需要にマッチしない商品を作り、その反動が需要を壊し、さらに生産を壊すという未曾有のことが起こっています。1970年頃、世界はすでに過剰生産の時期に入っていたと私は思います。それ以降作られてきた需要は無理矢理のもので、本来たくさんある真の需要を創造することができず、人間のニーズとは全く無縁の「欲望」だけをターゲットにしたものでした。
欲望を刺激する度合いが価値の度合いとしてお金に反映し、人々はお金だけを価値の基準にしました。そしてそのお金(金融市場)がすべてを解決するという非科学的な経済学である金融工学が登場しました。お金がモノ作りの市場から離れ自己偽装を始め、一人歩きを始めました。それが生きた経済を壊していきました。そして気づきにくいことですがモノ作りの技量も劣化させていきました。今次の不況の原因です。
抱擁し合う欲望の経済学と市場原理主義
今どこの国の経済も作られた需要と本当の需要が絡み合い、欲望の幻想と消費が混ざり合いあっています。この間、通貨の本質的な属性である相互懐疑が続き、危うい為替環境の中で、巨大な規模でこれでもこれでもかと「欲望」の商品が世界に送り出されました。
ブッシュの8年間は市場主義と金融への規制緩和で特徴づけられます。欲望の経済学と市場原理主義が見事に抱擁し合ったのが日本の小泉・竹中・ホリエモンたちの六本木ヒルス勢力でした。欲望の経済学にもとづくサブプライムローンのような「トンデモ商品」が氾濫し、経済をバクチ化し、一見巨大化しましたが、これは本当は痛めつけるもので、深刻な病気を運び込みました。
この結果、温暖化ガスを吐きちらし、空気や水が汚れ、緑が減り、水も不足となりました。ものつくりの技量も低下し人材も減りました。またモラルも低下しました。人々の人権とニーズは制限されました。
CHANGEとは?
本当の需要は生活に根ざすため実態を持ち、法則的に動きます。しかし作られた需要は次々と目先を変え一方では浪費を強い、また一方ではゴミをこしらえるというゆがんだ経済を強います。ゴミの量と経済成長の率が響き合う経済がこの数十年の作られた需要が導いた経済でした。この間経済の外では、国家による巨大な仮需要が軍事費として作り出されました。産業と軍隊が一体となった経済構造が、特にアメリカでは特徴的となり本当の需要はかえって衰えました。アメリカにおける自動車産業、鉄鋼産業、電気産業、機械産業、繊維産業、そして食品産業、さらにもしかして農業は大変な事態になっていると思われます。しかしよく見るとこれは日本でも同じです。モノ作りといった人間の基本活動が人間の需要から離れ、ゆがめられた姿が今の姿ではないのかと懸念されます。
オバマ環境ニューディール構想の政治哲学
かくなればこれからは、人々の人権とニーズを取り戻し、拡大する方向こそ経済のひずみや閉塞感を打開する方向であると考えられます。
混迷の時代を打開するには、世界がどう変わったのかということを冷静に見てそれを受け止める必要があります。オバマ大統領が「チェンジ」を叫んで当選したのは、根ごそぎ変えるという決意にも見えます。それができるかということはともかくとして、環境ニューディール構想は、その心意気を物語っています。オバマを当選させた力の奥底に消費経済大国のアメリカの持つ深刻な矛盾と亀裂や暗黒を何とか打開しようとする人々の思いを見ることができます。
今国際的なネットワークはどんどん人種や国境の壁を低くし、人や物資の交流、移動が大量かつ同時的になっています。そして地球市民というイデオロギーも共有化され、帝国主義や一国主義、偏狭な民族主義を許さない環境条件が整いつつあります。日本も今後は南米やアフリカ、そして1つの国になりつつあるアセアン(東南アジアカ10国の統合)、インドなどにより深く、より早くコミットして行くことで、アメリカ一辺倒のこれまでの価値観、あるいは脱亞入欧という古典的な西洋崇拝の呪縛から解放されてくるでしょう。世界の国々が求めているニーズは、これまで押しつけられてきた「欲望」型の商品ではなく、環境、人権、平和などに象徴される国際的な価値観を内部に持つ技術、貿易システム、金融システム等となるでしょう。
自ら耕作する者が農地を保有する原則、農の価値は経済の外にある
私の特異な主張としていつも皆さんをうんざりさせている農の価値について、ここへ来て再び上のようにいっておかねばならないと思います。農地の所有権や耕作権を証券化して世界に流通させるというようなこと実施すると、予期に反して経済は発展せず、生産力はかえって衰えるという考え方です。反対する人も多いことは知っていますが、農地というのは「環境」の一部で、その維持管理は地域社会が担うものです。これは地域の人々の結合エネルギーが力となって担うものでお金の力だけでは担えません。農業は世界最大の産業で営利を目指さなければならない反面、生活密着産業なので、その現場は社会空間と一致しています。世界の農業を環境とマッチさせて行くには、この関係を強化するしか方法はありません。(了)
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