朝日新聞電子版「アサヒ・コム」が次のように報じた。「福島沖の海底土壌から高濃度セシウム 海水は基準超えず」 6月3日付。
「福島県は6月3日、同県いわき市四倉の沖合 1.7キロ、深さ 20mの海底土壌から、1キログラムあたり 9271ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。県によると海底の土壌については安全性の基準がなく、魚介類などに影響が出るかどうか今後、調べると言う。/県は5月下旬、海底土壌と海水を測定。いわき市四倉の沖 1キロ、深さ 10mの土壌からは同 6003ベクレル、同市江名の沖 2.6キロ、深さ 20mの土壌からは同 4653ベクレルが検出された。海水については、基準を超える放射性物質が検出された地点はなかったという。」
わたしは放射性物質についてまったくの門外漢ですが、「海底の土壌については安全性の基準がなく、魚介類などに影響が出るかどうか今後、調べる」。何と悠長なと、あきれかえらざるをえない。
かつての水俣病、大公害の記憶を失ってはいけない。工場から海に廃棄された汚染液の水銀が原因であった。水俣海域や徳山湾などで、海底土壌に沈殿した有害物質が海底海中の生態系のなかで、魚介類に蓄積された結果である。
中西準子氏は、当時の調査結果について「海水中のメチル水銀は、当時の検出基準では検出されないほど低かったが、魚や貝には高濃度に蓄積されており、生物濃縮のメカニズムが明らかにされた」
また徳山湾では、水銀で汚染された海底の土壌は浚渫処分が決定した。汚染土は深さ 1mまで浚渫され、埋め立て予定地に運ばれ「より汚染された土を封印するかたちで、埋め立てられた」。同様の工法は、福島県沖ではまず無理であろう。対象海域があまりにも広大すぎる。
セシウムも水深 200mまでの海域で海底に沈潜し、生物濃縮により小魚を喰うより大型の魚に、階段状に濃縮されていくという。海底の植物、プランクトン、貝や小魚、そして大型魚…。
遠く太平洋を漂流しているセシウム塊もあるという。福島原発 2号機のピットの亀裂から漏出した放射能総量だけでも、最低でも 10ペタ(1000兆)ベクレルである。
ところで海洋の放射能や生態学的研究を行う国立機関は、今年の 3月に廃止されていた。水口憲哉氏は「那珂湊放射生態学研究センターが海洋における環境放射能の挙動およびそれによる被ばく線量の推定等に関して、生態学的な調査研究を行う国の唯一の研究機関であった。あったというのは、平成22年度をもって廃止され存在しないからである」
例の事業仕分けであろうか。いまならまだ間に合う。この研究機関は、復活させるべきだと思います。
水口氏はセシウム 137の拡散予測について、水深 200mまでの濃度をみていくと、5年後には北太平洋の真ん中を高汚染水塊は東進。10年後にアメリカ西海岸に到達し、30年後には太平洋、インド洋はもとより、大西洋にも広がる。
日本近海ではこれから 2~3年の内に海に流された放射性物質、特にセシウム 137について、いろいろな場所と魚種で測定値が次々と報告されてくる。魚の体内に蓄積されてから現れるので、汚染漁の発見調査報告は遅れる。
全国各地で起こるであろう放射能汚染魚騒ぎへの対策を、急ぎ立てる必要がある。「魚を獲っても売れないという厳しく苦しいそして長い時間が、これから始まる」のかもしれないと記しておられる。
かつて有機水銀に汚染された徳山湾では、責任企業による全魚介類の買い上げが行われた。当然だが、企業にはそれらの処分に万全細心の注意が必要だが。
今回の東電事故でも、生産者事業者の損害を賠償するのは当たり前だが、生産可能な農漁業者から、東電が買い上げるというのも一法ではないかと思う。かつてと同様な、札束で釣るようなやり方、賠償という無労働の金銭保障によって働き生産することの喜びを奪われるより、買い手があるのなら誰でも働きたい。
