夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『誘拐ラプソディー』

2010年11月04日 | 映画(や行)
『誘拐ラプソディー』
監督:榊英雄
出演:高橋克典,林遼威,船越英一郎,YOU,哀川翔,菅田俊他

荻原浩の同名小説の映画化。
最近読んだ本の中で、いちばん気に入ったのがコレでした。
映画は今春に公開されていたことすら知りませんでしたが、
原作にイカレてしまったので、早速レンタル。

伊達秀吉、38歳、独身。家なし、金なし、前科あり。
ギャンブルで作った借金、数百万。
そんな秀吉に親身になってくれた工務店の社長のことも裏切り、
工務店の車をかっぱらって、知らない土地まで走ってきた。
時は春、公園には桜の木。そうだ、ここで首をくくろう。

ところが、桜の枝がボキッ。尻餅をつく。
上手く行かないときは、死ぬことさえ上手く行かない。
車に戻ると、思わず出る屁。
あまりの臭さに外へ飛び出ると、後部座席から見知らぬ少年が。
「おじさん、臭いよ。おならは外でしてよ」。

家出をしてきたという少年の名前は篠宮伝助。
ただちに追い返そうとするが、
高台の公園から伝助の家を見た秀吉は、考えを変える。
それは信じられないぐらいの豪邸。
聞けば、伝助にパパさんは、会社をいくつも経営しているらしい。

これは誘拐するしかない。
そう思った秀吉は、一緒に旅をしようと伝助に言い、
喜ぶ伝助の携帯で、こっそりとママさんに電話をかける。
「息子さんを預かった。返してほしければ5千万円用意しろ」。

しかし、あろうことか、伝助のパパさんは暴力団「篠宮組」の組長。
ヤクザの面子にかけて、警察の手を借りずに息子を見つけようとする。
篠宮組の怪しげな動きを察知した警察も、
なんだかわからぬままに組員たちの後を追い始めて……。

原作では香港マフィアまで登場するのですが、
映画にそれまで盛り込むと収拾がつかなくなると見えて割愛。
その他、原作とは異なる点もいろいろあり、
役者のイメージも原作どおりではなかったりもするのですが、
原作を読んでからのほうが、まちがいなく愛おしい作品に思えます。

ヤクザの組長の息子は、よーく勉強させられているため、
伝助は「斉藤工務店」は読めないのに、「伊達秀吉」は読める。
会話の端々にスペイン語が出る(けど、小賢しくはない)。
原作で笑った箇所は映画でもやはり笑えますし、
原作とはちがった脚色でホロリとさせられた箇所もありました。
特に、終盤の秀吉とママさんの電話には涙止まらず。

もう一度、原作を読んで、もう一度、映画も観たくなる。
心がぽかぽか。

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