【産経抄】4月1日
むかし、むかしのお話。あるところにお金持ちの殿様がおったそうな。のんびりと暮らしていたところ、南蛮から強欲な貧乏神がやってきた。殿様、重い腰をあげて有り金かき集め、そこら中にばらまいたが、一向に帰ってくれない。
▼人気がガタ落ちになったうえに、漢字が苦手なのもばれてしもうた。寺子屋に通う子供たちにも「みぞゆうのバカ殿だ」とはやし立てられた。どす黒いまでの孤独感にさいなまれ、ついつい夜更けまで南蛮旅籠(はたご)屋で飲み続けたそうな。
▼「じゃあオレが殿様を追い出して世の中を変えてやろう」と名乗りをあげたのが、かつて藩の家老を務めながらもゆえあって脱藩した浪人者じゃった。腕っ節が強く、大勢の子分を従え、長屋を何軒も持つほど羽振りがいい。
▼殿様より度胸があり、世間の空気も「いっぺん浪人者にやらしてみたらいい」となった。されど、好事魔多し。一の子分が悪徳商人とつるんでいた疑いをかけられ、岡(おか)っ引きにしょっぴかれた。残された子分たちは「殿様の差し金に違いない」と騒ぎ立てた。
▼子分たちが騒げば騒ぐほど、浪人者の評判は、日に日に落ちていった。役職についてないのに、なぜ長屋を何軒も買えたのか怪しい、という瓦版も江戸中に出回った。といって殿様の人気も大して上がらない。そこで、やっと2人は気がついた。「オレたちゃ何をやっても世間から嫌われる。本当は似た者同士だぜ」。
▼それから2人は心を入れ替えた。世間の評判を気にせず、協力して人々のため一生懸命働いたとか。そうこうしているうちに、いつしか貧乏神もいなくなった。安心した2人は、立派な若者に後を任せて楽隠居したそうな。めでたし、めでたし…。本日は四月馬鹿(エープリルフール)です。念のため。 (MSN産経)
びっくりしました。こんな品位のかけらもない、さもしい創作文が、「産経抄」とは。最近の新聞の「コラム」の劣化はものすごいものがあります。 「本日は四月馬鹿(エープリルフール)です。念のため。」 この一言で、創作文の下劣さもすべて帳消しになると思っているらしい。それもすごい。