人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

津村記久子著「やりたいことは二度寝だけ」を読む ~ 庶民派芥川賞作家の初エッセイ集:小説における主人公の名前の付け方ほか / ブログ開設以来5000本目の投稿です

2024年05月29日 00時08分17秒 | 日記

29日(水)。昨日、娘がこんなものを連れて帰りました さて、何でしょう

     

答えは「頭皮マッサージ器」です 赤いボール状のところを持って、白い突起を頭に押しつけてグリグリやるのですが、これがとても気持ち良いのです 頭が空っぽの私でも頭が疲れていることに気づかされます

ということで、わが家に来てから今日で3424日目を迎え、ウクライナ軍のシルスキー総司令官は27日、フランス軍がウクライナへの訓練要員の派遣を計画していると発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     フランス軍が直接ウクライナ戦争に加わるわけではないが どこまで行くんだろうか

         

昨日、夕食に「いり鶏」「生野菜サラダ」「シメジの味噌汁」を作りました 「いり鶏」は久しぶりに作りましたが美味しく出来ました

     

         

津村記久子著「やりたいことは二度寝だけ」(講談社文庫)を読み終わりました 津村記久子は1978年大阪府生まれ。大谷大学文学部国際文化学科卒業。2005年「マンイーター(「君は永遠にそいつらより若い」に改題)」で第21回太宰治賞を受賞し作家デビュー 2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞を受賞したほか数々の文学賞を受賞

     

本書は2012年6月に講談社から刊行された単行本のうち数編を除き、2017年7月に順序を変えて文庫化したものです 2005年のデビュー直後から2010年までの約5年間(27歳から32歳まで)に綴られた文章が収められた初エッセイ集です

著者は「あとがき」の中で次のように書いています

「自慢話も、ちょっといい話も、お説教も、他人の不幸も、全部疲れるけれど、何かちょっとだけ読みたい、という時がある方に読んでいただきたい 何も残らないし、ひたすら地味で意味もないけど、読んでる間少し楽になった、と感じていただければこれ幸いである こうだといいなあ、と思っているのは、デパ地下のケーキではなく、スーパーで200円以下で買えるお菓子だ。できれば、最近破格においしい森永チョイスビスケットの裏にチョコレートが塗ってあるやつみたいだと思っていただければ、たぶん泣いて喜ぶでしょう

この「あとがき」の通り、著者は普段着で飾ることなく思ったことを素直に綴っています 当時、著者は午前中に会社勤めをしながら小説を書いていた関係から、平日は、仮眠・本眠・昼寝と1日に3回に分けて寝る生活を送っていたといいます。そんなことから本書のタイトルが出てきたのでしょう

本書には全部で59編も収録されているのですべてをご紹介するわけにはいきません そこで、2日前のブログで、著者の「ポトスライムの舟」の主人公の名前を「ナガセ」とカタカナ表記していることについて書いたので、それに関係するエッセイをご紹介することにします それは「芋美と幸子」というタイトルのエッセイです。超略すると次の通りです

「小説を書く人間も、基本的には登場人物の本名という態のものを考える立場であり、プロダクションの人とはちょっと違う 小説家の芸風にもよるのだけれど、わたしのような夢のない作風だと、よりもっともらしく、本名っぽく、名前を付けなければいけない これがかなり気を使う。姓はまだいいとしても、問題は下の名前である。わたしの書いた小説で、主人公ですら名字しか出てこないことがある理由の一端は、このことにもある 主人公の名前ともなると、最低でも1か月は付き合わなくてはならないので、さらに悩む。主人公の名前を決める際の基本的なコンセプトは、『親に高望みされすぎず、思い入れを持たれすぎず、だからといって投げやりに名付けられたわけではなく、響きに特段のかわいらしさはなく、かっこよくもない名前』である 要するに中庸な名前だ。実はこれが結構難しい。どちらかというと、男性の名前より女性の名前の方が難しい

なるほど、と思います なお、このエッセイのタイトル「芋美と幸子」は次のような文章から付けられています

「わたしがいくらじゃがいもが好きだからって子供に『芋助』とか『芋美』だとか付けたら怒られる、というレベルなどは通り越した名前がある たくさんの子供の名前を見ているうちに、実際に、自分ならこう付ける、という子供の名前を考え始めていた いろいろメモしながら、最終的に、女の子なら『幸子』、男の子なら『清』と決めた

