水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

暮らしのユーモア短編集-38- 空(あ)き時間

2018年06月22日 00時00分00秒 | #小説

 妙なことに、日々、暮らしていると、ひょんなことで空(あ)き時間が発生することがある。そんなときに限ってやることがなく、忙(いそが)しいときにアレコレとやることが多発して重なるものだ。これは、暮らしの中で生まれるある種の軋轢(あつれき)、柵(しがらみ)なのかも知れない。この空き時間を有効に使うには、二つばかり手法がある。その一つは、近々、処理しなければならないだろう…ということをメモって計画しておく・・という手法である。そしてもう一つは、とにかく仕事、やることを追う・・という手法だ。思いついたり気づいたことは時と場合を選ばず、やってしまうのである。と、どうなるか? といえば、空き時間が生まれても、やることがない・・というのは手法を考える以前と同じだが、そこには、ゆとり・・という気分が生まれる。すると、不思議なことに、思いもよらなかったやることを思いつく・・という奇妙な閃(ひらめ)きが生まれる。ゆとり・・が生み出す効果、いや有効、いやいや技(わざ)あり、いやいやいや…一本(いっぽん)なのである。
 地方ローカル線の列車旅行を楽しむ二人の旅人が無人駅に降り立った。
「弱ったな…。次の列車まで、まだ2時間もあるぞっ!」
「フフフ…なにも弱られることはありませんよ、砂底(すなそこ)さん。こういうこともあろうかと、事前に考えときました。この蛸墨(たこすみ)駅の前は、いい足湯があり、美味(うま)い味噌(みそ)田楽(でんがく)の店もあります。それを頬(ほお)張りながら冷たい生ビールでキュッ! と一杯やってますと、ほどよく次の列車に約30分となる計算ですっ!」
「緻密(ちみつ)だねぇ~、君(きみ)はっ!!」
「はいっ! これが唯一(ゆいいつ)の僕の取り得(え)ですから…」
 砂底は平目(ひらめ)の言葉に、いいのを連れて来たな…と思った。
 空き時間の有効利用は、人生を有意義に生きることにも繋(つな)がるようだ。^^

                                


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