不動産独立開業は
定年後の今が チャンス
「富士そば」 new
人気の秘密 連載中(5)
分社化した7社が競い合う
富士そばの経営はユニークだ。ダイタンホール
ディングス傘下に、分社化した7つの企業があ
り、ダイタンフード、ダイタン企画、ダイタン
食品、池袋ダイタンフード、ダイタンイート、
ダイタンミール、ダイタンキッチンが富士そば
各店の運営を担う。いずれも業務内容は「そば、
うどん、カレーライス、天丼、牛丼、かつ丼の
販売」だが、トップダウンではなく、できるだ
け「現場主導」のスタンスを維持するために分
社化しているそうだ。「出店も分社化した各企
業の役割です。当社は専門の店舗開発部署を持
っておらず、各企業の常務がこれはという出店
物件を探し出し、私や会長が採否を決定します。
ちなみに当社の場合、長年の実績で地元不動産
店との信頼関係が厚く、空き店舗情報などをい
ち早く教えてもらえます」(丹有樹氏)
(次回に続く)
「富士そば」
人気の秘密 連載中(4)
飲食店の24時間営業は当時珍しかった
富士そばを創業したのは有樹氏の父である道夫
氏(現会長)だが、44年前の創業当初から、当
時の飲食店では珍しかった「24時間営業」を導
入するなど、新たな取り組みをしてきた。24
時間営業は、食事時間が多様化した現代人には
便利だ。残業時の夕食や、終業後の“ちょい飲み”
で支持される店もある。手頃な価格と味のバラ
ンス、店に入って食べ終わるまで平均10分程度
ですむスピード感、といった使い勝手のよさが
人気のようだ。
(次回に続く)
「富士そば」
人気の秘密 連載中(3)
業界に先がけて「安いセットメニュー」
「24時間営業」で訴求
「日替わりミニ丼セット」――東京・代々木駅
前、JRの改札口を出て30秒ほどの「富士そば
代々木店」のドアに貼られていたメニューだ。
例えば、月曜日はミニカレー丼など、日替わ
りのミニ丼とそば・うどんのセットが500円
前後で味わうことができる。冒頭に記した競
合店よりも少し安い。単品のそば類は300~
400円台が多く、丼ものも充実。490円(税
込)のかつ丼は1枚肉を使っており、価格の
割に品質が高い。立ち食いそばといいながら
店内はイス席なので、よほどの混雑と時間に
追われない限り、座って食事をとることがで
きる。同店を運営するダイタンホールディン
グスの丹有樹社長は次のように語る。
「ランチ需要はきちんと取れていますが、消
費者の財布のヒモは固いままですね。以前に
セットメニューを530円にしたところ、客足
が鈍った店が多かったので、500円以下のセ
ットメニューも再開発しました。客層により
ますが、ワンコインでランチをすませたいニ
ーズは非常に高いです」
(次回に続く)
「富士そば」
人気の秘密 連載中(2)
富士そば売上推移
(次回に続く)
「富士そば」
人気の秘密 新連載(1)
サラリーマンの味方
仕事は忙しくても、なかなか収入が伸びない
ご時勢だが、社会人は毎日の昼食代にいくら
使っているのだろうか。新生銀行の「2016
年サラリーマンのお小遣い調査」によれば、
男性会社員は587円、女性会社員は674円だ
という。同調査では、男性会社員の毎月のお
遣いは過去3番目に低い3万7873円と、限ら
れた額で昼食代を捻出する実情がうかがえる。
そんな庶民の味方の一つが比較的安価な立ち
食いそば店だ。特に首都圏では「名代(なだ
い)富士そば」(以下、富士そば)「ゆで太
郎」「小諸そば」といった大手チェーン店が
競い合う。今回はその中で最も歴史の古い、
1972年創業の富士そばを取り上げたい。老
舗だが守りに入らずに積極的なメニュー開発
もあり、近年の業績は右肩上がりだ。2010