とはいえ、彼女は自分の小説に幸子や清を登場させるかといえば可能性は低いと書いています

破格に美味しい「森永チョイスビスケットの裏にチョコレートが塗ってあるやつ」は食べたことはありませんが、気軽に読めるエッセイ集としてお薦めします

         

このブログが5000本目の投稿となります 2011年2月15日にtoraブログを開設して以来4852日目の記録です 「継続は力なり」を実感します

【忘備録】

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原田ひ香著「ランチ酒 今日もまんぷく」を読む ~ 疲れた心を癒す人間ドラマ ✕ 絶品グルメ小説「ランチ酒」シリーズ 第3弾

2024年05月28日 06時42分07秒 | 日記

28日(火)。2,3日前のX(旧Twitter)にコンビニに貼りだされた商品広告の映像が投稿されていて「ワロタ」とコメントしてありました それは次の広告です

           フ ラ ン ク フ ト ル

なるほどフランクフルトを食べ過ぎたら太るよな~ と思い 笑ってしまいました また同じ人の投稿に次のような商品ポップの写真が添付されていました

   幸子 明太子 半額

これでは幸子(さちこ)さんが半額みたいです   本当は「辛子明太子  半額」と書きたかったのでしょうね~  ワロタ

「辛」と「幸」との関係で言えば、「つらい『辛』という字に一を足せば『幸』になることを忘れないで」という台詞を新聞で読んだ記憶があります 「まるで哲学のような話だ」と考えていただければ幸いですが、日本でしか通用しないと考えると辛いです

ということで、わが家に来てから今日で3423日目を迎え、ロシアのプーチン大統領が、ゼレンスキー・ウクライナ大統領の任期は終わり国家元首としての正当性を失ったと主張し、圧力を強めている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     多くの政敵を暗殺し 大統領任期を2030年まで伸ばしたプーチンこそ正当性なし

         

昨日、夕食に「ビーフカレー」と「生野菜サラダ」を作りました 牛肉はいつものバラ肉ですが、美味しかったです

     

         

原田ひ香著「ランチ酒   今日もまんぷく」(祥伝社文庫)を読み終わりました   原田ひ香は1970年、神奈川県生まれ。2005年「リトルプリンセス2号」で第34回NHK創作ラジオドラマ大賞最優秀作受賞   2007年「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞受賞   ベストセラーとなった「三千円の使い方」ほか著書多数

     

本書は「ランチ酒」「ランチ酒 おかわり日和」に次ぐ「ランチ酒」シリーズ第3弾です 主人公の犬森祥子は学生時代に同級生だった亀山太一が社長を務める「中野お助け本舗」に雇われています この会社はいわゆる「便利屋」からスタートし、夜22時から朝5時まで「見守ります」という業務を引き受けており、祥子は依頼主のところに派遣され依頼主と一緒に過ごし、翌日 仕事上がりに、近くの飲食店でアルコールを飲みながらランチを食べることを日常の楽しみにしています 祥子はかつて結婚し、元夫・義徳のもとに5歳の娘・明里を残して離婚した経験があります 彼女はまた、亀山から頼まれた仕事の関係で知り合った国会議員の秘書・角谷と時々一緒に食事をする程度の距離で付き合っています 物語は娘との関係、角谷との関係を織り交ぜながら展開します

本書は次の16話から構成されています

第1酒:蒲田(餃子)

第2酒:西麻布(フレンチ)

第3酒:新大久保(サムギョプサル)

第4酒:稲荷町(ビリヤニ)

第5酒:新宿御苑前(タイ料理)

第6酒:五反田(朝食ビュッフェ)

第7酒:五反田(ハンバーグ)

第8酒:池尻大橋(よだれ鶏)

第9酒:銀座1丁目(広島風お好み焼き)

第10酒:高円寺(天ぷら)

第11酒:秩父(蕎麦、わらじカツ)

第12酒:荻窪(ザンギ)

第13酒:広島(ビール)

第14酒:六本木(イタリアン)

第15酒:新橋(鰤しらす丼)

第16酒:末広町(白いオムライス)

