Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
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<淳と亮>過去回想(8)ー利用価値ー

2016-07-23 01:00:00 | <淳と亮>過去回想(1)〜(10)
冷たい態度を貫く淳に対して、静香は追い縋るようにして彼を引き止める。

「亮が淳ちゃんのことを会長にチクったことも!」



「あたしが代わりに謝るから!」



必死とも言える態度で言葉を続ける静香。その顔には悲壮感すら漂っている。

そして静香はその口調に、次第に女性特有の媚の香りを滲ませ始めた。

「でも亮がやらかしちゃったからって、

あたしにまでこんなことする必要なくない?でしょ?」




「それじゃあたしは逆に、会長のことで分かることあったら教えるから!

淳ちゃんの為に何でもするし!ねっ?!」


「何言ってるの」



淳は一言そう口にして、静香の肩に手を置いた。

静香はそのスキンシップを受け入れながら、「あたしはただ‥」と口ごもる。



「あたしは淳ちゃんの味方だってこと分かってほしくて‥」

「俺の味方して何になる?父さんの方に付いた方が得だろ、お前達は」

「そりゃ‥。ただもっと、」



そうして静香は淳に向かって、甘えるような視線を投げかけた。

「狡賢く生きてみようかな、って」



「将来的には淳ちゃんが会長の座を継ぐわけだし、

淳ちゃんについた方が後々得じゃん?そうしなきゃあたしも生きていけないわけだし」




静香は堂々と己の下心を口に出した。

未来の会長に対して、ヘラヘラとした笑顔を浮かべながら。







全ては利用価値があるかないか。

気持ちの良いものではなかったが、淳はそんな静香の考えが嫌いではなかった。

馬鹿げた発想や行動だろ。だけど悪い気はしなかった。



父さんと手を組むまでは、静香とは上手く行ってたんだ。



問題だったのは、要領の良い姉に比べて不器用で世渡り下手な、真っ直ぐな弟‥。

お前に静香くらいの柔軟さがあったら、あんなことにはならなかったんだろう





傷だらけの亮の顔面を見て、学生達は皆振り返った。

「おい‥」「うわ、すげぇな」「見たか?あの目付き」



亮に恨みのあるピアノ科の後輩・岡村泰士の弟は、

友人に愚痴をぶち撒ける。

「河村亮の奴、なんで未だにエラソーなわけ?

先公達もアイツの味方しやがって。

もう先輩なんて呼んでやんねー。あんなクソ野郎!」




”河村亮は青田家から援助を受けている”

