春ともなれば爽(さわ)やかで気分のいい空気が流れる季節となる。暑くもなく、かといって寒くもない、思わずウトウトするような、恰(あたか)も猫じみた気分にさせる季節である。この気分を、人は心地(ここち)いい・・と表現する。
二人の老人が、いつものように公園の木漏(こもれ)日の下のベンチで寛(くつろ)いでいる。爽快(そうかい)な風が時折り、二人の頬(ほお)を撫(な)でる。
「なんか、いいですね…」
「はい…心地いいとは、まさにこの気分ですなぁ~」
「はい、確かに…」
「これ、買っときました…」
「おお! 今日は魚フライ・デラックス弁当ですかっ!」
「お気に召(め)しましたかな?」
「ええええ、そらもう…。家(うち)では文句(もんく)が言えませんからな…」
「義父的には食べない訳にも参りません」
「ははは…そういうことです」
二人はいつも、交互にお気に入りの弁当を買ってきて公園の下で食べるのが日課(にっか)だった。互いに金を請求しないのがルールとなっていた。曇りや雨、それに嵐の日は公園前の市立・憩(いこ)いの里と呼ばれる施設内で食べたが、それが飽(あ)きもせず、日長一日・・いや、日長一年続いていた。これが二人にとって唯一(ゆいいつ)の心地いい習慣だったのである。
世の中の暮らしの中では、笑えるような心地いい場面が、いろいろと起こる。^^
完