山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

静謐な流れに希望を置く伊集院静

2013-01-19 19:43:28 | 読書
 伊集院静の小説がいい。
 週刊誌に載るような作家に偏見があったが。
 藤沢周平や山本周五郎のようなヒーローが出てこない視座が素晴らしい。
 
 『オール読物』に掲載された短編6作品が収められた『冬のはなびら』。
 逆境にいる人、挫折経験者、無器用な職人、最愛の人を失った人など等、現代の時流に乗れない人々が登場する。

 そんななかで伊集院は、「心棒」というものを大切に貫こうとしている。
 仕事のなかでも人生のなかでも「心棒」というものがある、と。

 各作品の最後の一行は深い余韻を与える。
 生きる「心棒」を絶望の中で捕まえた人間が発するおとしどころだ。

 それをふりかざしもせず、強要もせず、悲哀の状況の中に希望を忘れない。
 作品全体に流れる静謐と希望とが、われわれを生きる原点にさしもどしてくれる。
 テレビや本の劇場型構成やヨシモト流空気感の風靡が、はかなく見えてくる。

 無頼派の真骨頂を静かに提示する。
 軽佻浮薄さえ取り入れながらも、ぶれない「心棒」を貫徹。
 夏目雅子は伊集院の中で生きている。
コメント
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