ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

負けない

2018-02-17 | アメリカ事情

Gun Violence Archive (銃暴力重要記録)によれば、今年に入ってから、この2月14日のフロリダ州の学校で起きた銃乱射事件も含めて、アメリカでは30件の銃乱射事件が起きている。フロリダの学校では、17名の教師と生徒が犠牲になった。生存者の生徒達の証言を聞くと、涙を禁じ得ない。この学校は、三男一家の住むところから、たった25マイルしか離れていない。とても他人事には、あるいは、自分には起こらないだろうとは思えない。


昨年の8月19日のブログで私は、銃乱射事件について書いたが、それからほぼ6か月経って、すでに144件起こっている。2017年だけでも、346件もあった。水曜日の前日、ニュースで、昨年10月に起こったラスヴェガスでの事件で重症を負い、やっと退院できた隣町の若い女性にインタビューをしているのを見たばかりだった。彼女は、友人と屋外コンサートを楽しむためにそこに居たのだった。

 

屋外コンサート故、楽しんでいた人々は軽く千名を越えていた。悪魔が乗り移った、としか思えないガンマンは、すぐそこに立つホテルの32階から、多くの銃を使い、1,100発は観客に向けて撃った。死者58名、負傷者851名を出した末、本人は自殺した。犯行動機は、不明である。その負傷者の一人がその若い女性だった。彼女は、賢明に笑顔で、友人や家族に感謝していたが、体の傷はようやく治りかけていても、心の傷は、深く毎日「戦っている」と言った瞳には涙が溢れていた。そして、そんな混沌とした艱難の中でも、一筋の光明があったのをそのニュースで知った。それは、重症を負った彼女をまったく見ず知らずの青年が、自分も銃撃される危険を冒して、救いだし、病院へ搬送したのだ。もし彼が彼女を救わなければ、彼女は間違いなく、路上で息絶えていただろう。

 

艱難の中の一筋の光明。それを聞いて、二つの話(実話)を思い出した。ひとつは、アイダホ州コールドウェルのロレイン・フォックスさん、そしてもう一つは、ニューヨーク州セイヴィルのデボラ・カーン・シュレックさんの話である。どちらも、9-11に関連している。


ロレイン・フォックスさんの話:あれは、2001年9月14日のことでした。私は、その日の作業を終えてクラスの子供達を集め、これから物語の時間をしようとしていました。すると突然、張り裂けるような雷が頭上からしました。私の斜め前にいた一人のちいさな男の子は、しくしく泣き始めました。私はこの子に、落ち着かせるような言葉をささやいたのですが、他の子供達も同じようになり、目に涙をいっぱい貯めてさえいました。そしてすぐに28人全員の生徒が泣いていたのです。これは頭上の雷雨のせいではないとすぐ気づきました。アメリカの歴史の中で無限に長く、悲しい一週間に起こった、何百万人もの人々の感情の広がりが、小さな子供達の優しい心に到達していたからでした。


小さな子供達が、遠い地(ニューヨーク)での悲劇をこれほど心を痛めて、悲しんでいたのは、それ自体悲しいが、同時に人の痛みがわかる子供達がいる、ということに私は救われた気持ちでいっぱいであった。そこに救いがあるからだ。

 

デボラ・カーン・シュレックさんの話:同郷の消防士達が、救助要請に出動し、還らなかったのです。その後に、私はグラウンド・ゼロで奉仕活動をしていました。消防士隊長ティモシー・ヒギンズは、その還らなかった消防士達の一人でした。気持ちの暗く沈む時には、ティミー[Timothyティモシーの愛称・単略]の存在を感じ、どんな岐路も私を案内してくれるようでした。まだ燃えている杭のある場所で作業している時、私はスティーヴという消防部長に会いました。私は、フリーポートの出身と彼に言いました。スティーヴは、フリーポートからの男性と共に消防士だったと言いました。「どなたでしたか?」と聞くと、彼は、「ティム・ヒギンズです。」と答えました。私は、(ティムがガイドしてくれたかのようなこの道をたどり)2005年スティーヴと結婚しました。彼は明るく輝く光明に違いありません。その通り、彼はいつでも私の灯台であったのです。


あれから今年の秋で17年が経つ。私のかかりつけの医師の妹さんは、あの世界貿易センターのひとつのタワーでファイナンシャルアドバイザーとしてあの朝出勤していた。あの日から、その医師は妹さんに会っていない。あのグラウンドゼロには、アメリカ独立年にちなみ、1776フィート(約541m)の高さで、2014年竣工したOne World Trade Centerワン・ワールド・貿易センターを含め全部で6つの超高層ビルが立つ。ワン・ワールド・貿易センターは、工事中に何度も地下部分からテロ犠牲者の遺骨が発見され、その完成は5年遅れたが、今日まさに人々のBeacon(篝火・灯台的な明かり・光明)として輝く。負けない、と光を放っている。


https://www.vecteezy.com/vector-art/70733-one-world-trade-center

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