田園調布の山荘

「和を以て貴しとなす」・・ 日本人の気質はこの言葉[平和愛好]に象徴されていると思われる。この観点から現代を透視したい。

150907 安保法制(戦争法案)の賛成論の論理

2015年09月07日 14時14分29秒 | 平和

 

投稿の全文を下記に示す。

「戦争を二度と起こしてはならないという思いは、集団的自衛権が必要と考える私も同じだ。ただ日本が個別的自衛権という殻に閉じこもって世界から孤立して。国民と領土を守れるだろうか?東アジア情勢が厳しくなり、日本は安全保障上の危険にさらされている。強固な日米同盟、共通の価値観を有する国との協力で、自由と民主主義と平和を守り抜くことが重要になっている。同盟国の国連加盟国が困っている時に協力せず、自国が窮地に追い込まれた時だけ助けを求めていいとは思わない。国土防衛のために双方向の協力関係は当然であり、集団的自衛権の行使は欠かせない。国連憲章も他国からの武力攻撃を受けた場合は集団的自益権の行使を認めている。日本は自国のことだけを考えていて良いのか?しっかりした安全保障体制を持たない国の民ほど、不幸で悲惨なことはない」

骨格を見る。 ,

国個々では侵略に抗することはできない。(命題1)

日本への侵略想定国は、共通の価値観を持ち合わせていない国々である。(命題2)

日本は眼前にそれらの国による侵略の危機が極めて高まっている。

共通の価値観を持つ国と軍事同盟の強化が必要だ。集団的自衛権は当然だ。

ここに貫かれる理念は、同盟国と一緒に「戦争をする国」にするということである。

一つの前提が置かれている。戦争をするかしないかは、憲法(三権分立、国民主権など)と独立だということである。

このような主張が何の疑問もなく人々の頭の中を通過して「声蘭」に登場する程の時代は急迫している。

戦前、三国軍事同盟(枢軸国)と連合国の二つの軍事同盟があった。そして両同盟は、ほとんど同じ命題1と命題2をそれぞれに共有して大戦を戦った。お互いに相手を侵略国とののしり、同じ理屈を用いて国民の民主主義的諸権利を圧殺した。

投稿者もその論理にがっちり縛られている、「共通の価値観」と「独特の価値観」の対立を描き、「善=法治国家」、と「悪=独裁国家」に二分し、「悪」の国は軍事侵犯を狙っているとする。

非常に幼稚な理屈だが、「共通の価値観」で結ばれている米国と双方向に軍事力を提供し一体化(つまり軍事同盟を強化すれば)日本は侵略されないという言葉が軽く行きかっている現在の日本の政治風土は危険きわまりない。

 軍事同盟の強化が実際に何を意味するのか、国民一人一人に何を義務づけられるか、そして、本当にそれが安泰(幸せ)なのかである。政府の説明でさっぱり分からない。世論調査では安保法制について国民の8割は「政府の説明が不十分」としている。私はそうではなく、8割が政府が本音を言わぬ不誠実を指弾していると思っている。

軍備の目的は(個別的自衛権といえども)敵国を滅ぼすか、武器を捨てさせて降伏させるか、戦争をあきらめさせる(抑止させる)かの三つしかない。政府の説明は当然のように軍事的抑止にあるという。

 抑止力を高める。武力を見せで相手に武力行使をあきらめさせる、抑止力は軍事的威圧力である。抑止力を行使する相手は当然仮想敵国すなわち「独特な価値観」を持つ国々となる。それを個別から集団に拡大するというのだから、「寄らば斬るぞ」という抑止力を誇示し、牽制する場面は多様になるし、場所も多様になる、そして実施場面も出てくるに違いない。

 政府も投稿者も言うのが、現在日本は軍事抑止力が不全で、集団的自衛権を導入して万全にするというのである。投稿者はどのように理解しているかは読み取れないが、現代において戦争に至れば両当事者とも国が壊れ、立ち上がれなくなるほどの深刻な被害を招くことは知り抜いている。核兵器、化学兵器、細菌兵器などの皆殺し兵器、その運搬武器のミサイル、空母、原子力潜水艦が狭い地球空間を高速に行き交う、しかもテロやゲリラが跳梁する。そこに国民を動員することになる戦争は、「共通の価値観」「独特の価値観」などを飛び越えて廃墟と難民を生むだけの凄惨な結果をもたらすに決まっている。もちろん戦争を行おうといういかなる企画もすべての国の国民がその政府をサポートするはずはない。戦争は非現実的な手段なのである。

 もちろん憲法は軍事力による威圧を禁じている。この憲法を踏まえれば、以上の主張は論理を外れている。国是に反するのである。敵国を作らないことをめざすのが地球のすべての国家のめざす道である。現実は、内乱、騒擾、民族・宗教対立、植民地主義の後遺症などによる抗争だらけの世界が広がる。しかし、軍事同盟の強化でこれらを沈めることはできない。日本国憲法は世界に先んじてそれを高く掲げている。

 


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