絶望と悲哀と寂寞とに堪え得られるやうなまことなる生活を送れ。
運命に従うものを勇者という。
田山花袋
細かい雨が降ったりやんだりしている。肌寒い。
流れに任せるところは任せて、小さなところでゆっくりとコントールした。
その結果、今日はぎりぎり、うまくいった。
A医院は古い内科医院だ。昔と何も変わっていなかった。
古ぼけた長椅子に座る。
「おろち」のワンシーンを思い出す。これで柱時計があれば完璧でした。
A先生とそうすけは齢を重ね、無常を知る。
血圧は、まあまあだそうです。
改善改善というけれど、人間関係、取引関係の間には、改善はなしえない。そこに人間社会の弱さがある。
物理的に空間は埋まっている。時間はすすむばかりで後戻りはしない。このジレンマを解決するには・・・???
「マツノ・・・だって!世界に人間はいくらいると思ってるの!」
74億。
ゆく川の流れの泡のように浮かんでは消えながら、この地球上に、最強品種人間が74億生存している。
これじゃあ、地球にいいわけないよ。わかっちゃいるけどやめられない。
仕事もぎすぎすするわけだ。
何とかなりました。どうにかなるものです。ほんのすこしの愛を与えることができたら、どんなに幸せでしょう。
身体は老人力が増すばかり、気持ちだけでも余裕をもって笑っていきたいものです。
A医院にいった。健康診断で血圧が高いからだ。
「きみ、前にも来たことあるよね」
はい、40年前ほどの子供のころです。
もう一度、もう一度、うちあげよう。
ゆっくり吸い、ゆっくり吐く。
声なきものに訊き、形なきものを看よ。
他者に向けて話しかけていても全く話し合いになっていない。
コミュニケーション不全。
これが、なんだか、もやっとする原因だった。
晴れている向こう側が煙っている。でも様子は平穏である。それは豪雨だった。ある地点だけ前が見えなくなるほどの雨が降っている。わが祖国日本よ、どうなっておるのだ。