とある高校の進路指導室である。担当の教師が一人の生徒と対峙(たいじ)して座り、データらしきファイルを見ながら相談に乗っている。
「…まあ、この偏差値からすればだっ! すればだよ、君。飽くまでも、すればっ! の話だ。するんじゃないよっ! すればだっ!」
「はいっ!」
「うん! すれば、ソノ大学というのは、どうなんだろうねぇ~」
「ダメでしょうか?」
「まあ、努力次第ということもあるからダメとは言わんが。ははは…マグレ、奇跡ってこともあるにはあるしなっ!」
「あるんですかっ?」
「ああ、あるにはあるが、マグレ、奇跡が起こる確率が極(きわ)めて低いっ!… 確率は数3だったな、確か…。まあ、関係はないがっ。そこへいくと、コノ大学だと、ほぼ100%大丈夫なんだがな…」
生徒は大学もさりながら、この教師、大丈夫かっ! と瞬間、思った。
「分かりました。…考えてみます。どうも有難うございました」
生徒にとって全然、あり難くなかったが、一応、そう言うと指導室を出た。生徒は努力してソノ大学を受けてみよう…と思った。なんとなく合格しそうな気がした。
完