【単行本6巻…自分と他者とが生きていくということ】
『失恋ショコラティエ』の言いたい放題記事、今回は第6巻。
悲しげな表紙どおりのビター巻です。
冒頭は美女キャラ・薫子さんがストレスマックスで他人にあたりまくる描写が。
「私だけがソンしてる!!」
とイライラして、弱きもの(ここではまつりちゃん)につっかかったり、もともと見下し癖が強いキャラではありましたが男子キャラへの言動もどんどんきつくなります。
薫子のいない場面ではありますが、ソータパパが
「薫子ちゃんは最近いつも不機嫌だ」
「あれくらいの年になると女性は色んな理由で不機嫌になるからケアしてあげなきゃ」
と話す…。
この漫画のキャラはほぼ全員が一昔前の日本の“当たり前”な男女観をしっかり守っていて、男性キャラも女性キャラも加害にまわったり被害にまわったりと“当たり前”に苦しんでいます。
特に薫子とソータの二人はその傾向が強く、二人はやたら
「男は」
「女は」
という言葉を言ったり考えたりします。
例えば前巻でソータが言ったこれ。
「俺は女の悪口言う女は大っ嫌いだ」
6巻で薫子が思った言葉たち。
「あたしはつまんない女だ」
「バカな男」
…悲しいねぇ。
薫子が苦しむ幻想は、私自身少女時代に思い込んでたものでもあるんですが
「なにもせず受け身でいて、男から愛されるのが女としての幸せであり価値の証明」
ってやつ。
この漫画が連載してた時代って、私の記憶が確かならまさに“愛されOLブーム”の頃だと思うので…時代を反映してますな~。
もうひとつの大事なエピソードが、オリヴィエがまつりちゃんと共に元彼に会いにいく話。
優しいおっとりキャラのオリヴィエがいう
「まつりちゃんはバカなの?」
の言葉は私は共感しかないな~。
一人でのこのこ元彼の家なんていったら、あぶないよ…もちこまれちゃうよ…。
なんとかセック〇に持ち込んでまた肉体関係復活させようってのが相手の狙いなんだから。
男女の筋力の違い・相手のホームエリア(自宅だからな)であること考えれば、簡単にレイ〇されちゃうと思うよ。
今(2019年)の価値観だったらもしこうやって無理やり関係をもたれた場合、それは性犯罪だと多くの人が思うだろう。
でもこの時代は…
「女もやる気満々」
「こんなの同意でしょ」
っていわれちゃったんだろうなぁ。
まつりも、薫子もソータもですが相手のある問題なのに“自分の主観”だけで思い込んだ世界に生きていると感じるな~。
恋愛してんのに一人相撲状態。
「恋愛ってある程度自分に酔っていないとできないものだから」(オリヴィエの言葉)
はもちろんそうなんだけど、それでもお互い伝え合っていかなきゃいけないのが生きるってこと。
自分だけの世界じゃないですからね。
【サエコは都合のいい妖精でも小悪魔でもない】
さてさて、この物語の大きな山である
「ソータが、サエコへの片想いを終わらせてエレナと付き合うために豪華バレンタインチョコボックスを作って告白する」
回。
悲しかった~切なかった~。
サエコがかわいそうすぎて…。
サエコの
「あたしだって人間だから」
という言葉につながるひとつの大きな流れで、ここへきてソータの“サエコさんを生身で心もある人間として扱わず、自分に都合のいいファンタジーな存在だと思い込んで接する”が極まってます。
「人間扱いじゃないよ」(byサエコ)
は、今までもたっぷり描かれてきたダンナ→サエコへのモラハラだと考える人が多いでしょう。
たしかにそうなんだけどソータも別のやり方でダンナと同じなの。
サエコだって心ある普通の人間。
ダンナに毎日モラハラされて、心身ともにダメージくらってく中でソータに優しくされたら好きになっちゃうよ。
そもそもソータを最初にふってしまったことこそがサエコの失敗で、本当は好きだったとしか私は思えない。
「一緒にいて楽しくて安定した気持ち」
と
「イケメンや遊び人に翻弄されるトキメキ(実際はハラハラしてるだけかも?)」
「ママが喜ぶ世間的ないい条件」
とを比べてソータを切った、その先に進んだ先にあったのが“ダンナに無職の専業主婦とののしられるモラハラ地獄”ですよ。
