水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

暮らしのユーモア短編集-21- 除草効果

2018年06月05日 00時00分00秒 | #小説

 朝早くから田所(たどころ)は伸び始めた裏地の草を小まめに鎌(かま)で除草していた。
「ご精が出ますなっ!」
 そこへ声をかけたのは隣家の主人、沼田(ぬまた)だ。沼田の手には最新式の草刈機が持たれ、その先端部の刃(は)先は轟音(ごうおん)を立てて除草をしていた。
「ああ、これは沼田さん。いやいや、そちらこそ、ご精が出ます」
 お互いに紋切り型の挨拶を終えると、二人は離れて作業を続けた。
『ありゃ、時間がかかるな…』
 沼田はフフッ! と鼻であしらうように田所をチラ見した。
『ありゃ、すぐまた伸びるな…』
 その1分後、田所は田所で、フフッ! と鼻であしらうように沼田をチラ見した。
 確かに双方の発想は、どちらも間違ってはいなかった。ただ、効果として時間と持続性の違いがあった。田所の方は時間がかかりそうだったが、除草効果が長く、沼田の方は短時間で済みそうだったが、除草効果が短かった。
 どちらが、いいとも悪いとも言わないが、二度手間、三度手間・・とかかることを思えば、効果が長い方がいいのかも知れない。^^

                                完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする