ネット社会となり、最新情報が素早(すばや)く入手できる世の中になった昨今(さっこん)、私達は得た最新情報を利用し、右や左と行動をしている。もはや、最新情報を抜きには語れず、相手を交えた会話にも取り残されてしまう厄介(やっかい)な時代に立ち至っている。個人も企業も国も地方自治体も、さらには情報を得て動く警察、消防、気象etc.最新情報を必要とする人々は枚挙(まいきょ)に暇(いとま)がない。
公園の長閑(のどか)な木漏(こも)れ日の中、二人の初老の男がベンチに座り、暇(ひま)そうに話をしている。
「いやぁ~、売り切れならいいんですがね。この駅では販売してませんっ! と、こうですわっ! すみません」
「ははは…そうでしたか。久々の駅弁・・楽しみにしとったんですがねっ!」
「まあ、手ぶら・・というのもなんなんで、コンビニ弁当は買ってきました…」
「腹が膨(ふく)れりゃ、なんでもよかったんですがね。…いや、残念! 駅弁の夢を見たもんで、つい食べたくなりまして…」
「ははは…駅弁が夢に出ましたかっ!」
「はいっ! ははは…駅弁が歩いとりました。それで、起きて早速(さっそく)、ネットで駅販売の確認をしたんですがねっ!」
「どうでしたっ?」
「いや、それが、出ていたことは出ていたんですがね。10年ほど前から更新のないホームページで、こんなことに…」
「なるほどっ! 古い情報でしたか。10年前は売られていたんだ…」
「ええ、まあそのような…。私のうっかりミスでした」
「ははは…最新情報は大事ですなっ!」
二人はすっかり話に夢中になり、時の経つのを忘れてしまっていた。
「あっ! もうこんな時間か…。食べますかっ?」
「ああ、そうしましょう…」
二人が食べ始めたそのときである。喉(のど)を潤(うるお)すお茶がないことに二人は気づいた。
「しまった! 弱りましたな…」
「水道の水をフタで…」
一人の男の提案を詳述(しょうじゅつ)すれば、こうである。コンビニ弁当の人工樹脂のフタをコップがわりにし、水道の水を注(そそ)ぎ入れて飲む・・というものだ。
「そりゃ、いい!」
二人はニンマリと笑(え)みを浮かべた。が、それは甘かった。水道は、ひと月前から断水していたのである。二人は最新情報を知らなかった。
最新情報の確認は大事・・ということだ。^^
完