年末は売上高が約73億4028億円、国内店舗
数が90店だったが、2015年末には同89億2
016万円、113店舗まで伸びた。さらに海外
にも出店し、台湾とフィリピンに9店舗を展
開している。
高井尚之 経営コンサル
(今回 新連載 です)
鳥貴族 快進撃 new
継続できるワケ 最終回(14)
人の脳は抽象化することが苦手
確かに製品の具体的な形が決まっていない段
階で、因果関係マップを著者が描いてみせる
と、開発者たちは「頭の中がすっきりした」
とか「問題の本質がわかる」と高く評価して
くれた。つまり複雑な因果関係が、一目で理
解できるようになる。しかし、開発者自らが
因果関係マップを描こうとすると、最初から
描ける人は1割しかいなかった。これは、抽
象化思考をすること、つまり「深い構造を読
み取ること」を人の脳は苦手とするからだ。
因果関係マップを多くの人が使いこなせるよ
うになるには、そのためのトレーニングを開
発しなければならない。これが、私が「深速
思考」と呼ぶトレーニングを開発したきっか
けだった。これはいわば「非トヨタ社員が『
トヨタの思考』を身につける訓練方法」とも
いえるだろう。
(今回 最終回 ありがとうございます)
鳥貴族 快進撃
継続できるワケ 連載中(13)
「発想を広げる」ことが重要
このように、因果関係マップをつくることよ
りも、それによって頭の中に抽象化された施
策が入ることで「発想を広げる」ことが重要
だ。トヨタの製品開発手法に基づいて欧米で
発想された「リーン製品開発」という手法を
企業に普及させる仕事をしているその中で「
構想設計」と呼ばれる、製品の図面を描き始
める前に製品のさまざまな特性をどう設定す
べきか検討する段階がある。ここで製品の複
雑な因果関係を理解するために、因果関係マ
ップ(Causal Map)に出合い、数年前から
コンサルティングしている数社でこれを使い
始めた。
(次回 最終回 お楽しみに)
鳥貴族 快進撃
継続できるワケ 連載中(12)
クチコミとリピーターで販売を伸ばす
これに対して鳥貴族は、メニューが焼き鳥中
心だが、何といっても鶏肉が新鮮で美味しく
焼き上がっていながら280円均一と安い。こ
れを同じく商品でいえば、機能は絞り込まれ
ているが、どれも非常によく仕上がっている
上に、価格も安い。万人受けしなくとも、一
部の消費者には刺さる商品ということだ。1
階以外の通りから目立ちにくい階に出店し、
家賃を節約していることは、たとえば広告宣
伝におカネをかけずにクチコミとリピーター
で販売を伸ばすといった連想ができる。
(次回に続く)
鳥貴族 快進撃
継続できるワケ 連載中(11)
製品企画に使える
そこで「あ、これは鳥貴族と同じだ。メニュ
ーはステーキだけに絞っていて、専用グリル
で素早く何人分ものステーキを焼いている。
注文してから料理が出る時間が早いから店の
回転も早いんだろう」「あ、調理係が大きな
ブロック肉からステーキを切っている。肉は
小さく切り分けてから料理する時間を短縮す
るほうがおいしくなるんだろうか」といった
ことが次々と連想できる。こうしたアナロジ
ーによる連想を活性化させるのが、因果関係
マップをつくる本当の狙いだ。鳥貴族の施策
は、製品の企画にも使える。鳥貴族のライバ
ルの居酒屋チェーンは料理の種類が多いが、
味はそこそこだ。これは、商品でいえば、
機能はてんこ盛りだが、どの機能もそこそこ
の出来具合・性能ということだ。
(次回に続く)
鳥貴族 快進撃
継続できるワケ 連載中(10)
「いきなり!ステーキ」も本質は同じ
鳥貴族の戦略は、「鶏肉料理中心でメニュ
ーの幅が狭い」というデメリットがあって
