水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

暮らしのユーモア短編集-24- 連休

2018年06月08日 00時00分00秒 | #小説

 どういう訳か、人がザワザワと動き出すのが連休というやつだ。各地の高速道路に渋滞(じゅうたい)が起こり、料金を払って早く目的地へ着けず、いや、それどころか、普通の道路を走っているより遅く着く・・という結果が分かっているにもかかわらず、人々は我先にっ! と、馬鹿のように高速道路へと群(むら)がるのである。この民族はアホなのかっ!? と、思わず首を傾(かたむ)けたくなるような現象だが、懲(こ)りもせず、連休ともなれば毎年、必ず起こるのだから不思議だ。
 お隣(となり)同士の会話である。
「そろそろソワソワする季節ですなっ! 綿岡さん」
「ああ、これは絹川さんっ! ははは…まあ、そういうことです」
「また、高速ですかっ?」
「いや、今年は、のんびり出ようと思っとります」
「と、言われますと?」
「ははは…線路を、ですわっ!」
「なるほど、列車で、ですか。確かに、列車だと眠れますからなっ!」
「そうそう! 安全で確実です…」
「連休に疲れては、元も子もないっ!」
「ええ。それにしても、連休になると動きたくなるというのは、どうなんでしょうな?」
「条件反射・・というヤツじゃないですか?」
「パブロフの犬ですか?」
「まあ、犬に限(かぎ)ったことじゃないとは思いますが…」
「ははは…上手(うま)いっ!」
 連休はダジャレを生む暮らしの一場面でもあるようだ。

                                完


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