楽しければOK
苦しければOK
かなしければ芸になる。
怒りはNO
虚しさはNO
さびしければ詩になる。
ケーキがひとつあった
兄の前にケーキがひとつあった。
兄が、このケーキをおいしく食べるには
どうしたらよいでしょうか?
苦しければOK
かなしければ芸になる。
怒りはNO
虚しさはNO
さびしければ詩になる。
ケーキがひとつあった
兄の前にケーキがひとつあった。
兄が、このケーキをおいしく食べるには
どうしたらよいでしょうか?
川の浅瀬に重い石を落とすと、川底から砂が立ち上がって水を濁すように、あの気持ち”が底から立ち上がってきて心を濁す。いためつけたい。蹴りたい。愛しさよりも、もっと強い気持で。足をそっと伸ばして爪先を彼の背中に押し付けたら、力が入って、親指の骨が軽くぽきっと鳴った。
「蹴りたい背中」 綿矢りさ 河井書房新社 P140
文学は時代を映す。そうすけが作家だったらハツは、にな川の背中にそっと腕を回すね。むかし、むかしの女性は愛しいさを表現することが絵になったよね。
待てよ。最近このシーンをどこかで観たぞ。
映画「間宮兄弟」に女の子が塚地の背中に腕を回していたシーンがありました。
でも、ハツは「愛しいさよりも、もっと強い気持で」足のつめをたてる。
文学だねぇ。思春期だねぇ。孤独なんだねぇ、にな川もハツも。
それでも、抱きたいのではなく、蹴りたいのだから青春は複雑だ。
ハツのこの衝動も「川底から砂が立ち上がって」汚した気になっているけど川の流れで、すぐに清い浅瀬の川に戻るのだろう。
沼のほとりに佇んでいると、沼底から巨大な鯉が上がってくる。鯉は水面に口を大きく開けてひと睨みすると消えた。小波だけがのこった水面のように「あの気持」がさざめく。逃げたい。走りたい。憎しみよりももっと強いきもちで。ランニングヲしていると、雨が降ってきた。そうすけは全身がずぶぬれになる。雨と汗と鼻水で。
続編を書いてほしい。綿矢りささん、それまで、そうすけは長生きするよ。