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人間関係によるストレス(後編)

2019年07月11日 | 人生
(立場が上がるほど「悩みのスケール」が大きくなる)
小さなことにこだわり、傷つき、それを長く引っ張っている人というのは、ある意味で、暇人(ひまじん)です。そう言われると、もっと傷つくかもしれませんが、実際に、そのとおりです。暇なのです。「何年も何十年も、人から言われた言葉で悩むことができる」というのは、暇な証拠(しょうこ)です。忙(いそが)しい人には、そのようなことで悩んでいる暇などないのです。

例えば、一従業員(じゅうぎょういん)の場合、仕事で上司の課長から叱られただけでも、悶々と悩み、苦しむことがあるだろうと思います。

しかし、こうした不況期(ふきょうき)に、何千人、何万人もの従業員を雇(やと)っている経営者(けいえいしゃ)は、それどころではありません。「自分の会社が潰(つぶ)れて、何千人あるいは何万人の従業員が路頭(ろとう)に迷(まよ)うかもしれない」という悩みは、「誰かに悪口を言われた」などというようなレベルのものではないのです。

会社の危機(きき)がすぐそこまで迫っていたとしても、大勢(おおぜい)の社員たちは、そのことに、なかなか気づきませんが、経営者は、「このままでは会社が危(あぶ)ない」ということを知っているものなのです。

2010年に日本の某(ぼう)航空会社は、会社更生法(こうせいほう)の適用(てきよう)を申請(しんせい)していました。なぜなら、同年1月末に、100億円の資金(しきん)ショート(不足)を起こす見通しだったからです。

「資金が足りなくなる」ということは、「倒産(とうさん)する」ということです。すなわち、「リースしている飛行機が差し押さえられる」「飛行機の給油ができなくなる」「従業員の給料が払えなくなる」等の事態が起きる寸前(すんぜん)だったのです。

その航空会社は、公的援助(えんじょ)が入らなければ、100億円がショートするところだったので、急いで会社更生法適用を申請したのでしょう。

その場合、経営陣(じん)は大変です。もちろん、自分たちが辞(や)めなければいけないのは当然ですが、約5万人いる従業員のうち、三分の一の人に辞めてもらわなければいけない状況(じょうきょう)になったわけです。当時の経営陣は、夜も眠(ねむ)れなかったでしょう。

このように、立場が上がると、他人から批判や悪口を言われたとしても、そのことを、いちいち考えてはいられません。悩みのスケールが大きくなり、「大勢の人たちをどうするか」ということで悩むようになるのです。

こうしたことを考えると、「今、自分が悩んでいることは、トップの悩みに比(くら)べると、かなりスケールが小さい」ということが分かるのではないでしょうか。

もちろん、私は、「自分への批判や非難(ひなん)、悪口は完全に無視しなさい」と言っているわけではありません。その批判が、ある程度、当たっているものであれば、自分の向上に役立てるように使うべきです。それが最も生産的な方法です。

自分に対する批判が当たっている場合は、それを受け入れ、「自分を向上させる方向に使えないかどうか」を検討(けんとう)してみることです。これが一つです。

もう一つは、「批判に対して傷つきすぎない。傷を長く引っ張らない」ということです。それを引っ張りすぎることは罪であり、暇な証拠です。もっと前向きなことや積極的なことを考えていれば、いつまでも、そんなことにこだわってはいられないものなのです。

99パーセントの人は、あまりにも小さなことや、どうでもよいようなことのために、悩んだり、苦しんだり、喧嘩(けんか)をしたりしています。岡目八目と言いますが、一度、自分のことはさておいて、ほかの人のことを考えてみてください。そうすれば、そのことがよく分かると思います。

人というのは、家庭内の些細(ささい)な出来事や、職場でのちょっとした行き違い、他人のちょっとした言葉や行動などで傷つくものです。

「今、自分が悩んでいることは、つまらないトリビア(瑣末事:さまつじ)である」と見抜いたならば、トリビアはトリビアらしく、扱(あつか)わなければいけません。「ゴミ箱に捨(す)てるべきものは、ゴミ箱に捨てなければいけない。それを、宝物(たからもの)のように、後生(ごしょう)大事に持っていてはいけない」ということです。

悩みのうち1パーセントは、トリビアではなく、重要なものでしょう。それについては、しっかりと考えなければいけませんが、99パーセントは、取るに足らないものなのです。そのことを述(の)べておきたいと思います。

---owari---
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