主人公の犬森祥子のランチを選ぶ明確な基準は「酒に合うか合わぬか」です その「酒」とはビールであり、ワインであり、日本酒です。行く先々の店で出てくる料理のどれもが美味しそうです それぞれの店は実在の店舗をモデルにしていると思われますが、「それ、どこにあるの? 教えて」と言いたくなるような魅力的なお店が登場します

「へえ、そんなこともあるんだ」と思ったのは「第13酒:広島(ビール)」に出てくる「ビールスタンド」というお店のビールの注ぎ方です 店のメニューには次のように書かれています

1度つぎ「のどごし」

2度つぎ「うまみ」

3度つぎ「泡はほろ苦」

マイルドつぎ「なめらか、優しい」

シャープつぎ「キリっと炭酸」

ミルコ「ほぼ泡だけ」・・・半額

このうち、「3度つぎ」は1度ついで泡が消えたら2度目をつぎ、再び泡が消えたら最後に泡を乗せる、というつぎ方です 祥子の説明は「1度つぎと全く違う。優しく柔らかなビールをほろ苦の泡が包んでいる」です どうやらビールはつぎ方で味が変わってくるようです

本書の飲食シーンは、単なる「食レポ」にとどまらず、料理を作る人の食に対するこだわりや愛情が伝わってきます さらに、美味しいお酒や食事を摂り、毎日健康に過ごすことが出来るのがいかに幸せであることか、と言うメッセージが伝わってきます あの店のあの料理が食べたい と思う店が少なくとも1つはあると思います 広くお薦めします

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NHK「魂のピアニスト、逝く ~ フジコ・ヘミング その壮絶な人生」を観る / 津村記久子著「ポトスライムの舟」を読む ~ 世界一周クルージングと年収が同じ額だと気づいた女性の物語

2024年05月27日 00時07分37秒 | 日記

27日(月)。昨日、午後9時からNHKテレビで放映されたNHKスペシャル「魂のピアニスト、逝く ~ フジコ・ヘミング その壮絶な人生 ~ 」を観ました

若くして片耳の聴力を失うなど、数々の苦難に向き合いながら60代後半にしてNHKのドキュメンタリーで一躍脚光を浴び、多くの人々を魅了してきた”魂のピアニスト”フジコ・ヘミング”さんは、4月21日に92歳でこの世を去りました 番組では90代になっても世界各地で演奏活動を続ける彼女を、この5年間継続的に取材し、その姿を記録し続けてきました 昨年11月には、自宅の階段で転倒し脊髄を損傷、さらに、ほどなくして膵臓ガンが見つかりましたが、病室にまでピアノを持ち込み、再起を期して闘病生活を続けていました

50分間の番組ではこれまでの数々のライブ・コンサートや自宅でのインタビューの模様などが紹介されました 番組中、フジコさんの演奏を中心に流れたのはショパン「別れの曲」「英雄ポロネーズ」「黒鍵エチュード」「幻想即興曲」「ノクターン作品9-2」「舟歌」「革命エチュード」、リスト「ラ・カンパネラ」「コンソレーション第3番」「ため息」、シューマン「トロイメライ」などで、昨年11月に大怪我をして入院中に、たどたどしく弾こうとしたのはモーツアルト「ピアノ・ソナタ第11番”トルコ行進曲付き”」の第1楽章「アンダンテ・グラツィオーソ」の冒頭部分でした 結局この時がフジコさんがピアノに対峙した最後となりました 生涯最後の曲がフジコさんの代名詞的なリストやショパンではなく、幼い頃から馴染んできたモーツアルトだったのが印象的でした

フジコさんの言葉で一番印象に残ったのは、「楽譜通りに演奏しようとする人が多いけど、機械じゃないんですから間違ったっていいじゃない 楽譜の裏にある霊感を感じない人はだめよ」という言葉です 番組では、昨年の怪我がなければ、今ごろ 日本と欧州各国でコンサートツアーを実施しているはずだったことが紹介されました 92歳のフジコさんにとって最後のチャンスだったことを思うと、本人が一番無念だったと思います 今ごろ あちらの世界で、モーツアルトやショパンやリストに「私の演奏どうだった?」と訊いていることでしょう

ということで、わが家に来てから今日で3422日目を迎え、米共和党のトランプ前大統領は25日、政府の役割の極小化を求める第3政党「リバタリアン党」の全国大会で演説し、11月の大統領選での支持を訴えたが、演説中に聴衆からブーイングが起きて騒然となった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     共和党以外の人たちは トランプが私利私欲で政権運営をすることを知ってるからね

