夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『さんかく』

2010年11月13日 | 映画(さ行)
『さんかく』
監督:吉田恵輔
出演:高岡蒼甫,小野恵令奈,田畑智子,矢沢心,大島優子他

好きになるのは、カンタン。
好きでいるのは、ムズカシイ。

そんなキャッチコピーの三角関係のお話。
『机のなかみ』(2006)、『純喫茶磯辺』(2008)と、
観終わるといつもほんわか気分にさせてくれる監督の作品です。
ヒロイン役はAKB48の元メンバー、えれぴょん。知らんけど。
同じくAKB48のゆうこちゃんが友情出演しています。それも知らんけど。

釣具店に勤務する30歳の百瀬は、
派手に改造した車のリアウィンドウに、自分の似顔絵を描くようなナルシスト。
2年前から29歳の佳代と同棲中。
佳代は百瀬のことが好きでたまらないが、
百瀬はなんとなくマンネリ感を抱き始めている。

ある日、佳代の妹で中学3年生の桃が、田舎から東京へ遊びに来る。
夏休みの間、百瀬と佳代の部屋に居候することに。

15歳とはいえ、顔は超かわいく、体は十分に発育し、
無防備な姿を平気でさらす桃に、百瀬はドギマギしっぱなし。
百瀬の落ち着きのなさを察してか、佳代は妹に嫉妬して、
些細なことでヒステリックに怒る。
それを楽しむかのように、桃が百瀬に思わせぶりな態度を取るものだから、
百瀬はすっかりのぼせあがった状態に。

やがて、夏休みが終わりに近づき、桃は実家へ帰る。
百瀬はこっそり桃と連絡を取ろうとするが、
桃の携帯はいつも留守電で、折り返しの電話もかかって来ない。

腑抜けの百瀬を試すつもりで別れを告げた佳代だったが、
百瀬がいとも簡単に承諾したことに驚き、泣きすがる。
とっとと部屋を出た百瀬に対して、
佳代はストーカーまがいの行動を取り始めてしまい……。

どのシーンも実際にありそうで、会話も自然。
特に佳代の怒り方には笑わされました。
怒られた百瀬の身になって共感する男性は多いのでは。

えれぴょんのことは全く知りませんでしたが、
鼻づまりのハスキーボイスが百瀬を翻弄する桃役にピッタリ。
あんな可愛い子に急に手を繋がれたりしたら、
そりゃ普通はイカレてしまうでしょ。

佳代の痛々しさに気を取られてしまいますが、
百瀬の自意識過剰ぶりは相当なもの。
自分の行動の異常さには気づいていないところがイタイ。
ラストはきっちり落とし前をつけられて、
だけど、なんだか爽やかな風。

『机のなかみ』ほどインパクトはありませんが、
この監督はやっぱり好き。痛いのにほっこり。

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『[リミット]』

2010年11月09日 | 映画(ら行)
『[リミット]』(原題:Buried)
監督:ロドリゴ・コルテス
出演:ライアン・レイノルズ

現在公開中。スペインの作品です。
原題は“Buried(=埋められた)”。
姿を見せる出演者はスカーレット・ヨハンソンのダンナ、ただ一人。
94分間、映し出されるのは棺桶の中のみ。

凄い映画を観てしまったというのが率直な感想。
衝撃がいつまで経っても消えません。
この喪失感をどこへ持って行けばいいのか。

暗闇の中、ある男が目覚める。
手元にあったジッポのライターを点けると、そこは棺桶の中。

男はアメリカ人のトラック運転手、ポール・コンロイ。
記憶をたどると、赴任地のイラクで突然襲撃された。
同僚たちはみな撃ち殺され、自分だけが生き残った。
しかし、気を失っているあいだに棺桶の中に埋められたらしい。
パニックに陥り、助けを求めるが、誰も来てはくれない。

体の向きも変えられないくらい狭い棺桶の中、
手や足で辺りを探ると、携帯電話が転がっていることがわかる。
なんとか手元に引き寄せてライターで照らしてみると、
アラビア語らしき文字が並び、簡単に使えそうにもない。

それでも、外界と繋がる唯一の器具。
家族、友人、会社と、覚えている番号に手当たり次第かけるが、
どこも留守電、もしくはこちらの話を信じてくれない、
あるいはたらい回しにされる。

番号案内でFBIへたどり着く。あとはこの担当者に賭けるしかない。
と、そのとき、犯人とおぼしき人物から電話がかかる。
相手は身代金を用意するように政府に伝えろと言うのだが……。

棺桶の中のみを撮影、登場人物も一人だけとなれば、
超低予算だったと思われますが、
こんな緊迫した94分間を見せ続ける監督の力量は、
あっぱれというほかありません。

棺桶に閉じ込められてあちこちに電話をかけまくる男。
それだけの話なのですが、電話のやりとりから、
男がイラクへ来なければならなかった事情、
残してきた妻子や母親のこと、会社のこと、
そして、犯人がこんなことをしなければならなかった事情など、
さまざまな事柄が浮かび上がってくるのが面白くてたまりません。
また、FBIの担当者とのやりとりは、
最後の最後にそういうことだったのかと納得、愕然。

立ち直れないぐらい残酷な、戦闘シーンの出て来ない反戦映画。
そう言うと、『さよなら。いつかわかること』(2007)を思い出しますが、
本作はその静けさとは対極を行く、ごつごつした作品です。
凄い。

