東京新聞より転載 2013年8月30日 07時13分
無資格者半数も認可 小規模保育 国基準案が決定
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国が新設する「小規模保育」の基準案が二十九日、政府の子ども・子育て会議の部会でまとまった。焦点の一つだった保育士の国家資格者の割合は半分以上にとどめ、残りは一定の研修を受けた人とする当初の事務局案通りに決まった。全員が資格者である現行の認可保育所(定員二十人以上)に比べて大幅な引き下げとなり、保育の質の低下が心配される。
小規模保育は、定員六~十九人で、ゼロ~二歳児を預かる。新規参入のほか、東京都や横浜市など自治体独自の保育のうち小規模なものや、自治体補助を受けていない施設の移行が見込まれる。
事務局案は保育職員のうち資格者の割合の基準を「二分の一以上」とし、資格者の割合を高めれば補助額も増やす。ただ、六割以上とする都認証保育所や、三分の二以上とする横浜市保育室よりは低い。
この日の会議では、「多様な施設が移行できる」とする意見や、補助金により資格者の割合を高めようとする仕組みへの評価など、賛成の声が相次いだ。これに対し、「高い質を目指すのに二分の一を恒久的な基準とすべきではない。当面の時限措置にしてはどうか」との提案もあったが、盛り込まれなかった。
また、小規模保育施設の面積の目安は、認可保育所とほぼ同じ広さとされた。職員配置数は、認可保育所基準で算出される人数に一人加える。
小規模保育は二年後に本格実施されるが先行整備する自治体に対しては、早ければ本年度中から国が補助をすることになっており会議は基準作りを急いでいた。国は秋にも自治体に基準を通知する。
◆保護者不安に説明できるか
「保育士」の名称は、国家資格者しか使えない。国は、それだけの専門性を認めているはずだが、待機児童対策が待ったなしで保育士不足が言われる中、「資格者でなくても」の議論が通りやすくなっている。
少人数の保育なら資格者でなくて良いとすることの、合理的な説明が思い付かない。一人で三人まで乳幼児を預かる家庭的保育者(保育ママ)は、一定の研修の受講でもなれるが、実際は資格者が多いという。小規模だからこそ、一人の責任が重く、高い知識や技能が求められるというのが現場の実感だ。資格がなくても良い保育をする人はいると思う。でも、そうではない人との見極めを保護者はできるだろうか。資格を一定の品質保証とし、それを基礎に保育士は研さんを積む。
保育士不足は、処遇を低いままにしてきたこれまでの政策の結果でもある。改善して、確保を急いでほしい。 (柏崎智子)
(東京新聞)
無資格者半数も認可 小規模保育 国基準案が決定
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国が新設する「小規模保育」の基準案が二十九日、政府の子ども・子育て会議の部会でまとまった。焦点の一つだった保育士の国家資格者の割合は半分以上にとどめ、残りは一定の研修を受けた人とする当初の事務局案通りに決まった。全員が資格者である現行の認可保育所(定員二十人以上)に比べて大幅な引き下げとなり、保育の質の低下が心配される。
小規模保育は、定員六~十九人で、ゼロ~二歳児を預かる。新規参入のほか、東京都や横浜市など自治体独自の保育のうち小規模なものや、自治体補助を受けていない施設の移行が見込まれる。
事務局案は保育職員のうち資格者の割合の基準を「二分の一以上」とし、資格者の割合を高めれば補助額も増やす。ただ、六割以上とする都認証保育所や、三分の二以上とする横浜市保育室よりは低い。
この日の会議では、「多様な施設が移行できる」とする意見や、補助金により資格者の割合を高めようとする仕組みへの評価など、賛成の声が相次いだ。これに対し、「高い質を目指すのに二分の一を恒久的な基準とすべきではない。当面の時限措置にしてはどうか」との提案もあったが、盛り込まれなかった。
また、小規模保育施設の面積の目安は、認可保育所とほぼ同じ広さとされた。職員配置数は、認可保育所基準で算出される人数に一人加える。
小規模保育は二年後に本格実施されるが先行整備する自治体に対しては、早ければ本年度中から国が補助をすることになっており会議は基準作りを急いでいた。国は秋にも自治体に基準を通知する。
◆保護者不安に説明できるか
「保育士」の名称は、国家資格者しか使えない。国は、それだけの専門性を認めているはずだが、待機児童対策が待ったなしで保育士不足が言われる中、「資格者でなくても」の議論が通りやすくなっている。
少人数の保育なら資格者でなくて良いとすることの、合理的な説明が思い付かない。一人で三人まで乳幼児を預かる家庭的保育者(保育ママ)は、一定の研修の受講でもなれるが、実際は資格者が多いという。小規模だからこそ、一人の責任が重く、高い知識や技能が求められるというのが現場の実感だ。資格がなくても良い保育をする人はいると思う。でも、そうではない人との見極めを保護者はできるだろうか。資格を一定の品質保証とし、それを基礎に保育士は研さんを積む。
保育士不足は、処遇を低いままにしてきたこれまでの政策の結果でもある。改善して、確保を急いでほしい。 (柏崎智子)
(東京新聞)