サエコも心のどこかでわかってるからこそ、婚約しててもアプローチし、結婚式をダシにしてまで関係をせまろうとしてたのだし。
まさに一巻のオリヴィエの言葉でありこの物語のテーマである
「芸術は人生を彩る大切な華。
でも恋は芸術ではなく人生そのもの。
過酷でドロドロに汚れるものだ」
という言葉をサエコというキャラに込めているんですね。
ソータにとってサエコは自分を翻弄する悪女、魅惑的な小悪魔、いつまでも恋させる妖精。
実在しているのに現実感がない芸術(ショコラ作り)のための火種にすぎない。
だからサエコさんサエコさん言いながらいつでも現実に好きなのはエレナ。
でも実際のサエコは清いところも汚いところも、傷つく心も持っている普通の人間。
……て、ね…。
水城さん(作者)は、何度も書くけど無駄なモノローグやセリフはぜったい書かない。
けれど美しいイラストに全てをこめて描いてる。
バレンタインボックスをソータに渡され告白…というより心変わり宣告を聞くサエコの気持ちが画面にあふれてて、とても悲しくなりました。
「貴女のことがずっとずっと大好きだった。
貴女に喜んでほしくてショコラティエになった」
ダンナにいつも軽んじられ、虐げられているサエコには嬉しすぎる言葉です。
天にも昇る気持ちだよね。
それなのに
「でももうやめるね」
…この言葉。
やっと両想いになれたとサエコは思ったのに(不倫うんぬんのツッコミは後で)。
ずっと後悔していた恋をやっと取り戻せたと思ったのに。
そりゃ泣くよ、泣きますよ。
またこの泣き顔がね…
「でも仕方ないんだ…私は結婚してるし…それを選んだのは自分だし…」
という気持ちが伝わってくる表情なの。
ソータにキスされてる時の手の動き(結婚指輪が~)にも気持ちが溢れている。
うまい!!!
サエコの気持ちは明確な言葉で語られないし、このあとの展開を考えると
「サエコてめ~」
と思う読者も多いとは思いますが。
私はサエコ、この時点でダンナと離婚する=ダンナを決定的に裏切る。つもりはなかったと思う。
この段階じゃまだ出てこないけど、この頃のサエコって妊娠わかってるのでしょうか?
生理とまってる…くらいの予感かな。
それがあればこその泣いて逃げ去る・お断りメールを打つけど送信できない…という苦悩の描写なのかなと。
【ソータのことも責めてばっかじゃいられない】
ソータのやってることもエレナへの裏切りですが、彼のこと責めてばっかじゃいられないんだよね。
やっぱり昔大好きだった人って今でも好みだし、サエコのふり方ひどかったし(ソータが思うほど実際は拒絶してたわけじゃないのですが)、キスしちゃうのはわかる。
エレナとサエコ夫は怒っていいけど!
ばっさりショートカットからセミロングまでのびる間のサエコの髪型は
「心があの時に帰っている」
シンボルでもあるのです…これは次の7巻がメインになってくるのですが。
「嘘でも言葉にしていたら現実になる」
と後にオリヴィエが語るように、現実のサエコさんへの生きた恋ではない、芸術のための種火でしかなかったソータの片想い。
いつもいつも口にしてたから、現実味をもってしまったんですね。
上手いわ~。
【サエコがゆるせなかったのは大切なものを踏みにじられ続けたから】
この巻で一番サエコにとって辛い事件が起こってしまう。
ダンナを裏切ってソータと不倫関係になるつもりも、離婚してやり直す気はない。
でも、辛い結婚生活のよりどころがソータのショコラに込められた優しさしかない。
どうしてもこの気持ちに折り合いをつけられない…。
そんな時にダンナが、悪気なくバレンタインボックスのチョコを食べてしまいます。
サエコが怒ったのは、ずーっとダンナにやられてきた
「サエコの大切なものを踏みにじる」
行為が積み重なってのトドメのこれだったからだと私は思う。
ダンナを裏切って不倫するつもりならもっと早くサエコはやっちゃってたよ。
ダンナが
「たかがチョコ」
なんて言われないで
「ごめん、そんなに大切なものだと思わなくて食べちゃった。
君を傷つけた」
って思えて・伝えられる人だったらサエコはソータにここまで逃げなかったし、たとえ食べても
