机の上には、山のようなテキストと缶ジュース、そしてキャンディー。

図書館にて、今雪は猛烈勉強中である。

彼女の前に座る聡美と太一は、一向に顔を上げない雪のことをじっと見つめていた。
彼女がペンを動かす音が、延々と図書館に響き続けるのを聞きながら。

「静かに燃えてるわね‥」「冷たいフィーバーが感じられマス」
「分かんないとこ聞きたいんだけどな‥こりゃ無理だわ‥」

そんな二人の言葉も耳に届かないくらい、雪は集中していた。
その切れ長の目で、一文字も漏らすこと無く目の前のテキストを追って行く。

体調が良くなった途端、待ってましたといわんばかりにすぐに期末試験がやって来て、
信じられないくらいの早さで一週間が過ぎて行った。

ついこの間ストレスで倒れたというのに、もう雪は普段通りの生活をしていた。
なにしろ期末試験は待ってはくれない。ここが踏ん張りどころなのだ。

うぅ~ん

長時間集中したので、身体が凝り固まっていた。
一度ぐっと伸びをする。
すると‥

視線の端に、彼の姿が映った。
疎ましいあの後ろ姿‥。

青田淳。
彼の姿を見掛けるだけで、雪の胸中はモヤモヤと煙る。

ありとあらゆる感情が蓄積して、その容量は限界を越えようとしていた。
その渦中でも、

ふと以前のことを思い出して、

打ち明けたくなることも‥

雪は二人に向かって、その重たい口を開く。
抱えに抱えた、その曰くを伝えるために。
「あ‥あのさ‥」

「多分‥信じてもらえないだろうけど、私、散々な目に合ってきたの」
「二人にとっては非の打ち所のない先輩だろうけど、
私にとっては‥どこか不気味で胡散臭く思えちゃって」
「私‥神経質だから単に考えすぎてるだけかな?
もしそうだとしても、アンタ達が私の話を聞いて一緒に怒ってくれたらいいな‥」

「ん?」

聡美と太一が、目を丸くして雪の方を見ている。
雪は「あのさ」と言ったきり、実際はその続きを口にはしなかったのだ。

雪は首を横に振った。曖昧な笑みを浮かべながら。
「ううん、勉強勉強」

何よぉ、と聡美は不服そうだったが、
雪はやはり続きを口に出しはしなかった。
未だ胸中は不穏に煙っているけれど。

勉強しよ

煙った胸中をそのままにして、雪は無理やり頭を切り替えた。期末試験はもう目の前だ。
雪はイヤホンを嵌めて音楽を流しながら、今一度机に齧りつく。

イヤホン越しでも微かに周りの声が聞こえるが、特に気に留めはしなかった。
雪はただじっとテキストだけを追いながら、目の前に積まれたやるべきことに没頭する。


しかしとある内容に差し掛かった時、ペンが止まった。
雪は頭を掻きながら、前に居る聡美に話し掛ける。
「あー分っかんないや。ここってさぁ、ライリーの‥」

すると。
「まずライリーの法則に従って、Cから他の都市への人口誘引比率を見てみると‥」

雪は思わず「ヒィッ!」と息を飲んだ。
そして飛び上がったその拍子に、机で膝を強打する。
ガツン!

「~~~ッ!!」「??」「どしたの?寝ぼけた?」


雪は目を見開きながら顔を上げた。
目の前にはキョトンとした表情の聡美、太一、そして、青田淳。

挙動不審の雪を見て、聡美と太一はニヤニヤと彼女をからかった。
「見てないフリ見てないフリ」「恥ずか死寸前デスね」「ち、違っ‥!」

雪は顔を赤くも青くもしながら、その突然の出来事にただ面食らっていた。
しかし青田淳は何も気に留めない体で、聡美達に淡々と説明を続ける。
「それでここが100分の‥」「おおー!」「あーそっかそっか~!」

二人は心から納得したような顔で、青田淳の説明に聞き入っていた。
すると聡美が雪の方を向き、更にこう続ける。
「ねぇ雪、あたし次の所も聞きたいからちょっと待っててくんない?」

「う‥うん‥」

雪は戸惑いながらも、渋々頷いた。
青田淳は雪の方を見ないまま、説明を続けている。
「ここはコンバース数式を使えって問題にあるから‥」

そこに居るのは”青田先輩”だった。
優等生で人気者、常に人に囲まれている模範生‥。

けれど雪は知っているのだ。
この先輩には、もう一つ裏の顔があることを‥。

雪は顔を引き攣らせながら、現状に戸惑い目を逸らした。
胸中は、やはり不穏に煙り続けている‥。
モヤモヤ‥モヤモヤ‥

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<雪と淳>曰く でした。
三週間ぶりの連載再開~
嬉しいですね~
スンキさんの体調も回復されたみたいで何よりです。
前回の続きからまた現在に戻るのかとも思われましたが、丁寧に時系列繋いで行きますねぇ。
この徐々に繋がって行く感じが面白いです^^
ブログは再び一日おきの更新を目指しますが、如何せん書き溜めが出来ないので少し間が開くこともあるかと思います。
ですので、生温く見守って頂けると幸いです‥
次回は<雪と淳>空虚 です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
極力使われないようお願いします!
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図書館にて、今雪は猛烈勉強中である。

