夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『小さな恋のものがたり』

2007年01月09日 | 映画(た行)
『小さな恋のものがたり』(原題:Little Manhattan)
監督:マーク・レヴィン
出演:ジョシュ・ハッチャーソン ,チャーリー・レイ,
   ブラッドリー・ウィットフォード,シンシア・ニクソン他

日本では未公開、昨秋DVD化された2005年の作品。
みつはしちかこの漫画を意識したかのような邦題ですが、
原題は“Little Manhattan”。
切なくてドキドキする、小学生の初恋の物語です。

まもなく11歳になるゲイブは
離婚を控えた両親との生活にどん底気分。
せめていじめっ子に立ち向かえるようになりたいと、
近所の空手教室に通いはじめる。

そこで出会ったのが同い年のローズマリー。
彼女のことは幼稚園の頃から知っているが、
とびっきりの美人というわけでもなし、特に意識したことはない。
ところが、組み手のパートナーとなった彼女を目の前にして、
急に胃の上の辺りが締めつけられるような感覚に襲われる。

なんて可愛いんだ、しかも頭が良くて、
思いっきり僕のタイプじゃないか。
それからはもう、彼女のことで頭がいっぱい。
こっそり彼女の家の前へ行ってはウロウロ、
ばったり会ったふりができるタイミングをはかる。
彼女が他の男子としゃべっているのを見れば胸が苦しくなる。
なんとかデートにこぎつけても、何を話せばいいのかわからない。
思い切って手を握れば、自分がこんなに汗っかきだったのかと焦る。
この初恋は成就するのか?

こんな思いをしたことのある人は昔が懐かしく、胸がキューン。
こんな思いに縁のなかった人は羨ましく思うか、アホらしく思うか。
いずれにしても初恋は思い返せば切ないもの。
彼女と遠出をした日、歩いた距離は膨大で、
10年ちょっとの人生でいちばん疲れたはずだけど、
ゲイブにとっては人生でいちばん幸せなときでした。
だけど、現実には10歳でキスはでけんやろと思いますけどね。

恋のドキドキを失ってしまった父親に
ゲイブは「なぜ離婚するのか」と尋ねます。
「男女の間ではいろいろ、本当に些細な、言わないことが出て来るんだ。
そうすると、言わないことがどんどんたまっていって
そのうち言えなくなるんだ」と答える父親。
ゲイブに「なぜ言わないでためておくの?」と言われたときの
不意を突かれたような父親の表情が印象に残ります。

ネタバレですけど、最後は彼女が転校してしまってそれっきり。
初恋は切ない思い出で終わってしまいます。
でもね、締めくくるのはこんな言葉。
この初恋は永遠に忘れない。

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『ナイロビの蜂』

2007年01月05日 | 映画(な行)
『ナイロビの蜂』(原題:The Constant Gardener)
監督:フェルナンド・メイレレス
出演:レイフ・ファインズ,レイチェル・ワイズ,ユベール・クンデ,
   ダニー・ヒューストン,ビル・ナイ他

新年最初の映画は、一昨年、脳天を直撃されたような、
もの凄い衝撃を受けた『シティ・オブ・ゴッド』(2002)のフェルナンド・メイレレス監督による作品。
そう、私がなぜか惹かれるポルトガル語圏の監督です。
原作は英国出身のジョン・ル・カレの同名ベストセラー小説。
『イングリッシュ・ペイシェント』(1996)と同じくアフリカが舞台で、
どちらもレイフ・ファインズ主演であることから
勝手に壮大なメロドラマを想像していたら、おみそれしました。圧巻。

原題の“The Constant Gardener(=絶え間ない園芸家)”が示すとおり、
主人公のジャスティンはガーデニングが趣味で、
政治にはまるで無関心の英国外務省一等書記官。
上司の代理を務めた講演で、政府の事なかれ主義について
人権活動家の若い女性テッサから激しい抗議を受ける。
それをきっかけに、お互いを求めあうようになるふたり。
ケニアのナイロビ駐在のジャスティンにテッサが逆プロポーズ。
ふたりは夫婦として幸せな生活を始める。

結婚後もジャスティンはテッサの活動には口出ししない約束。
テッサは医師のアーノルドとともにナイロビのスラム街をまわり、
妊娠してからも精力的に貧困者の救済活動を続ける。
しかし、ある日、出かけた先でテッサが惨殺される。
同行していたはずのアーノルドは行方不明。
不倫の果ての殺人事件だと取り沙汰される。

妻の死の理由を知りたいと願うジャスティンは自ら調査に乗り出す。
その結果、事件が国際的陰謀であることがわかってくる。
製薬会社が貧困者を利用して結核治療の人体実験をおこない、
英国の政治家がその利権を得ようと目論んでいる。
薬の致命的な副作用を承知していながら、
金儲けに走る会社や政治家は売り込みを開始。
それを追及しようとしたテッサは殺されたのだ。
真相に迫るとともに、彼もまたその命を狙われることとなり……。

同僚に深追いするなと諭され、自分の命も危うくなると知りながら、
「彼女を裏切った。彼女を疑ったから」と真相を追うジャスティンの姿に感銘。
めっちゃ骨太、男臭く、なおかつ繊細なミステリーでラブロマンス。

ラストシーンを見れば、キャッチコピーも胸を打ちます。
「地の果てで、やっと君に帰る」。

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