夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『バベットの晩餐会』

2005年12月01日 | 映画(は行)
『バベットの晩餐会』(原題:Babettes Gæstebud)
監督:ガブリエル・アクセル
出演:ステファーヌ・オードラン,ビルギッテ・フェダースピール,ボディル・キュア他

寒い季節になるとお腹がすく。
1987年の公開当時はまだ学生で、食べるときはただ漫然と。
料理人さんが何を伝えたいのかを
感じながら食べたいと思ういま、観たくなって。

19世紀後半、寒々としたデンマークの漁村。
牧師とその娘、マーチーネとフィリパはつましく暮らす。
マーチーネは士官のローレンスに、
フィリパはオペラ歌手のアシールに見初められるが、
姉妹は父と神にひたすら忠実に生きる。

父の亡き後も質素な生活を続ける姉妹を、
嵐の夜、あるフランス人女性が訪ねてくる。
彼女が携えていた手紙によれば、
「彼女の名はバベット。革命で家族を失った彼女を
受け入れてもらえまいか。料理の名手だ」。
手紙の主はアシールだった。

姉妹に彼女を雇う余裕はないが見捨てられない。
以来、やりくり上手なバベットは
無給の家政婦として姉妹の生活を助ける。

14年後、バベットのパリの友人から手紙が届く。
祖国を追われたバベットは、
友人に頼んで宝くじの購入だけは続け、
1万フランが当たったという。

大金を胸に、彼女は祖国に帰ってしまうだろう、
残念だが仕方のないことだと姉妹が考えているとき、
バベットは牧師の生誕記念日に晩餐会を開きたいと申し出る。
費用は彼女持ち、食材も自分で調達して
フランス料理をふるまいたいと。

バベットが晩餐会の用意を始めるあたりから、
俄然楽しくなります。
お粥に塩もかけないような村人たちにとって、
フランス料理は未知の世界。
姉妹と村人たちは魔女の料理かもと怯え、
舌は神を賛美するためのもの、食事を味わってはならない、
何が起きても何事もなかったようにと覚悟を決めます。

しかし、唸らざるを得ない料理の数々。
食前酒にアモンティリャード(シェリー)。
シャンパンはヴーヴ・クリコ。ウミガメのスープ。
フォアグラとトリュフが詰められたウズラのパイに、
お皿まで舐めたくなるソース。
チーズ、フルーツ、デザート、コーヒー、
食後酒にはフィーヌ・シャンパーニュ。
バベットは注ぐグラスやタイミングにも配慮を怠らず、
素晴らしい時間を演出します。

パリではフランス料理店のシェフだったことを明かした
バベットの言葉は力強く。
「お客様を幸せにしました。力の限りを尽くして」。

ハイ、幸せです。とっても。

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