何とか研究授業を終えることができました。お忙しい中時間を割いて授業を見ていただいた所属校の校長先生、それから、指導主事、研究指導主事先生をはじめ、わざわざ駆けつけていただいた先生方、臨採でご勤務の先生方、そして裏方を引き受けてくれた同僚の先生方に心から感謝を申し上げます。もちろん、熱心に授業に取り組んでくれた3年2組の皆さんには一番助けられました。皆様のおかげで本当に気持ちよく授業をすることができました。
授業自体は細部の詰めが甘く65点のできといったところですが、日頃やり慣れていないことを人前で披露するという自らにかけたプレッシャーを楽しむことができました。お若い先生方向けには音読のバリエーションや書写などの活動をお見せした方がよかったかもしれませんが、今回は自分の研修を優先させていただきました。
とりあえずは自分の中で今年度の大きな区切りができました。ありがとうございました。
当日お配りした資料より
本日はお越しいただきありがとうございました。この度、研究授業を実施するにあたり、授業者本人が新しいスタイルを模索する機会を戴いたと捉え、日頃の授業ルーティーンから離れた実験的な授業を行ってみることといたしました。つきましては、いろいろと不完全な部分やお見苦しい場面もあるかと思いますがご容赦くださいませ。
また、以下に今回の授業に際して授業者が設定した課題をあげてさせていただきました。ご意見やアドバイスをいただけますと幸いです。
1 新学習指導要領を見据えた授業展開への挑戦
今回の新指導要領の大きな目玉の一つは「英語の授業は原則的に英語で運営する」ことです。これに関しては現時点で賛否両論あるようですが、少なくとも現場では英語でも授業運営ができるだけの幅を広げておく必要はあります。そのためには、単に指導者個人の高い英語力だけではなく、「英語を使っていかに効果的に英語を身につけさせるか」といった視点が不可欠になります。
授業者の見解では、英語で運営される授業は「オーラルコミュニケーション」、「英語Ⅰ、Ⅱ」において多く見られるようです。今回はライティングの授業の中で、いかに英語を用いて効果的な指導ができるかを模索してまいります。
また、新学習指導要領に関して、また別の重要な点として4技能の統合があげられます。ご存知の通りライティングやリーディングという科目のかわりに、英語表現やコミュニケーション英語といった新しい科目が導入されることになりました。これらの科目では読む活動や書く活動を切り離すのではなく、例えば読んだ内容について発表したり、聞いた内容について書いたりする活動が重視されます。
一般に、4技能を統合した活動では、例えば読んだものに対して自分の意見を書くといった自由度の高い拡散型かディクトグロスのような自由度のかなり低い収斂型の両極端になりがちなようです。今回は論理的な推測能力を活用した読解ストラテジーを利用して、それらの中間にあたるようなsemi-controlledタスクを用いて、指導焦点の絞り込みと自由作文の双方の利点の追求を図ります。
2 ドリル定着型指導の次に来るものの模索
過去数年間の英語教育における大きな流行は、リード&ルックアップやシャドーイングに代表される負荷のかかった音読による定着活動でした。もちろん、これ自体はけっして否定されるべきものではありませんが、このトレンドの反動としてじっくり考えたり深く読んだりする指導が見直されつつあるのが現状のようです。
しかし、従来どおりの文法翻訳に軸足をおいた指導へ回帰するだけでは新しい時代の要請には応えられそうにありません。英語を理解するという行為において、文法と語彙の知識を用いた暗号解読により置き換えられる日本語の精度を高めるといった活動だけでは限界があるからです。
そこで、新しいスキーマ理論などを拠り所に、読解における認知過程で用いられる類推・先の予測といったストラテジーを明示的にターゲットとし読解力の育成を図ります。
3 グループ学習の可能性の探究
グループワークやペアワークの概念自体はよく知られるところですが、実際に授業で用いるには色々と細かな配慮が必要です。特にグループワークは、英語教育では音読活動などで比較的用いやすいペアワークに比べて活用されるケースが少なく、どのような活動がグループワーク向きか、グループの人数は何人が良いのかなどのノウハウもさほど共有されていないように思います。
授業者は効果的なグループワーク運営方法の模索を通じて、佐藤学先生の「学びの共同体」の実践に触れ、そこから多くのヒントを得ることができました。(佐藤先生のチームは近隣の中学へも指導に入っておられます)
しかし、佐藤先生ご自身も認めておられるように、「学びの共同体」のスタイルでいかに英語の授業を運営すべきかは議論の分かれるところであり、グループで文章を訳して終わりになってしまうことも多いようです。
そこで今回は作文を通して、ひらめきや豊かな発想をグループのメンバーと共有したうえで、協力して作文の精度を高めることで学習意欲を高め学ぶことの愉しさを感じさせることを試みております。
4 受験とコミュニケーション能力の両立をめざして
一般的に受験とコミュニケーション能力は相反する目標と見なされることも多いですが、双方の両立を目指して全国の多くの先生方が奮闘されています。各種の学習活動をバランスよく配置し、受験に特化した指導と運用力の養成に特化した指導を明確に分けることも必要な視点かもしれません。しかし、受験指導を通してコミュニケーション能力を育成したり、コミュニケーション活動を通して受験に役立つ力を育てる方法を探究するほうが、生徒の動機づけに結びつきやすいような気がします。
例えば、ある程度のコントロールを掛けておけば、自由作文は文法の定着に大変効果的な活動になる可能性があります。また、同じ内容を複数の人物に伝えることにより定着やアキュラシーを高める効果が期待できます。さらには、家庭学習で周到に準備したものを発表するのが授業であるという認識が生徒と共有できれば、コミュニケーション活動を導入することが直接学習量の増加につながります。
