夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『Hole』

2003年05月05日 | 映画(は行)
『Hole』(原題:洞)
監督:ツァイ・ミンリャン
出演:ヤン・クイメイ,リー・カンション,ミャオ・ティエン他

SARSの蔓延で、海外旅行に出かける人がめっきり減ったGW。
SARSのニュースが流れるたびに思いだすのが
1998年のこの映画。台湾とフランスの合作です。

舞台は2000年。1998年の作品ですから、
世紀末を迎える近未来の映画ということになります。

21世紀まであと1週間。
豪雨が降り続く台北では、水道水が汚染され、
謎のウイルスによる疫病が蔓延。
このウイルスに感染した人は、ゴキブリのように部屋のなかを這い回り、
光を嫌がるようになります。

この都市の古いマンションの一室に住む男。
男の部屋にやってきた水道屋が作業の途中で誤って、
ひとつの穴を階下の部屋まで貫通させてしまいます。

ここから始まる、男性と階下に住む女性との不思議なやりとり。
穴から聞こえるお互いの生活音、
穴から下に流れ落ちる水、ときには嘔吐物まで。

豪雨の続くこの都市はひたすら暗く描かれ、
会話もほとんどありません。
かと思えば、エレベーターが開いたとたんに
『カリプソ』を歌う女性が現れたりと、ミュージカルの要素も。

暗がりのなかでこの小さな穴だけから光が洩れる。
孤独な住人がウイルスに怯えつつ、
ひと筋の光に温かさと希望をおぼえます。

見終わったときは「?」な感じで
「なんじゃこりゃ」と思わないこともなかったのですが、
何年経っても心から離れない、
不思議でとても好きな映画となりました。

台北や香港のマンションでSARSが広がっていると、今朝の新聞で読みました。
近未来の話のはずが本当になるなんて。

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