水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

足らないユーモア短編集 (7)知恵

2022年07月01日 00時00分00秒 | #小説

 とある内閣の政府首脳は悩んでいた。当初予算の財源確保のいい知恵が浮かばないのである。そうはいっても、時期的に当初予算額の決定期限は迫っていた。
「まあ、仕方ないか…」
 ため息交じりに時の総理はそう呟(つぶや)くと、眠い目に目薬を注した。公債発行特例法の時限立法で逃げる策を、例年どおり暗に了承したのである。
「分かりました…」
 官房長官は静かにそう告げると、当たらず触らずだな…と思いながら欠伸(あくび)をしながら首相官邸をあとにした。かくして、その年も、例年に漏れず当初予算額は前年度+アルファで決定されたのである。雪だるま式に膨らむ償還金利子の二次国債発行により当初予算額が雪だるま式に増額されるのは必然で、仕方のない決断とも言えた。このままでは国の財政は健全化どころか破綻(はたん)への径(みち)を突き進むのではないか? 内閣の各官僚を前に総理は、足らない、何かが足らない…と思った。そこで総理は、ハッ! と自宅で目覚めた。すべてが夢だったのである。総理は寝室で、衆議院議員の任期は秋までだったな…と気づき、安堵(あんど)の胸を撫で下ろすとニンマリと微笑んだ。責任回避への道が開けたのである。^^
 かくして年々、足らない歳入財源確保の径は同じように続くことになり、ついに国は破綻した・・などとならないよう、知恵を絞っていただきたいものです。^^

                   完


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