返されてきたわけだ。
良識ある官僚は、そこまでして参加で突き進む官僚に「そんなことを国民に隠して、あとで日本がたいへんなことになったら、どう責任を取るのか」と迫ったこともあったという。
しかし、はき違えるな、我々の仕事は、国民を騒がせないことだ」と切り返された。
自分を何様だと思っているのか、亡国官僚の卑劣な手法は許し難い。