もし全生産物を東電が買いとってくれるなら、農漁業者にとって東電は唯一の大切なお客さまになる。東電糾弾の罵声はおそらくその内、聞こえなくなるであろう。
参考書
○「海のチェルノブイリ」水口憲哉(東京海洋大学名誉教授)「世界」6月号
○『環境リスク論』中西準子著(元東京大学環境安全研究センター教授・産業技術総合研究所フェロー) 1995年 岩波書店
<2011年6月5日>
※追記<6月6日>
新聞切り抜きを整理していましたら、日経新聞「海底からも放射性物質 宮城沖の一部で100倍」( 5月28日)が出てきました。数値があまりに低いので、無視していたようです。
文部科学省は5月27日、宮城県気仙沼市沖から千葉県銚子市沖にかけた広域で測定した海底の土の放射性物質の濃度をはじめて公表した。調査は5月9日から14日。12カ所で深さ30~200mの海底の土を採取し、セシウム 137の濃度を調べた。
福島第1原発の沖合30キロで最も高く、土1キログラムあたり 320ベクレル。同原発から約60キロ離れた宮城県沖合で 110ベクレル、気仙沼市沖合で 7ベクレル。千葉県銚子市沖合で 1.9ベクレルだった。
この文科省のデータと、上記の福島県調査ではケタが違う。信じられない。なぜこのような大きな差異がでるのでしょうか。
※同日追記 京都大学の小出裕章氏は、海の汚染を調べるのは「まず海藻からだ。海藻は移動しないからよくわかる」。YouTube 5月31日 「福島原発 海洋汚染について」
※6月11日追記「原子力安全・保安院 6月6日発表」
事故発生から数日間で、大気中に放出された放射性物質の量は、77万テラベクレル(テラは1兆)と、従来の推計を2倍以上に原子力安全・保安院は上方修正した。
これらは地上や海上に落下した。原発周辺では雨水とともに現在も海に流れ出ている。地下水に混じり、また土壌から河川に流出し、海に注いでいるものもある。
「福島県は6月3日、同県いわき市四倉の沖合 1.7キロ、深さ 20mの海底土壌から、1キログラムあたり 9271ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。県によると海底の土壌については安全性の基準がなく、魚介類などに影響が出るかどうか今後、調べると言う。/県は5月下旬、海底土壌と海水を測定。いわき市四倉の沖 1キロ、深さ 10mの土壌からは同 6003ベクレル、同市江名の沖 2.6キロ、深さ 20mの土壌からは同 4653ベクレルが検出された。海水については、基準を超える放射性物質が検出された地点はなかったという。」
わたしは放射性物質についてまったくの門外漢ですが、「海底の土壌については安全性の基準がなく、魚介類などに影響が出るかどうか今後、調べる」。何と悠長なと、あきれかえらざるをえない。
かつての水俣病、大公害の記憶を失ってはいけない。工場から海に廃棄された汚染液の水銀が原因であった。水俣海域や徳山湾などで、海底土壌に沈殿した有害物質が海底海中の生態系のなかで、魚介類に蓄積された結果である。
中西準子氏は、当時の調査結果について「海水中のメチル水銀は、当時の検出基準では検出されないほど低かったが、魚や貝には高濃度に蓄積されており、生物濃縮のメカニズムが明らかにされた」
また徳山湾では、水銀で汚染された海底の土壌は浚渫処分が決定した。汚染土は深さ 1mまで浚渫され、埋め立て予定地に運ばれ「より汚染された土を封印するかたちで、埋め立てられた」。同様の工法は、福島県沖ではまず無理であろう。対象海域があまりにも広大すぎる。
セシウムも水深 200mまでの海域で海底に沈潜し、生物濃縮により小魚を喰うより大型の魚に、階段状に濃縮されていくという。海底の植物、プランクトン、貝や小魚、そして大型魚…。
