花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

麻酔科医の折り紙

2015-01-10 | 医学あれこれ


折り紙は無二の親友の福島弘子先生の力作である。福島先生は学識、臨床経験ともに優れた麻酔科指導医であるとともに、複雑でリアルな折り紙が得意である。公立山城病院在任の頃、麻酔担当の子供の患者さん一人ひとりに好きなものを尋ねて折っておられた。家とは違う環境で寂しく心細い思いで一杯の心を、少しでも明るく楽しいものにしてあげようという心遣いである。小さな患者さん達は大切な作品を胸に笑顔で退院してゆかれたのである。

多くの仲間の助けを頂いた中でも、福島先生が麻酔を担当して下さったからこそ、通常、緊急を問わず後顧の憂いなく手術に専念することができたと深く感謝している。彼女は天性の指導者でもあり、手術室で術中に手を動かしながら聴くともなしに耳を傾けていると、自分の頭で考える指導をしておられたのが印象的であった。多くの看護師、救急救命士、研修医の方々は、生きた知識と技術を取り込んで立派に成長してゆかれた。

医院を開業後、過去にお受けになった手術の病歴を患者さんにお尋ねすると、執刀医の名をお答えになっても、麻酔科医を覚えておられる方はほとんど皆無である。麻酔科医は数多くの術者の手術を見届け術者の技量は全てお見通しであるから、メッサーザイテ(Messerseite)にとりひたすら恐ろしい存在である。例え神の手と称賛を浴びておられる様な不世出の名医の諸先生方も、麻酔科医なくしてその腕を存分にお揮いになることは出来ないだろう。もし今後、手術をお受けになられる時は、御担当になった麻酔科医のお名前を何時までもお忘れなく。