神戸から京都に引っ越してきて、もう四半世紀になりました。二十幾年の間、京都ではこれまで三匹の犬と暮らしてきましたが最初はチョコちゃん。雑種でしたが敏しょうで賢い。近所の小畑川を三段跳びで渡る犬として有名で、女子中高生からは「バンビちゃん」の愛称でかわいがられました。
チョコがわが家に来たとき、息子の三男坊はまだ三歳。いまは二十歳代なかばですが、「物ごころがついたらチョコがいた」といっています。三歳のときから十五年の間、室内で同居しましたから、メスのチョコはずっと彼の妹だったのです。
つぎが黒いトイプードルのココ。知人が犬夫妻を飼っており、子どもが三匹産まれた。その片割れのメスをいただきました。しかし残念なことに一昨年に行方不明になってしまいました。原因は当方の不注意です。本当にココには申し訳なく、いまでも彼女のことを思い出すと胸が痛みます。四方八方に手をつくして探索し、面識のない方からいくつもの情報も提供されたのですが発見できませんでした。
そして三匹目がいま室内を駆け回っている茶色トイプードルのノンです。ペットショップを十軒ほども見て回り、いちばん気にいった女の子でした。もう一年半ほど一緒に暮していますが、実の子どもたちよりも余程かわいい。
ネコのことはこれまで一度も飼ったことがないので、さっぱりわかりません。祖父母の代から犬しか飼わないのです。成り行きで犬派になっただけで、ネコ派に対する偏見などはありません。言い訳まで。
わたしが生まれたとき、故郷の家にはすでに年上の犬が住んでいました。シロという雑種です。小学生のときまで元気でしたが、彼女は延々と年長で、わたしの姉だったのです。
シロのつぎはタロウでした。学校を出て社会人になって、先輩と話していたら彼は「生まれた子どもの名がやっと決まりました。太郎にしました」。それでわたしは「わが家の犬もタロウです。同じですね」といって、ヒンシュクをかいました。タロウもずいぶん賢く、南極犬のタロやジロと比べても遜色はないなどとほめたたえていました。人間の太郎君はもう中年で、子も大きくなっていることでしょうね。
近ごろ、犬を飼うひとがずいぶん増えました。近所を散歩しても、棒でなく犬に当たりそうになる。「日本では子どもの数より、飼い犬の方が数が多い」ともいいますが、実感します。
人間と犬、何ともふしぎな関係ですね。両者の交流、機縁はおおよそ1万5千年前、あるいは3万年前には始まっていたともいいます。人間が最初に友とした動物は犬です。
ネコも馬も牛やニワトリも、人間との深い付き合いはわずか数千年の歴史しかない。はじめてネコが日本列島に渡来したのは千数百年前です。古墳時代に中国か朝鮮半島から仏典などが招来したとき、大切な経をかじるネズミ除けに同船させられたためのようです。それまでこの国にはネコはいなかった。チュー害対策だったのです。
犬と人間の数万年の交流や、現代のパートナーとしてのワンコ。愛犬ノンと日々たわむれながら、そんなことを書いてみようかと近ごろ思っています。
<2013年3月18日>
チョコがわが家に来たとき、息子の三男坊はまだ三歳。いまは二十歳代なかばですが、「物ごころがついたらチョコがいた」といっています。三歳のときから十五年の間、室内で同居しましたから、メスのチョコはずっと彼の妹だったのです。
つぎが黒いトイプードルのココ。知人が犬夫妻を飼っており、子どもが三匹産まれた。その片割れのメスをいただきました。しかし残念なことに一昨年に行方不明になってしまいました。原因は当方の不注意です。本当にココには申し訳なく、いまでも彼女のことを思い出すと胸が痛みます。四方八方に手をつくして探索し、面識のない方からいくつもの情報も提供されたのですが発見できませんでした。
そして三匹目がいま室内を駆け回っている茶色トイプードルのノンです。ペットショップを十軒ほども見て回り、いちばん気にいった女の子でした。もう一年半ほど一緒に暮していますが、実の子どもたちよりも余程かわいい。
ネコのことはこれまで一度も飼ったことがないので、さっぱりわかりません。祖父母の代から犬しか飼わないのです。成り行きで犬派になっただけで、ネコ派に対する偏見などはありません。言い訳まで。
わたしが生まれたとき、故郷の家にはすでに年上の犬が住んでいました。シロという雑種です。小学生のときまで元気でしたが、彼女は延々と年長で、わたしの姉だったのです。
シロのつぎはタロウでした。学校を出て社会人になって、先輩と話していたら彼は「生まれた子どもの名がやっと決まりました。太郎にしました」。それでわたしは「わが家の犬もタロウです。同じですね」といって、ヒンシュクをかいました。タロウもずいぶん賢く、南極犬のタロやジロと比べても遜色はないなどとほめたたえていました。人間の太郎君はもう中年で、子も大きくなっていることでしょうね。
近ごろ、犬を飼うひとがずいぶん増えました。近所を散歩しても、棒でなく犬に当たりそうになる。「日本では子どもの数より、飼い犬の方が数が多い」ともいいますが、実感します。
人間と犬、何ともふしぎな関係ですね。両者の交流、機縁はおおよそ1万5千年前、あるいは3万年前には始まっていたともいいます。人間が最初に友とした動物は犬です。
ネコも馬も牛やニワトリも、人間との深い付き合いはわずか数千年の歴史しかない。はじめてネコが日本列島に渡来したのは千数百年前です。古墳時代に中国か朝鮮半島から仏典などが招来したとき、大切な経をかじるネズミ除けに同船させられたためのようです。それまでこの国にはネコはいなかった。チュー害対策だったのです。
犬と人間の数万年の交流や、現代のパートナーとしてのワンコ。愛犬ノンと日々たわむれながら、そんなことを書いてみようかと近ごろ思っています。
<2013年3月18日>