         

津村記久子著「ポトスライムの舟」(講談社文庫)を読み終わりました 津村記久子は1978年大阪府生まれ。大谷大学文学部国際文化学科卒業。2005年「マンイーター(「君は永遠にそいつらより若い」に改題)で第21回太宰治賞を受賞しデビュー 2008年「ミュージック・ブレス・ユー!!」で第30回野間文芸賞新人賞、09年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞を受賞

     

本書は2009年2月 講談社から単行本として刊行され、2011年4月に文庫化されました 「ポトスライムの舟」(100ページ)のほかに「12月の窓辺」(75ページ)が収録されています

『ポトスライムの舟』(「群像」2008年11月号 初出)

29歳のナガセ(永瀬由紀子)は「時間を金で売る」空しさを抱えながら契約社員として工場に勤務する傍ら、友人のヨシカが営むカフェでアルバイトをしたり、データ入力の内職をしたり、パソコン教室の講師をしたりして働いている ナガセは就職氷河期に新卒で入社した会社で上司から凄まじいパワーハラスメントを受けて退社したという過去をもっている ナガセはある日、NPO法人が主催する世界一周クルージングのポスターを見て、自分の手取り年収と世界一周クルージング旅行の費用がほぼ同じ163万円であり、「1年分の勤務時間を世界一周という行動にも換算できる」ことに気づく それ以来、彼女はそのことが頭から離れなくなり、世界一周クルージングの費用を貯めるため節約に励む しかし、大学時代の友人・りつ子が家庭不和から子連れでナガセの家に転がり込んできたことで思わぬ出費が嵩む しかし、りつ子はいずれ仕事を見つけて娘とともに出ていき、ナガセはわずかながらボーナスも出たので、クルージングの資料請求書のハガキを取りに行くのだった

本書を読んで印象に残ったのは主人公の名前の呼び方です 最初に永瀬由紀子と1度だけ登場した後は、ナガセとカタカナ表記で統一されます。それは「記号」であり、固有名詞ではなく「一般名詞」のようであり、あたかもナガセと同じように就職氷河期を経験し正社員になれなかった若者たちの「代名詞」のように響きます もう一つ印象的なのは、著者が大阪生まれということもあり、会話が大阪弁で交わされていて、ほんのりとして人間の温かさを感じさせることです

タイトルの「ポトスライムの舟」は、ナガセが毎日 観葉植物のポトスに水やりをしていることから付けられていますが、なぜ「舟」が付いているのかは不明です ただ、著者がナガセに言わせている次の言葉がタイトルのポイントです

「玄関にも、ナガセの部屋にも、そして工場のロッカールームにもポトスは置いてある どれもこれもが、安いコップに差して水を替えているだけだが、まったく萎れる様子がない。改めて、ポトスはすごい、と思う。好きではないが、すごい、と

不本意ながら複数の仕事を掛け持ちして堅実に生きているナガセは、地味ではあるが生命力の強いポトスに自分の生き様を重ねているのかもしれません

『12月の窓辺』(「群像」2007年1月号 初出)

ツガワは、郊外に本社がある300人程度の社員数を持つ印刷会社の支所で働いているが、職場の先輩のほとんどが年下であり、自分が会社に馴染めないことを痛感し、自己嫌悪に陥っていた ツガワはVという女性の係長から辛辣なパワーハラスメントを受け、ジワジワと追い詰められていく

本作は内容から「ポストライムの舟」の前日談とも考えられる作品です つまりツガワ=ナガセの物語であると解釈できるということです

これは読んでいて辛いものがありました ミスを謝っても許してくれない。ちょっとしたミスでも人前で罵倒し人格を否定する。辞めようとすると、先回りして「人手が足りない時に勝手に辞めるなよ」とくぎを刺す・・・こういう上司が相手だったら、どんなに給料が良くても絶対に辞めてやる、と思うでしょう

「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」が施行されたのは令和2年(2020年)なので、この作品が執筆された2007年時点には存在しませんでした しかし、同法施行後の現在においても多くの「ブラック企業」が存在していることは否定できません 現在でも 小説の格好の題材にされるていることに変わりありません