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『誘拐ラプソディー』

2010年11月04日 | 映画(や行)
『誘拐ラプソディー』
監督:榊英雄
出演:高橋克典,林遼威,船越英一郎,YOU,哀川翔,菅田俊他

荻原浩の同名小説の映画化。
最近読んだ本の中で、いちばん気に入ったのがコレでした。
映画は今春に公開されていたことすら知りませんでしたが、
原作にイカレてしまったので、早速レンタル。

伊達秀吉、38歳、独身。家なし、金なし、前科あり。
ギャンブルで作った借金、数百万。
そんな秀吉に親身になってくれた工務店の社長のことも裏切り、
工務店の車をかっぱらって、知らない土地まで走ってきた。
時は春、公園には桜の木。そうだ、ここで首をくくろう。

ところが、桜の枝がボキッ。尻餅をつく。
上手く行かないときは、死ぬことさえ上手く行かない。
車に戻ると、思わず出る屁。
あまりの臭さに外へ飛び出ると、後部座席から見知らぬ少年が。
「おじさん、臭いよ。おならは外でしてよ」。

家出をしてきたという少年の名前は篠宮伝助。
ただちに追い返そうとするが、
高台の公園から伝助の家を見た秀吉は、考えを変える。
それは信じられないぐらいの豪邸。
聞けば、伝助にパパさんは、会社をいくつも経営しているらしい。

これは誘拐するしかない。
そう思った秀吉は、一緒に旅をしようと伝助に言い、
喜ぶ伝助の携帯で、こっそりとママさんに電話をかける。
「息子さんを預かった。返してほしければ5千万円用意しろ」。

しかし、あろうことか、伝助のパパさんは暴力団「篠宮組」の組長。
ヤクザの面子にかけて、警察の手を借りずに息子を見つけようとする。
篠宮組の怪しげな動きを察知した警察も、
なんだかわからぬままに組員たちの後を追い始めて……。

原作では香港マフィアまで登場するのですが、
映画にそれまで盛り込むと収拾がつかなくなると見えて割愛。
その他、原作とは異なる点もいろいろあり、
役者のイメージも原作どおりではなかったりもするのですが、
原作を読んでからのほうが、まちがいなく愛おしい作品に思えます。

ヤクザの組長の息子は、よーく勉強させられているため、
伝助は「斉藤工務店」は読めないのに、「伊達秀吉」は読める。
会話の端々にスペイン語が出る(けど、小賢しくはない)。
原作で笑った箇所は映画でもやはり笑えますし、
原作とはちがった脚色でホロリとさせられた箇所もありました。
特に、終盤の秀吉とママさんの電話には涙止まらず。

もう一度、原作を読んで、もう一度、映画も観たくなる。
心がぽかぽか。

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『雷桜』

2010年11月01日 | 映画(ら行)
『雷桜』
監督:廣木隆一
出演:岡田将生,蒼井優,小出恵介,柄本明,時任三郎,宮崎美子,池畑慎之介他

招待券をいただいたので、またしても得手ではない時代劇へ。
宇江佐真理の同名小説の映画化です。

江戸時代。
将軍家に生まれたまだ若い殿様、清水斉道は、笑顔を見せたことがない。
幼少の頃、父親の徳川家斉に捨てられたせいで狂ってしまった母親から
辛く当たられたことがトラウマとなっているのだ。

夜ごと恐ろしい夢を見てはうなされて目が覚める。
ところが、すぐそこにいるはずの家臣を呼んでも返事がない。
夜伽の最中に居眠りをするとは何事かと、斉道は刀を抜いてその家臣を追い回す。

本当に家臣を殺しかねない勢いの斉道を、必死で止めたのが瀬田助次郎。
その様子を見ていた御用人の榎戸角之進は、
今後ずっと斉道に仕えるようにと助次郎に命ずる。

眠れぬ斉道のために、助次郎は自分の故郷である瀬田村の話をする。
天狗が棲むという山に興味を示した斉道は、静養先として瀬田村を選ぶ。

瀬田村へ向かう途中、家臣の制止を振り切って山へと入る斉道。
そこで出会った天狗の正体が、雷(らい)という若い女。
助次郎にそのことを話したところ、
それは、乳飲み子の頃に藩のいざこざに巻き込まれて
さらわれてしまった自分の妹、遊(ゆう)に違いないと助次郎が言う。

助次郎の母親は、娘が生きていると知って大喜び。
育ての親から真実を明かされた遊は、傷心のうちに山から村へと戻る。
作法も何もわからず、野性味たっぷりの遊は村の暮らしに馴染めない。
そんな遊に、自分を山へ案内しろと斉道は言い……。

身分違いが何であるかもわからない遊と、
将軍の息子であるという宿命からは逃れられない若殿様の恋。
売れっ子の主演2人が吹き替えなしでこなす乗馬シーンはなかなかのもので、
青々とした草原と空と、標題の雷桜は心揺さぶられる美しさ。
宮崎美子の溢れる母性にも泣かされます。

けれど、私はやはり、チョンマゲ姿の岡田くんではなく、
今風の岡田くんを見たい。(^^;
頼りなげに微笑む優ちゃんは健在ですが、
すすだらけの顔でラブシーンを演じられてもちょっと引く。
悪くはないけど、良くもないというのが正直な感想で。

余談ですが、本当によく見かける柄本明の息子、柄本佑。
脇役として確実に需要がありそう。

それにしても、前々述の『十三人の刺客』はともかく、
これにも切腹シーンがあるとは予想できず。痛いやんか。(T_T)

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