彼女の前に座る聡美と太一は、一向に顔を上げない雪のことをじっと見つめていた。
彼女がペンを動かす音が、延々と図書館に響き続けるのを聞きながら。

「静かに燃えてるわね‥」「冷たいフィーバーが感じられマス」
「分かんないとこ聞きたいんだけどな‥こりゃ無理だわ‥」

そんな二人の言葉も耳に届かないくらい、雪は集中していた。
その切れ長の目で、一文字も漏らすこと無く目の前のテキストを追って行く。

体調が良くなった途端、待ってましたといわんばかりにすぐに期末試験がやって来て、
信じられないくらいの早さで一週間が過ぎて行った。

ついこの間ストレスで倒れたというのに、もう雪は普段通りの生活をしていた。
なにしろ期末試験は待ってはくれない。ここが踏ん張りどころなのだ。

うぅ~ん

長時間集中したので、身体が凝り固まっていた。
一度ぐっと伸びをする。
すると‥

視線の端に、彼の姿が映った。
疎ましいあの後ろ姿‥。

青田淳。
彼の姿を見掛けるだけで、雪の胸中はモヤモヤと煙る。

ありとあらゆる感情が蓄積して、その容量は限界を越えようとしていた。
その渦中でも、

ふと以前のことを思い出して、

打ち明けたくなることも‥

雪は二人に向かって、その重たい口を開く。
抱えに抱えた、その曰くを伝えるために。
「あ‥あのさ‥」

「多分‥信じてもらえないだろうけど、私、散々な目に合ってきたの」
「二人にとっては非の打ち所のない先輩だろうけど、
私にとっては‥どこか不気味で胡散臭く思えちゃって」
「私‥神経質だから単に考えすぎてるだけかな?
もしそうだとしても、アンタ達が私の話を聞いて一緒に怒ってくれたらいいな‥」

「ん?」

聡美と太一が、目を丸くして雪の方を見ている。
雪は「あのさ」と言ったきり、実際はその続きを口にはしなかったのだ。

雪は首を横に振った。曖昧な笑みを浮かべながら。
「ううん、勉強勉強」

何よぉ、と聡美は不服そうだったが、
雪はやはり続きを口に出しはしなかった。
未だ胸中は不穏に煙っているけれど。

勉強しよ

煙った胸中をそのままにして、雪は無理やり頭を切り替えた。期末試験はもう目の前だ。
雪はイヤホンを嵌めて音楽を流しながら、今一度机に齧りつく。

イヤホン越しでも微かに周りの声が聞こえるが、特に気に留めはしなかった。
雪はただじっとテキストだけを追いながら、目の前に積まれたやるべきことに没頭する。


しかしとある内容に差し掛かった時、ペンが止まった。
雪は頭を掻きながら、前に居る聡美に話し掛ける。
「あー分っかんないや。ここってさぁ、ライリーの‥」

すると。
「まずライリーの法則に従って、Cから他の都市への人口誘引比率を見てみると‥」

雪は思わず「ヒィッ!」と息を飲んだ。
そして飛び上がったその拍子に、机で膝を強打する。
ガツン!

「~~~ッ!!」「??」「どしたの?寝ぼけた?」


雪は目を見開きながら顔を上げた。
目の前にはキョトンとした表情の聡美、太一、そして、青田淳。

挙動不審の雪を見て、聡美と太一はニヤニヤと彼女をからかった。
「見てないフリ見てないフリ」「恥ずか死寸前デスね」「ち、違っ‥!」

雪は顔を赤くも青くもしながら、その突然の出来事にただ面食らっていた。
しかし青田淳は何も気に留めない体で、聡美達に淡々と説明を続ける。
「それでここが100分の‥」「おおー!」「あーそっかそっか~!」

二人は心から納得したような顔で、青田淳の説明に聞き入っていた。
すると聡美が雪の方を向き、更にこう続ける。
「ねぇ雪、あたし次の所も聞きたいからちょっと待っててくんない?」

「う‥うん‥」

雪は戸惑いながらも、渋々頷いた。
青田淳は雪の方を見ないまま、説明を続けている。
「ここはコンバース数式を使えって問題にあるから‥」

そこに居るのは”青田先輩”だった。
優等生で人気者、常に人に囲まれている模範生‥。

けれど雪は知っているのだ。
この先輩には、もう一つ裏の顔があることを‥。

雪は顔を引き攣らせながら、現状に戸惑い目を逸らした。
胸中は、やはり不穏に煙り続けている‥。
モヤモヤ‥モヤモヤ‥

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<雪と淳>曰く でした。
三週間ぶりの連載再開~



スンキさんの体調も回復されたみたいで何よりです。
前回の続きからまた現在に戻るのかとも思われましたが、丁寧に時系列繋いで行きますねぇ。
この徐々に繋がって行く感じが面白いです^^
ブログは再び一日おきの更新を目指しますが、如何せん書き溜めが出来ないので少し間が開くこともあるかと思います。
ですので、生温く見守って頂けると幸いです‥

次回は<雪と淳>空虚 です。
☆ご注意☆
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