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高原英理著「不機嫌な姫とブルックナー団」を読む ~ あなたは「ブルックナー団員資格認定テスト」(全9問)に何問「はい」と答えられますか? / 楽器の費用 ~ NHK「突撃!カネオ君」から

2024年05月26日 00時01分02秒 | 日記

26日(日)。普段、ニュース以外はテレビを観ないのですが、昨夜NHKテレビ「突撃!カネオ君」でオーケストラを取り上げていたので観ました

番組では冒頭、日本国内では年間5500回もコンサートが開かれていることが紹介され、驚きました 楽器の話では、ヴァイオリンのストラディヴァリウスは22年のオークションで20億円で落札されたこと、弓は最も高価なものは1000万円もするという事実にも驚きました また、チェロは飛行機に乗る時は楽器専用の座席も確保しなければならず、15000円を自腹で払わなければならないので”痛い”という話には同情を禁じ得ませんでした 楽器をやるんだったらピッコロがいいかな また、オーボエ奏者は、湿度により楽器の音が変わるので、リードを削って何本も準備しなければならないのが大変であると語っていました シンバル奏者は出番が少ないが、反って緊張感を持続するのが大変なこと、またギャラは演奏する時間が長い弦楽器奏者等と同じであることから、冷たい視線に耐えなければならないことを語っていました シンバルの出番が少ない例としてドヴォルザーク「交響曲第9番”新世界より”」の第4楽章の序盤で、1度だけ弱音でシンバルが鳴らされることが紹介されました

この「シンバルの1打」をテーマにしたテレビ番組がありました。1975年2月2日放送「東芝日曜劇場」(第947回)で、脚本は倉本聰、主演はフランキー堺、タイトルは「ああ!新世界」です

「札幌市民会館の大ホールでのオーケストラ演奏会のステージに、10年ぶりにシンバルを手にした男が『新世界交響曲』の第4楽章でただ1回だけ鳴るシンバルのために、打楽器セクションに座っている。演奏が始まり、遂にその瞬間が来る・・・・」

彼はシンバルを叩くことが出来なかった、と記憶しています 人生いろいろ 男もいろいろ

ということで、わが家に来てから今日で3421日目を迎え、戦時中にも関わらずトップが交代したロシア国防省で、汚職などの容疑で幹部の逮捕が相次ぐ異例の事態となっている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     プーチン・ロシアは 国そのものが侵略・強奪・誘拐・破壊主義だから 当然の帰結

 

         

高原英理著「不機嫌な姫とブルックナー団」(講談社文庫)を読み終わりました 高原英理は1959年、三重県生まれ。小説家、文芸評論家。立教大学文学部日本文学科卒。東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程後期修了。1985年「第1回幻想文学新人賞」受賞。1996年「第39回群像新人文学賞評論部門優秀作」受賞

     

この作品は2016年8月に講談社から刊行され、2024年4月に文庫化するにあたり一部を加筆・修正したものです

図書館の非正規職員として働く代々木たゆきはサントリーホールで開かれたクラシックコンサートで「ブルックナー団」を名乗る3人組に出会う 仲間扱いを邪険にあしらう たゆき だったが、かっこ悪いが「ブルックナー偏愛」を貫く3人のブルオタ(ブルックナーオタク)の姿に感化され、翻訳家に憧れたかつての気持ちを思い出す

「ブルックナー団」のメンバーは、最初に たゆき に声をかけた武田一心、小太りの玉川雪乃進、小柄な一本橋完治という3人です

武田は「ブルックナー伝(未完)」という小説を執筆し、「ブルックナー団」公式サイトにアップしています    それは第1章「我が被りたる醜聞事件の顛末」、第2章「我が赴くは至上なる栄誉の地バイロイト」、第3章「ハンスリック、我が永遠の敵」、第4章「史上最悪なる我がコンサートの果てに」、エピローグ「我が願えるはただ遠き後の日」から構成されています