も、抜群においしくて安くすれば、通い続
ける客がいることを利用している。だから
店舗は1階以外のフロアにするとか、アル
バイトを多用するというコストダウン策を
取りながら、鶏肉は高価な国産品を店内で
串打ちしておいしくしている。コストを節
約するところは徹底的に節約しながら、金
をかけるところは思い切ってかけているの
だ。こうして因果関係マップを何度も眺め
ていれば、その中の主要な施策が抽象化さ
れて脳に記憶される。そして、まったく別
の場面で、(抽象レベルで)こうした記憶
の中の施策と同じ構造を発見すると、脳の
連想回路が働き、思い出すことができる。
たとえば、ご存じの方も多いと思うが、「
いきなり!ステーキ」という、立ち食い形
式ながら、一般のレストランの半額程度で
おいしいステーキが食べられる人気店があ
る。店内にはオープンキッチンの真ん中に
大きなガスグリルがあり、そこでステーキ
を焼いている。
(次回に続く)
鳥貴族 快進撃
継続できるワケ 連載中(9)
絞り込みの戦略
そこで問題になるのは「うまい」と「安い」
を両立することが非常に難しいことだ。多
くの居酒屋は食材を一括大量購入し、セン
トラルキッチンで加工した上で、店で最終
調理するが、低価格路線を行くと味が落ち
てしまう。このジレンマの一つの解決法が
「メニューを鳥肉料理中心に思い切って絞
り込む」という戦略なのだ。考えてみれば
ハンバーガーなどのファストフードのほと
んどがこの戦略を取っているが、居酒屋は
多様な料理が食べられることが売りだった
ので、このような発想が生まれにくかった
のだろう。
(次回に続く)
鳥貴族 快進撃
継続できるワケ 連載中(8)
因果マップで不変的な法則を学ぶ
「売上アップ」の箱の原因をたどると、①「焼
き鳥中心のメニュー→早い」と、②「280円
均一料金→安い」と、③「店内で串打ち→う
まい」と、④「自社開発グリル器→うまい」
と4つの流れがあることがわかる。以上から、
たとえば「焼き鳥中心のメニュー」にしたこ
とが「コストダウン」と「売上アップ」両方
につながっていること、つまり、利益を売上
とコスト両方から押し上げていることがわか
る。因果関係マップは、単に企業の儲かるし
くみ(ビジネスモデル)をわかりやすくする
だけではない。これを見ながら、より深く考
えると、特定企業の戦略以上の「普遍的な法
則」に気づくことがある。たとえば家賃を節
約するために1階以外に出店するということ
は、ふらりと入る客は減ることを意味する。
それでも店をいつも満員にするためには「鳥
貴族はコスパが抜群!」といったクチコミを
広げて、「またあそこに行こう」というリピ
ーターを増やす必要がある。そのためには「
早い・うまい・安い」の三拍子がそろってい
なければならない。
(次回に続く)
鳥貴族 快進撃
継続できるワケ 連載中(7)
「原因」と「結果」をまとめると?
そこで、こうした分析のうえで、「原因」と
「結果」の関係上のポイントをまとめた図を
描くと、複雑な因果関係を無理なく頭に入れ
ることができ、これを繰り返すことで、本当
に使える「深い知識」が身につく。このよう
な図を私は「因果関係マップ」と呼んでいる。
鳥貴族の因果関係マップには18個の要素が入
っており、これを一度に頭の中に入れること
は不可能に近い。しかし、このマップを使え
ば「ズームイン・ズームアウト思考」が容易
にできる。たとえば「コストダウン」の箱の
原因をたどると、①「焼き鳥中心のメニュー
→大量仕入→材料費ダウン」というつながり
と、②「アルバイト多用→人件費ダウン」、
そして、③「1階以外に出店→家賃ダウン」
という3つの流れがあることがわかる。
(次回に続く)