夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『極道大戦争』

2015年06月24日 | 映画(か行)
『極道大戦争』
監督:三池崇史
出演:市原隼人,成海璃子,リリー・フランキー,高島礼子,青柳翔,渋川清彦,三浦誠己,
   中村靖日,坂口茉琴,優希美青,三津谷葉子,渡辺哲,ピエール瀧,でんでん他

日曜日のなんば。朝から外国人客で大にぎわい。
中国人とパチンコ店の開店待ちの客の間を抜けてTOHOシネマズなんば別館へ。

『新宿スワン』をUPしたその日に、
園子温監督のインタビュー記事を読む機会がありました。
脚本もキャストもほぼ決定した後に監督を頼まれたそうで、
ならば「らしくない」のもちょっとは納得できますが、
やっぱり腑抜けになっちゃった印象は否めません。

腑抜けじゃないときの園監督が「俺は俺の撮りたいものを撮るからさ、
嫌な奴は観に来なくていいし」という雰囲気を醸し出しているのに対し、
三池崇史監督はもっと素直な印象があります。
「ねぇねぇ、ボク、めっちゃ楽しい映画を撮ったのよ。みんな観に来てね」てな感じ。
それが万人に受け入れられるかどうかは別として(受け入れられないでしょう(笑))、
私はどうしても憎めないんです、三池監督のこと。

噛まれたら全員ヤクザ
ヴァンパイアやくざなんて、発想からしてワラけます。

敏感肌で刺青も入れられない影山(市原隼人)は、
刺青が素晴らしすぎる親分・神浦(リリー・フランキー)を銭湯で見かけ、
この人について行こうと決意。

昔気質で人情派の神浦は、カタギの人間には決して手を出さない。
よその組から脅されて困っている人々を助け、
倒産寸前の零細企業の社長にはそっと金を差し出す。
町の誰もから慕われる神浦のことを影山は父親のように思い、
親父に手出しする奴は許さねぇと、いつも神浦を護衛している。

ある日、杏子(成海璃子)という少女がよその組の者から暴行を受ける。
そのさなかに殴り込みに入った神浦と手下たちは杏子を救出。
なかなか傷の癒えない杏子を影山が見舞いに行った折り、
ひとりきりだった神浦が刺客に遭う。

不死身と噂されていた神浦だったが、格闘の末に破れてしまう。
絶命寸前の神浦は影山の首に噛みつくと、最後の力を振り絞り、
「ヤクザ・ヴァンパイア」の血を受け継げと言う。

神浦の行きつけの居酒屋の店主・法眼(でんでん)から
「ヤクザ・ヴァンパイア」について説明を受ける影山。
超人的な力を身につけると、親父の仇を討ち、世界を救うべく立ち上がるのだが……。

ばかばかしいとしか言いようがないのですが、でもやっぱり憎めない。
出演者の誰もが真面目にバカを全うして、楽しんでいるように見えます。

かつてはあんなに色っぽくて美しかった高島礼子が若頭役。
髪の毛を振り乱し、頭の中に不気味な液体を溜め込み、
畑でカタギを育てようとするイカレた役。
『藁の楯』(2013)で松嶋菜々子を「おばさん臭い人」呼ばわりしたのに次ぐ衝撃。
三池監督だったら、沢尻エリカにも何の遠慮もしなさそう。

影山の兄弟分役、渋川清彦青柳翔、早々にぶっ殺される三浦誠己など、
やくざを演じる役者たちの楽しそうなことと言ったら。
やくざ化した住民に取り囲まれたときの車のナンバーが「4189」で四苦八苦。
まるで『神さまの言うとおり』(2014)の続編かと思うような敵のカエルくん、
そいつに立ち向かうときの車のナンバーが「3150」で、たぶん「サイコー」か。

最初の最初にリリー・フランキーとピエール瀧が対峙するシーンからして、
『凶悪』(2013)の極悪人コンビを思い出すと、
作品としてのあまりのちがいに笑ってしまって。

人には決して薦められないけど、私は嫌いになれないんだなぁ。

ところで余談。
開映前のロビーでは、私の向かいに座っていた男性が読書中。
「隣は何を読む人ぞ」ということで凝視したら(ブックカバーなし)、
三浦しをんの『ロマンス小説の七日間』でした。

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