暮らしの中で日々、過ごしていると、誰にも、ああなって欲しい…とか、こうなって欲しい…とかの期待感が生まれる。ただ、世の中は無情にもその期待感を達成させず、うち砕いたり、無意味にさせたり、ときには失望にも変えてしまうのだから怖(こわ)い。
「いや~、上手(うま)くいくと思っとったんですがね。そうは問屋が卸(おろ)しませんっ!」
「卸さなかったですかっ!」
「ええええ、そらもう、卸さないどころか、入り口に本日は臨時休業の張り紙ですわっ!」
「ははは…そりゃ、お気の毒なことでっ!」
「いやまあ…。お気の毒、と言われるほどの期待感は抱いとりませんでしたが…」
「ダメ元(もと)くらいの?」
「はあ、まあ…」
「それくらいで、よかったですよ。ぅぅぅ…と泣きの涙の期待感もありますからなっ!」
「はあ。まあ孰(いず)れにしろ、期待感は低い方がよさそうですな」
「確かに…」
この男の残念だった期待感は20%引きの売れ残りパックの存在だった。
期待感にはセコいのもアリなのである。^^
完