水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

暮らしのユーモア短編集-40- やらねばっ!

2018年06月24日 00時00分00秒 | #小説

 日々、暮らしていると、どうしてもやらねばっ! と、思うことがある。そのときやっていることがあると、まあ、あとからでもいいか…と気になりながらも後(あと)回しにすることが多い。そうこうして、やっていることが済んだとき、すでに時間がない場合がある。次の生活時間に追われている・・という場合だ。さて、そのとき、どう対処(たいしょ)するかだが、これは人それぞれで、当然、異(こと)なってくる。
 とある家庭の一場面である。
「あなたぁ~~!! ご飯よぉ~~!!」
「分かってるぅ~~!!」
 夫(おっと)は妻(つま)の声がかかる前にキッチンへ向っていたのだが、ふと、やることを思い出し、それをガサゴソと居間でやり出したとき、妻の声が飛んできたのである。夫は、やらねばっ! と意気込むと、そのまま続けた。
「なによぉ~~! ちっとも分かってないじゃないっ!!」
 いっこうキッチンへ来ない夫に業(ごう)を煮(に)やした妻は、プツプツと小言(こごと)を言いながら居間へやってきた。
「それはそうなんだけどな…。お前、ここへ入れておいた小物入れ、知らないかっ?」
 夫は居間の押し入れを開け、四つん這(ば)いの姿勢で頭を暗闇(くらやみ)へ突っ込み、ガサゴソとやりながら言った。
「小物入れぇ~? そんなの、知らないわよっ!」
「そうかぁ~? 妙だなぁ~~?」
「あっ!! 思い出したっ! この前の掃除のとき、外の物置に入れたわっ、確か…」
「なんだっ! そうか…」
 夫は動きを止め、押し入れから出た。さて、その後、夫はどうしたかである。夫のやらねばっ! と食欲の鬩(せめ)ぎ合いが夫の頭の中で錯綜(さくそう)した。結果は水入りのあと、やらねばっ! の浴びせ倒しの勝ち・・であった。まあ、この夫のやらねばっ! は横綱の食欲には、まだまだ・・という程度の強さということになる。やらねばっ! 頑張れっ! と応援したい。^^

                                


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