第1章では、素朴な中年の独身男ブルックナーが少女へのセクハラ言動の疑いで職を追われそうになる顛末を描いています 第2章では、尊敬するワーグナーに交響曲第2番と第3番を献呈するためにバイロイトに赴いた時のエピソードを描いています 第3章では最初はブルックナーに好意的だった評論家ハンスリックが、ブルックナーがワーグナーを崇拝していることを知るや反旗を翻し、厳しい批評を加えるようになった顛末を描いています 第4章では交響曲第3番を自らの指揮でウィーン・フィルを振って初演した時の失敗談を描いています エピローグでは、交響曲第7番の成功によりようやく作曲家として認められたブルックナーだったが、ハンスリックからの厳しい批評が続き、指揮者は長すぎる交響曲の一部カットを求め、ブルックナーはそれに従わざるを得なかったこと。しかし、いつの日か原典版を未来の聴衆が認めることになるだろうという希望が描かれています

本書のストーリーは、上記の「ブルックナー伝」の各章を随所に挟みながら展開していきます

そもそも最初に武田が たゆき に声をかけたのは、女性がブルックナーを聴きに来ること、しかも一人で聴きに来ることが珍しかったからです 休憩時間に長蛇の列ができるのは決まって男子トイレです 私がブルックナーの交響曲のコンサートで初めて男子トイレに長蛇の列ができると認識したのは、40年近く前のことです その時一緒に聴いていた友人が「ブルックナーの時は男子トイレが混むよね」といったのを強烈に覚えています。それ以来、私は「ブルックナー公演における男子トイレ長蛇の列の法則」と呼んでいます

クラオタ(クラシック・オタク」の中でもブルックナーの場合は「ブルオタ」(正式には「ブルヲタ」らしい)と呼ばれます カーテンコール時の指揮者単独の登場は「一般参賀」と呼ばれています。天皇誕生日などの際、皇居で天皇が出てきて、押しかけた民衆に手を振る行為になぞらえている言葉です ブルックナー公演に限らず見られる光景ですが、ブルックナーの場合はほぼ必ず見られる光景です

なお本書には「ブルックナー団員資格認定テスト」(全9問)というのが掲載されていて、ブルックナーに関する知識を試すことが出来ます それは次のようなものです

あなたのブルックナーマニア度を確かめます。次のアンケートにお答えください(「はい」「いいえ」のどちらかを選ぶ)。

①ブルックナーの交響曲は全曲、全楽章ごとに主題の区別ができる。

②ブルックナーの音楽を録音したCDを100枚以上持っている。

③ブルックナーの交響曲の版ごとの違いがすべてわかる。

④ブルックナーの曲がプログラムにある演奏会に年20回は行く。

⑤交響曲は形式の明快さより、よいフレーズの繰り返しと多彩な和声の工夫をこそ聴きたい。

⑥音楽さえ良ければ作曲家の外見は全く問題ではない。

⑦交響曲第3番初演、と聞くと涙が止まらない。

⑧エドゥアルト・ハンスリックを一生の敵と考えている。

⑨ブルックナーの弟子の名前を5人以上言える。

いかがですか? 私は②が103枚で「はい」、⑥も外見は問題ないので「はい」、それ以外は「いいえ」でした とてもブルオタの域には達していません

本書はブルックナーの人物像とともにブルオタの性癖(?)がよく描かれています ブルオタとその予備軍の必読書と言ってもよいでしょう    なお、本書は「ビニ本」です。懐かしい響き 文庫本全体がビニールで覆われていて 中を立ち読みすることができません これは講談社の販売方針です。買うしかありませんね

なお、私はいつも本を読む時は予習CDを聴きながら読んでいますが、この本に限ってはブルックナーのCDを聴きながら読みました

     

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佐藤正午著「彼女について知ることのすべて」を読む ~ 「その夜わたしは人を殺しに車を走らせていた」で始まる450ページの長編小説 / 『凝り』と『張り』とは違う ~ 腰痛対策として安静に過ごします

2024年05月25日 00時03分42秒 | 日記

25日(土)。毎朝通っている整骨院のA院長の口癖は「腰痛、捻挫、怪我は1週間で治る」というものです 「極端な例を挙げると、帝王切開により切った傷は1週間で回復する。これと同じように体の内部の傷は1週間あれば回復する」という理論です 院長の説明によると、「『凝り』と『張り』とは違う。『凝り』は筋肉が緊張して固まっている状態で、マッサージでほぐすことができる 一方『張り』は筋肉に傷がついている状態なので、傷を治すには筋肉を休ませるしかない したがって、1週間できるだけ安静に過ごすことがベスト」ということです 腰痛の場合、1週間の途中で長時間座ったりすると、また悪化するので、その日から1週間安静にすることになり、長引く原因となるとのことです