本日の授業は受験を全面に意識した日頃の流れとは異なった手順で実施しますが、生徒の中に「こんな事をやって何になるのだ」という思いを起こさせることなく、英語を用いて活動することが受験にも役立ちそうだという感覚を持たせることを大きな目標としています。
授業自体は細部の詰めが甘く65点のできといったところですが、日頃やり慣れていないことを人前で披露するという自らにかけたプレッシャーを楽しむことができました。お若い先生方向けには音読のバリエーションや書写などの活動をお見せした方がよかったかもしれませんが、今回は自分の研修を優先させていただきました。
とりあえずは自分の中で今年度の大きな区切りができました。ありがとうございました。
当日お配りした資料より
本日はお越しいただきありがとうございました。この度、研究授業を実施するにあたり、授業者本人が新しいスタイルを模索する機会を戴いたと捉え、日頃の授業ルーティーンから離れた実験的な授業を行ってみることといたしました。つきましては、いろいろと不完全な部分やお見苦しい場面もあるかと思いますがご容赦くださいませ。
また、以下に今回の授業に際して授業者が設定した課題をあげてさせていただきました。ご意見やアドバイスをいただけますと幸いです。
1 新学習指導要領を見据えた授業展開への挑戦
今回の新指導要領の大きな目玉の一つは「英語の授業は原則的に英語で運営する」ことです。これに関しては現時点で賛否両論あるようですが、少なくとも現場では英語でも授業運営ができるだけの幅を広げておく必要はあります。そのためには、単に指導者個人の高い英語力だけではなく、「英語を使っていかに効果的に英語を身につけさせるか」といった視点が不可欠になります。
授業者の見解では、英語で運営される授業は「オーラルコミュニケーション」、「英語Ⅰ、Ⅱ」において多く見られるようです。今回はライティングの授業の中で、いかに英語を用いて効果的な指導ができるかを模索してまいります。
また、新学習指導要領に関して、また別の重要な点として4技能の統合があげられます。ご存知の通りライティングやリーディングという科目のかわりに、英語表現やコミュニケーション英語といった新しい科目が導入されることになりました。これらの科目では読む活動や書く活動を切り離すのではなく、例えば読んだ内容について発表したり、聞いた内容について書いたりする活動が重視されます。
一般に、4技能を統合した活動では、例えば読んだものに対して自分の意見を書くといった自由度の高い拡散型かディクトグロスのような自由度のかなり低い収斂型の両極端になりがちなようです。今回は論理的な推測能力を活用した読解ストラテジーを利用して、それらの中間にあたるようなsemi-controlledタスクを用いて、指導焦点の絞り込みと自由作文の双方の利点の追求を図ります。
2 ドリル定着型指導の次に来るものの模索
過去数年間の英語教育における大きな流行は、リード&ルックアップやシャドーイングに代表される負荷のかかった音読による定着活動でした。もちろん、これ自体はけっして否定されるべきものではありませんが、このトレンドの反動としてじっくり考えたり深く読んだりする指導が見直されつつあるのが現状のようです。
しかし、従来どおりの文法翻訳に軸足をおいた指導へ回帰するだけでは新しい時代の要請には応えられそうにありません。英語を理解するという行為において、文法と語彙の知識を用いた暗号解読により置き換えられる日本語の精度を高めるといった活動だけでは限界があるからです。
そこで、新しいスキーマ理論などを拠り所に、読解における認知過程で用いられる類推・先の予測といったストラテジーを明示的にターゲットとし読解力の育成を図ります。
3 グループ学習の可能性の探究
グループワークやペアワークの概念自体はよく知られるところですが、実際に授業で用いるには色々と細かな配慮が必要です。特にグループワークは、英語教育では音読活動などで比較的用いやすいペアワークに比べて活用されるケースが少なく、どのような活動がグループワーク向きか、グループの人数は何人が良いのかなどのノウハウもさほど共有されていないように思います。
授業者は効果的なグループワーク運営方法の模索を通じて、佐藤学先生の「学びの共同体」の実践に触れ、そこから多くのヒントを得ることができました。(佐藤先生のチームは近隣の中学へも指導に入っておられます)
しかし、佐藤先生ご自身も認めておられるように、「学びの共同体」のスタイルでいかに英語の授業を運営すべきかは議論の分かれるところであり、グループで文章を訳して終わりになってしまうことも多いようです。
そこで今回は作文を通して、ひらめきや豊かな発想をグループのメンバーと共有したうえで、協力して作文の精度を高めることで学習意欲を高め学ぶことの愉しさを感じさせることを試みております。
4 受験とコミュニケーション能力の両立をめざして
一般的に受験とコミュニケーション能力は相反する目標と見なされることも多いですが、双方の両立を目指して全国の多くの先生方が奮闘されています。各種の学習活動をバランスよく配置し、受験に特化した指導と運用力の養成に特化した指導を明確に分けることも必要な視点かもしれません。しかし、受験指導を通してコミュニケーション能力を育成したり、コミュニケーション活動を通して受験に役立つ力を育てる方法を探究するほうが、生徒の動機づけに結びつきやすいような気がします。
例えば、ある程度のコントロールを掛けておけば、自由作文は文法の定着に大変効果的な活動になる可能性があります。また、同じ内容を複数の人物に伝えることにより定着やアキュラシーを高める効果が期待できます。さらには、家庭学習で周到に準備したものを発表するのが授業であるという認識が生徒と共有できれば、コミュニケーション活動を導入することが直接学習量の増加につながります。
本日の授業は受験を全面に意識した日頃の流れとは異なった手順で実施しますが、生徒の中に「こんな事をやって何になるのだ」という思いを起こさせることなく、英語を用いて活動することが受験にも役立ちそうだという感覚を持たせることを大きな目標としています。