「ダメだよ~私のとっておきなんだから!」
と普通のテンションで返せたはず。
この時の感情の高ぶりを理由にダンナはサエコの不倫を疑い、口汚くののしります。
そして反論したサエコは
「そんなんだから前の奥さんともダメになっちゃたんじゃない」
と言って、地雷を踏んでしまう。
というか
「ダメになっ」
の段階でダンナ、サエコの顔を強く殴る。
怖っ。
よっぽど彼には離婚=恥だったんだな。
(浮気されたか心変わりされての離婚だろうし)
でも、これはひどすぎるだろう。
殴って、嫌だやめてとサエコが叫んでいるのに、レイ〇する…なんて悲しい。
皆さん、夫婦間でも明確な合意がないセック〇はレイ〇だからね。
しかもこれ、夫婦間の愛じゃなく暴力として意図的に(もうはっきり!)彼がやってるから。
またしても
「サエコの大切なもの」
は踏みにじられてしまいます。
散々やられてきたからね。
サエコの好きなもの、大好きな友達、心、サエコがやってくれる仕事。
可能性、未来、過去…。
つらい。
あざがハッキリついてしまった腕で一人お風呂で体を洗い、転がったままのスーパーの袋を拾って冷蔵庫に食材をおさめるサエコがまた辛く悲しく…。
人生は続く。
生きてるかぎり。
自分へ向けられた優しさの象徴であるチョコを食べて、背中をふるわせる彼女はきっと泣いているんだろう。
(後ろ姿なのがまた…悲しい…)
この事件がなれければ、サエコはぜったい家出をしなかった。
そう確信させる悲しい悲しいエピソードでした。
【同じだけど】
これでこの記事は終わりでいいんだけど、あまりにこれじゃ辛いから前回記事の繰り返しではありますが、この巻に出てくるお菓子で食べたいのは“ソータがサエコに贈ったスペシャルバレンタインボックス”。
「あたしの好きなものばっかり」
これはサエコのセリフ。
うんうん、いつもいつも虐げられてる中で好物プレゼントされたら嬉しいよね…。
窮地の中で差し出される優しさは砂漠の中の水みたいなもんだ。
わかるよ~。
悲しいまま今回は終わる。
『失恋ショコラティエ』の言いたい放題記事、今回は第6巻。
悲しげな表紙どおりのビター巻です。
冒頭は美女キャラ・薫子さんがストレスマックスで他人にあたりまくる描写が。
「私だけがソンしてる!!」
とイライラして、弱きもの(ここではまつりちゃん)につっかかったり、もともと見下し癖が強いキャラではありましたが男子キャラへの言動もどんどんきつくなります。
薫子のいない場面ではありますが、ソータパパが
「薫子ちゃんは最近いつも不機嫌だ」
「あれくらいの年になると女性は色んな理由で不機嫌になるからケアしてあげなきゃ」
と話す…。
この漫画のキャラはほぼ全員が一昔前の日本の“当たり前”な男女観をしっかり守っていて、男性キャラも女性キャラも加害にまわったり被害にまわったりと“当たり前”に苦しんでいます。
特に薫子とソータの二人はその傾向が強く、二人はやたら
「男は」
「女は」
という言葉を言ったり考えたりします。
例えば前巻でソータが言ったこれ。
「俺は女の悪口言う女は大っ嫌いだ」
6巻で薫子が思った言葉たち。
「あたしはつまんない女だ」
「バカな男」
…悲しいねぇ。
薫子が苦しむ幻想は、私自身少女時代に思い込んでたものでもあるんですが
「なにもせず受け身でいて、男から愛されるのが女としての幸せであり価値の証明」
ってやつ。
この漫画が連載してた時代って、私の記憶が確かならまさに“愛されOLブーム”の頃だと思うので…時代を反映してますな~。
もうひとつの大事なエピソードが、オリヴィエがまつりちゃんと共に元彼に会いにいく話。
優しいおっとりキャラのオリヴィエがいう
「まつりちゃんはバカなの?」
の言葉は私は共感しかないな~。
一人でのこのこ元彼の家なんていったら、あぶないよ…もちこまれちゃうよ…。
なんとかセック〇に持ち込んでまた肉体関係復活させようってのが相手の狙いなんだから。
男女の筋力の違い・相手のホームエリア(自宅だからな)であること考えれば、簡単にレイ〇されちゃうと思うよ。