遠く太平洋を漂流しているセシウム塊もあるという。福島原発 2号機のピットの亀裂から漏出した放射能総量だけでも、最低でも 10ペタ(1000兆)ベクレルである。
ところで海洋の放射能や生態学的研究を行う国立機関は、今年の 3月に廃止されていた。水口憲哉氏は「那珂湊放射生態学研究センターが海洋における環境放射能の挙動およびそれによる被ばく線量の推定等に関して、生態学的な調査研究を行う国の唯一の研究機関であった。あったというのは、平成22年度をもって廃止され存在しないからである」
例の事業仕分けであろうか。いまならまだ間に合う。この研究機関は、復活させるべきだと思います。
水口氏はセシウム 137の拡散予測について、水深 200mまでの濃度をみていくと、5年後には北太平洋の真ん中を高汚染水塊は東進。10年後にアメリカ西海岸に到達し、30年後には太平洋、インド洋はもとより、大西洋にも広がる。
日本近海ではこれから 2~3年の内に海に流された放射性物質、特にセシウム 137について、いろいろな場所と魚種で測定値が次々と報告されてくる。魚の体内に蓄積されてから現れるので、汚染漁の発見調査報告は遅れる。
全国各地で起こるであろう放射能汚染魚騒ぎへの対策を、急ぎ立てる必要がある。「魚を獲っても売れないという厳しく苦しいそして長い時間が、これから始まる」のかもしれないと記しておられる。
かつて有機水銀に汚染された徳山湾では、責任企業による全魚介類の買い上げが行われた。当然だが、企業にはそれらの処分に万全細心の注意が必要だが。
今回の東電事故でも、生産者事業者の損害を賠償するのは当たり前だが、生産可能な農漁業者から、東電が買い上げるというのも一法ではないかと思う。かつてと同様な、札束で釣るようなやり方、賠償という無労働の金銭保障によって働き生産することの喜びを奪われるより、買い手があるのなら誰でも働きたい。
もし全生産物を東電が買いとってくれるなら、農漁業者にとって東電は唯一の大切なお客さまになる。東電糾弾の罵声はおそらくその内、聞こえなくなるであろう。
参考書
○「海のチェルノブイリ」水口憲哉(東京海洋大学名誉教授)「世界」6月号
○『環境リスク論』中西準子著(元東京大学環境安全研究センター教授・産業技術総合研究所フェロー) 1995年 岩波書店
<2011年6月5日>
※追記<6月6日>
新聞切り抜きを整理していましたら、日経新聞「海底からも放射性物質 宮城沖の一部で100倍」( 5月28日)が出てきました。数値があまりに低いので、無視していたようです。
文部科学省は5月27日、宮城県気仙沼市沖から千葉県銚子市沖にかけた広域で測定した海底の土の放射性物質の濃度をはじめて公表した。調査は5月9日から14日。12カ所で深さ30~200mの海底の土を採取し、セシウム 137の濃度を調べた。
福島第1原発の沖合30キロで最も高く、土1キログラムあたり 320ベクレル。同原発から約60キロ離れた宮城県沖合で 110ベクレル、気仙沼市沖合で 7ベクレル。千葉県銚子市沖合で 1.9ベクレルだった。
この文科省のデータと、上記の福島県調査ではケタが違う。信じられない。なぜこのような大きな差異がでるのでしょうか。
※同日追記 京都大学の小出裕章氏は、海の汚染を調べるのは「まず海藻からだ。海藻は移動しないからよくわかる」。YouTube 5月31日 「福島原発 海洋汚染について」
※6月11日追記「原子力安全・保安院 6月6日発表」
事故発生から数日間で、大気中に放出された放射性物質の量は、77万テラベクレル(テラは1兆)と、従来の推計を2倍以上に原子力安全・保安院は上方修正した。
これらは地上や海上に落下した。原発周辺では雨水とともに現在も海に流れ出ている。地下水に混じり、また土壌から河川に流出し、海に注いでいるものもある。