世田谷パブリックシアター
作 トム・ストッパード
演出 栗山民也
出演 市村正親 秋山菜津子 武田真治 他
面白かったです。
1968年のプラハの春から1990年までのイギリスとプラハを舞台として、国家体制に翻弄される大学教授マックスと教え子ヤンの物語。
抑圧された状況のプラハと民主主義のイギリスを、自由の象徴としての音楽-ロックが体制の違う二つの国の状況を浮き彫りにする。
日本にいて、いわゆる‘平和ボケ’の頭にはかなりヘヴィな内容でした。
でも、つい、40年前の話なんですよね。
長~い歴史の前には40年なんて、ホンのつかの間
改めて歴史の転換の速さを感じました。
ボブ・ディラン、ローリング・ストーンズ、ピンク・フロイド、ヴェルベット・アンダーグラウンドそしてビーチ・ボーイズの曲たちが場面を仕切る。
ピンク・フロイドにいたシド・ヴァレットがお芝居の中でもフィーチャーされてました。
チェコのグループのことは知らなかった。
内容的にちょっと難しいというか、国家体制とか国家権力に関わる言葉とか、サッポーとか、哲学書を聞いてるみたいな部分もあって、ついて行くのに精一杯だったけど、その小難しさを「ロック」という媒体が仲立ちするというか、仲介役となっていて、最後まで緊張感を持って見入ってしまいました。
ロックが二つの国の体制を映し出す「鏡」になっている、と思いました。
ケンブリッジ大学教授役が市村正親さん。
さすがの貫禄でした。
武田真治さんがその教え子のチェコ人ヤンで、プラハの春があって抑圧されたチェコで‘ロックを救うため’に帰国する。
ヤンはかなり厳しい状況下でも結構楽天的な人物かなあ、と思いました。
秋山菜津子さんは1部はマックスの妻でサッポーの研究者、2部ではなんと、マックスの娘エズミ役。
どっちも良かったです。エズミは可愛かったし、妻エレナは病身の苦しみと女としての部分が凄くよく出ていて引き込まれました。
う~ん、さすが、カメレオン女優!
他に前田亜季さん、山内圭哉さん、月船さららさん、黒谷友香さんなど。
見ていて、この4月に来日したボブ・ディランのことを思いました。
日本公演の後、中国でも公演する予定だったのが、入国を拒否られたんですね。
チベット問題での発言が反体制的と取られたらしいとのことでした。
中国は社会主義の国、言論統制も当たり前なんでしょうか。
大国なのに、いや、大国であるが故に、自由に思ったことを表現してはいけないという現実があるんだということを改めて思いました。
人間の表現したいという本能を封じ込めるなんてできないし、それを国家体制として強要するのは愚かなことだし、とっても悲しい。
この物語は1990年で終わります。この年、ローリング・ストーンズがプラハでコンサートを行いました。
それがどんなに凄いことだったのか、ということがこの舞台でよく判る。
自由の象徴として、自己表現の象徴として、ロックのパワーはあるんだ、ということも。