今(2019年)の価値観だったらもしこうやって無理やり関係をもたれた場合、それは性犯罪だと多くの人が思うだろう。
でもこの時代は…
「女もやる気満々」
「こんなの同意でしょ」
っていわれちゃったんだろうなぁ。
まつりも、薫子もソータもですが相手のある問題なのに“自分の主観”だけで思い込んだ世界に生きていると感じるな~。
恋愛してんのに一人相撲状態。
「恋愛ってある程度自分に酔っていないとできないものだから」(オリヴィエの言葉)
はもちろんそうなんだけど、それでもお互い伝え合っていかなきゃいけないのが生きるってこと。
自分だけの世界じゃないですからね。
【サエコは都合のいい妖精でも小悪魔でもない】
さてさて、この物語の大きな山である
「ソータが、サエコへの片想いを終わらせてエレナと付き合うために豪華バレンタインチョコボックスを作って告白する」
回。
悲しかった~切なかった~。
サエコがかわいそうすぎて…。
サエコの
「あたしだって人間だから」
という言葉につながるひとつの大きな流れで、ここへきてソータの“サエコさんを生身で心もある人間として扱わず、自分に都合のいいファンタジーな存在だと思い込んで接する”が極まってます。
「人間扱いじゃないよ」(byサエコ)
は、今までもたっぷり描かれてきたダンナ→サエコへのモラハラだと考える人が多いでしょう。
たしかにそうなんだけどソータも別のやり方でダンナと同じなの。
サエコだって心ある普通の人間。
ダンナに毎日モラハラされて、心身ともにダメージくらってく中でソータに優しくされたら好きになっちゃうよ。
そもそもソータを最初にふってしまったことこそがサエコの失敗で、本当は好きだったとしか私は思えない。
「一緒にいて楽しくて安定した気持ち」
と
「イケメンや遊び人に翻弄されるトキメキ(実際はハラハラしてるだけかも?)」
「ママが喜ぶ世間的ないい条件」
とを比べてソータを切った、その先に進んだ先にあったのが“ダンナに無職の専業主婦とののしられるモラハラ地獄”ですよ。
サエコも心のどこかでわかってるからこそ、婚約しててもアプローチし、結婚式をダシにしてまで関係をせまろうとしてたのだし。
まさに一巻のオリヴィエの言葉でありこの物語のテーマである
「芸術は人生を彩る大切な華。
でも恋は芸術ではなく人生そのもの。
過酷でドロドロに汚れるものだ」
という言葉をサエコというキャラに込めているんですね。
ソータにとってサエコは自分を翻弄する悪女、魅惑的な小悪魔、いつまでも恋させる妖精。
実在しているのに現実感がない芸術(ショコラ作り)のための火種にすぎない。
だからサエコさんサエコさん言いながらいつでも現実に好きなのはエレナ。
でも実際のサエコは清いところも汚いところも、傷つく心も持っている普通の人間。
……て、ね…。
水城さん(作者)は、何度も書くけど無駄なモノローグやセリフはぜったい書かない。
けれど美しいイラストに全てをこめて描いてる。
バレンタインボックスをソータに渡され告白…というより心変わり宣告を聞くサエコの気持ちが画面にあふれてて、とても悲しくなりました。
「貴女のことがずっとずっと大好きだった。
貴女に喜んでほしくてショコラティエになった」
ダンナにいつも軽んじられ、虐げられているサエコには嬉しすぎる言葉です。
天にも昇る気持ちだよね。
それなのに
「でももうやめるね」
…この言葉。
やっと両想いになれたとサエコは思ったのに(不倫うんぬんのツッコミは後で)。
ずっと後悔していた恋をやっと取り戻せたと思ったのに。
そりゃ泣くよ、泣きますよ。
またこの泣き顔がね…
「でも仕方ないんだ…私は結婚してるし…それを選んだのは自分だし…」
という気持ちが伝わってくる表情なの。
ソータにキスされてる時の手の動き(結婚指輪が~)にも気持ちが溢れている。
うまい!!!
サエコの気持ちは明確な言葉で語られないし、このあとの展開を考えると
「サエコてめ~」
と思う読者も多いとは思いますが。
私はサエコ、この時点でダンナと離婚する=ダンナを決定的に裏切る。つもりはなかったと思う。
この段階じゃまだ出てこないけど、この頃のサエコって妊娠わかってるのでしょうか?
