夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『[リミット]』

2010年11月09日 | 映画(ら行)
『[リミット]』(原題:Buried)
監督:ロドリゴ・コルテス
出演:ライアン・レイノルズ

現在公開中。スペインの作品です。
原題は“Buried(=埋められた)”。
姿を見せる出演者はスカーレット・ヨハンソンのダンナ、ただ一人。
94分間、映し出されるのは棺桶の中のみ。

凄い映画を観てしまったというのが率直な感想。
衝撃がいつまで経っても消えません。
この喪失感をどこへ持って行けばいいのか。

暗闇の中、ある男が目覚める。
手元にあったジッポのライターを点けると、そこは棺桶の中。

男はアメリカ人のトラック運転手、ポール・コンロイ。
記憶をたどると、赴任地のイラクで突然襲撃された。
同僚たちはみな撃ち殺され、自分だけが生き残った。
しかし、気を失っているあいだに棺桶の中に埋められたらしい。
パニックに陥り、助けを求めるが、誰も来てはくれない。

体の向きも変えられないくらい狭い棺桶の中、
手や足で辺りを探ると、携帯電話が転がっていることがわかる。
なんとか手元に引き寄せてライターで照らしてみると、
アラビア語らしき文字が並び、簡単に使えそうにもない。

それでも、外界と繋がる唯一の器具。
家族、友人、会社と、覚えている番号に手当たり次第かけるが、
どこも留守電、もしくはこちらの話を信じてくれない、
あるいはたらい回しにされる。

番号案内でFBIへたどり着く。あとはこの担当者に賭けるしかない。
と、そのとき、犯人とおぼしき人物から電話がかかる。
相手は身代金を用意するように政府に伝えろと言うのだが……。

棺桶の中のみを撮影、登場人物も一人だけとなれば、
超低予算だったと思われますが、
こんな緊迫した94分間を見せ続ける監督の力量は、
あっぱれというほかありません。

棺桶に閉じ込められてあちこちに電話をかけまくる男。
それだけの話なのですが、電話のやりとりから、
男がイラクへ来なければならなかった事情、
残してきた妻子や母親のこと、会社のこと、
そして、犯人がこんなことをしなければならなかった事情など、
さまざまな事柄が浮かび上がってくるのが面白くてたまりません。
また、FBIの担当者とのやりとりは、
最後の最後にそういうことだったのかと納得、愕然。

立ち直れないぐらい残酷な、戦闘シーンの出て来ない反戦映画。
そう言うと、『さよなら。いつかわかること』(2007)を思い出しますが、
本作はその静けさとは対極を行く、ごつごつした作品です。
凄い。

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