腰痛にとって一番悪いのは長時間座ることです   コンサート鑑賞、映画鑑賞、喫茶店での読書・・・すべて腰痛にとって悪いことばかりです    私の場合、ほぼ毎日のように腰痛に悪い事ばかり続けていることになります 「昨夜はコンサートを聴いて~」とか「昨日は映画を観て~」とか先生に言ったことはありません 「そんなことばかりやってるから、いつまで経っても腰痛が治らないんですよ」とキツイ忠告を受けることが火を見るよりも明らかだからです 言い訳は、せいぜい「昨日は喫茶店で新聞を読む時間が長すぎました」くらいです しかし、A先生は患部を手で触るだけで前日、座りっぱなしだったことが分かってしまうのです もう20年以上の付き合いになるので、何でもバレバレです

幸いコンサート通いは23日(木)で一旦区切りがついて、24日(金)から29日(水)までの6日間全く予定がありません これを機会に、できるだけ安静にして過ごしたいと思います 昨日も 公開されたばかりの映画「関心領域」を観に行く予定でしたが、グッと我慢して家で読書をして過ごしました 読書以外は、Netflixで映画を観る(多分立ったまま)ことがあるかもしれません

ということで、わが家に来てから今日で3420日目を迎え、ロイター通信は、米上院の財政委員会と予算委員会が23日、トランプ前大統領が10億ドルの献金を受ける見返りとして石油業界に環境規制緩和などを提案したと報道されている問題について、調査を開始したと報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプは 多額の選挙費用と4つの裁判費用を捻出するためなら 何でもやる男だ

 

         

昨日、夕食に隔週金曜日のローテにより「鶏の唐揚げ」を作りました 今回も外カリカリ内ジューシーに仕上がり、とても美味しく出来ました

     

 

         

佐藤正午著「彼女について知ることのすべて」(光文社文庫)を読み終わりました 佐藤正午は1955年 長崎県佐世保市生まれ。1983年「永遠の1/2」ですばる文学賞を受賞しデビュー。   2015年「鳩の撃退法」で山田風太郎賞を、2017年「月の満ち欠け」で直木賞を受賞   「Y」「身の上話」「ジャンプ」など著書多数

この作品は1995年7月に集英社から刊行され、1999年1月に集英社文庫として出版されました

     

ロサンゼルス・オリンピックが開催された1984年夏、小学校の教員である鵜川勉は、その夜 人を殺しに車を走らせていた    その途中、突然の停電のため暗闇が街を襲う。そして2時間後、事件は鵜川抜きで起こってしまっていた    鵜川は同僚の笠松三千代と婚約していたが、新たに現れた看護婦・遠沢めいに惹かれて付き合うようになっていた しかし彼女にはしつこくつきまとう愛人・真山がいた 鵜沢とめいは真山の殺害計画を企てるが、鵜沢は突然のアクシデントにより彼女との約束を守れず、めいが単独で実行した。めいは逮捕・収監されるが鵜沢の名前を出さなかったため、鵜沢は罪に問われなかった 8年後、鵜川と服役を終えためいは真山が埋葬されている墓地で再会する

佐藤正午の小説の大きな特徴の一つは「書き出し」です この小説は、「その夜わたしは人を殺しに車を走らせていた」で始まります 冒頭から読者は一気に物語に引き込まれていきます そこから「なぜ”わたし”が人を殺しに行かなければならないのか」が、過去に遡って語られていきます そして再び、最初の時点に戻るのは、なんと(文庫の)300ページです そこには「その夜わたしは真山を殺すために車を走らせていた」と書かれています このように、時間の経過とともに物語を進めていくのではなく、時間の順序を入れ換えて、事件を再構成していくやり方も佐藤正午の大きな特徴です もう一つの大きな特徴は、微細なディテールの積み重ねと意外な展開です 藤沢めいは収監される時、妊娠していた。しかしその子の父親は鵜川なのか真山なのか

本書は450ページを超える長編小説ですが、ミステリータッチで先の展開が読めません とても1日では読み切れませんでしたが、ほとんど一気読みでした 佐藤正午特有の文章表現に慣れると病みつきになります 幅広くお薦めします

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