その噂が広まってからというものの、

元々亮のことを良く思っていなかった人間は、

ますます亮に恨みを抱くようになって行った。

そしてその波紋は、勿論淳の所にまで及ぶわけで‥。

「なぁ、級長」



副級長の城崎は、不満そうな顔で亮についての話を口にする。

「河村の奴、昨日もまた大勢相手に喧嘩したみたいだぞ」



「全員掛かって来いって息巻いて大騒ぎだよ。

大事になったらどうすんだ?」




すると城崎の後ろに、彼の姿が見えた。

亮が何度も口にしていた、”ショパン君”だ。



淳は表情を変えることないまま、こう一言返答した。

「まぁ、一度痛い目見ないとおさまらないだろうね」



城崎が唸りながら去って行った後、ショパンはおずおずと淳に近付く。

「あの‥青田君‥」



淳はニコリと笑ってそれに応えた。



ショパンはオドオドしながらも、用意して来たその言葉を口に出す。

「クラシック音楽を聴くのが好きって‥聞いて‥」「うん」

「僕‥今コンクールの準備してて‥良かったら一度‥聴きに‥その‥」



「その‥普段僕のピアノ聴いてない人に聴いてもらって

意見をもらいたいっていうか‥その‥」




「ど‥どうかな?」



目を合わせられず下を向きながらそう聞くショパン。

淳は微笑みを浮かべながら、快くそれを了承する。

「うん、分かった。楽しみにしてるよ」



淳の返事を聞いたショパンは、胸を踊らせて自身の練習時間を伝えた。

この時間になったら練習室でピアノを弾くから、どうか聴きに来てくれと。




けれど。




約束の時間。

ショパンはピアノの練習室の前で、滑らかに響く音の洪水に飲み込まれてしまっていた。



膝を抱え込みうずくまる彼を見て、淳は何があったのかを推し量る。

視線はゆっくりと練習室の方へと流れた。







聴くもの全てを惹きつけるその音は、聞き覚えのあるそれだった。

時に嫉妬すら駆り立てる程の、その音。

その旋律‥。







淳は練習室の扉へと、ゆっくりと近付いて行った。

そして音を立てぬよう、ガラス窓から中を覗き込む。



そこに、顔面傷だらけでピアノを弾く亮の姿があった。

彼は声も掛けられない程鬼気迫る表情で、音の洪水を起こし続けている。







亮は叩きつけるようなタッチで鍵盤を弾いていた。

まるで胸の中に溜まった鬱憤を、全て音符に乗せて晴らすかのような。



淳は暫く亮の姿を見ていたが、

練習室の前でうずくまるショパンは、じっとその場から動かない。



彼は頭を抱えながら、ブツブツと何かを呟いていた。

「どうして‥アイツなんだ‥」



鼓膜をつんざくようなその音が、ひたすらに耳障りだった。

どうしていつも自分の前には、河村亮が立ちはだかるのかーー‥。







ふと目線を上げたショパンの目に飛び込んで来たのは、淳の足元だった。

彼はハッと我に返り、目の前に居る彼に向かって声を上げる。

「あ、青田君!」

「どうしたの?

もう君の順番なら、そう言って代わってもらえばいいじゃないか」




「‥‥‥‥」



冷静にそう諭す淳を前にして、ショパンはあからさまに動揺していた。

一番見られたくない姿を、一番見られたくない相手に見られてしまったのだから。

「きゅ、級長!見なかったことにしてくれないかな?僕はただ‥」

「落ち着いて」



しかし淳はそんなショパンの胸の内もお見通しと言った具合で、にこやかにこう言葉を続ける。

「大丈夫。恥ずかしく思うことじゃない」







ひたすらに耳障りだったその音が、淳のお陰で幾分柔らかくなった気がショパンにはしていた。

言葉を忘れたかのように立ち竦む彼の肩を、淳は優しくポンポンと叩く。



「ピアノ、また今度聴かせてな。悩みがあるなら聞くし」



「俺で良ければ」と言い残し、淳はその場からゆっくりと去って行った。

ショパンは何も言えないまま、淳の発した甘やかな言葉を胸に、溢れる涙を拭ったー‥。










「お前、普段から彼のことをかなり気に入っていたようだけど、

彼が内心どんなことを思っていたのか、あの事件が起こるまで全く知らなかっただろ」




話を聞き続ける亮に向かって、淳はあの時のショパンのことをこう語った。

亮は何も言い返すことのないまま、未だにぼんやりとしか思い出せない、

あの頃の彼のことを再び回想する‥。





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<淳と亮>過去回想(8)ー利用価値ー でした。

皆さん、前回の記事の私信に温かいコメントを沢山ありがとうございました

嬉しかったです

なんとかまだ更新出来そうです。今週分で淳+亮の過去は終わりみたいなので、

どうにか全部記事にしたい‥!頑張ります



静香の意味深発言を受けても、淳はあまり動揺しませんね〜。

下心全開なのが却って小気味良いんでしょうかね。なんだかスレた高校生だな‥

そしてショパンが聞いてるとこで「一度痛い目見ないと」と口にする淳‥。怖いー!!

最後の優しげな言葉も、完全に味方に付ける為の布石なんでしょうね。怖いー!!


次回は<淳と亮>過去回想(9)ー疑心と裏切りー です。


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