生理とまってる…くらいの予感かな。
それがあればこその泣いて逃げ去る・お断りメールを打つけど送信できない…という苦悩の描写なのかなと。
【ソータのことも責めてばっかじゃいられない】
ソータのやってることもエレナへの裏切りですが、彼のこと責めてばっかじゃいられないんだよね。
やっぱり昔大好きだった人って今でも好みだし、サエコのふり方ひどかったし(ソータが思うほど実際は拒絶してたわけじゃないのですが)、キスしちゃうのはわかる。
エレナとサエコ夫は怒っていいけど!
ばっさりショートカットからセミロングまでのびる間のサエコの髪型は
「心があの時に帰っている」
シンボルでもあるのです…これは次の7巻がメインになってくるのですが。
「嘘でも言葉にしていたら現実になる」
と後にオリヴィエが語るように、現実のサエコさんへの生きた恋ではない、芸術のための種火でしかなかったソータの片想い。
いつもいつも口にしてたから、現実味をもってしまったんですね。
上手いわ~。
【サエコがゆるせなかったのは大切なものを踏みにじられ続けたから】
この巻で一番サエコにとって辛い事件が起こってしまう。
ダンナを裏切ってソータと不倫関係になるつもりも、離婚してやり直す気はない。
でも、辛い結婚生活のよりどころがソータのショコラに込められた優しさしかない。
どうしてもこの気持ちに折り合いをつけられない…。
そんな時にダンナが、悪気なくバレンタインボックスのチョコを食べてしまいます。
サエコが怒ったのは、ずーっとダンナにやられてきた
「サエコの大切なものを踏みにじる」
行為が積み重なってのトドメのこれだったからだと私は思う。
ダンナを裏切って不倫するつもりならもっと早くサエコはやっちゃってたよ。
ダンナが
「たかがチョコ」
なんて言われないで
「ごめん、そんなに大切なものだと思わなくて食べちゃった。
君を傷つけた」
って思えて・伝えられる人だったらサエコはソータにここまで逃げなかったし、たとえ食べても
「ダメだよ~私のとっておきなんだから!」
と普通のテンションで返せたはず。
この時の感情の高ぶりを理由にダンナはサエコの不倫を疑い、口汚くののしります。
そして反論したサエコは
「そんなんだから前の奥さんともダメになっちゃたんじゃない」
と言って、地雷を踏んでしまう。
というか
「ダメになっ」
の段階でダンナ、サエコの顔を強く殴る。
怖っ。
よっぽど彼には離婚=恥だったんだな。
(浮気されたか心変わりされての離婚だろうし)
でも、これはひどすぎるだろう。
殴って、嫌だやめてとサエコが叫んでいるのに、レイ〇する…なんて悲しい。
皆さん、夫婦間でも明確な合意がないセック〇はレイ〇だからね。
しかもこれ、夫婦間の愛じゃなく暴力として意図的に(もうはっきり!)彼がやってるから。
またしても
「サエコの大切なもの」
は踏みにじられてしまいます。
散々やられてきたからね。
サエコの好きなもの、大好きな友達、心、サエコがやってくれる仕事。
可能性、未来、過去…。
つらい。
あざがハッキリついてしまった腕で一人お風呂で体を洗い、転がったままのスーパーの袋を拾って冷蔵庫に食材をおさめるサエコがまた辛く悲しく…。
人生は続く。
生きてるかぎり。
自分へ向けられた優しさの象徴であるチョコを食べて、背中をふるわせる彼女はきっと泣いているんだろう。
(後ろ姿なのがまた…悲しい…)
この事件がなれければ、サエコはぜったい家出をしなかった。
そう確信させる悲しい悲しいエピソードでした。
【同じだけど】
これでこの記事は終わりでいいんだけど、あまりにこれじゃ辛いから前回記事の繰り返しではありますが、この巻に出てくるお菓子で食べたいのは“ソータがサエコに贈ったスペシャルバレンタインボックス”。
「あたしの好きなものばっかり」
これはサエコのセリフ。
うんうん、いつもいつも虐げられてる中で好物プレゼントされたら嬉しいよね…。
窮地の中で差し出される優しさは砂漠の中の水みたいなもんだ。
わかるよ~。
悲しいまま今回は終わる。