今日も国際関係アナリスト・北野 幸伯さんのメルマガからお伝えします。
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全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは! 北野です。
皆さん、リトアニアという国をご存知ですか?
旧ソ連の国です。人口280万人の小国で、エストニア、ラトビアと共に、
「バルト三国」と呼ばれています。
このリトアニアから、中国の大使が本国に召還されました。
何があったのでしょうか?
理由は、こちらです。
日経新聞7月20日。
<台湾の外交部(外務省)は20日、バルト3国の一つのリトアニアに代表機関を設置すると発表した。事実上の大使館として機能する見込み。>
中国は、これに激怒して大使を召還したのですね。
リトアニアと中国の間に何があったのでしょうか?
<従来中国とは良好な関係にあったが、最近は特に人権問題で批判姿勢を強めている。
同国議会は5月、中国のウイグル族への弾圧を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定した。
さらに中・東欧17カ国の経済協力の枠組み「17+1」から離脱を宣言し、欧州連合(EU)に対して、中国との関係見直しも求めている。>(同上)
中国が
・ウイグル人100万人を強制収容している
・ウイグル女性に不妊手術を強制し
・事実上の「民族絶滅政策」を行っている
ことなどに反対しているのですね。
ちなみに、在米中国大使館は、「強制不妊手術」について、ウイグル人女性たちが
【 子作りの機械ではなくなった 】
として、中国政府の民族絶滅政策を支持しています。
(つまり、事実だと認めている。)
読売新聞オンライン2021年1月21日を見てみましょう。
<ロイター通信などは21日、米ツイッターが在米中国大使館のアカウントを凍結したと報じた。
新疆ウイグル自治区のウイグル族の女性について
「子作りの機械ではなくなった」
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などとする投稿があり、人間性を奪う内容だとして規約に違反したと判断したという。>
<トランプ前政権は19日、自治区での少数民族弾圧を国際条約上の「集団殺害(ジェノサイド)」に認定したとし、中国政府がウイグル族の女性に不妊手術を強制しているなどと批判した。
投稿は中国の政策を擁護していると受け取れる内容だったとみられる。>(同上)
ちなみにリトアニア、ラトビア、エストニアは、他の旧ソ連諸国と異なっています。
何でしょうか?
ロシア革命が起こったのは、1917年。
ソ連が建国されたのは、1922年。
ところが、リトアニア、ラトビア、エストニアがソ連の一部になったのは、1940年なのです。
しかし、1941年に独ソ戦がはじまり、バルト三国はドイツに占領されます。
1944年、ソ連軍がバルト三国からドイツを追い出し、再編入されました。
微妙です。
「あなたはナチスドイツの一部になりたいですか?それともソ連の一部になりたいですか?」
皆さんだったら、どう答えますか?
おそらく、「どっちの一部になるのも嫌だ!」と答えるでしょう。
リトアニア、ラトビア、エストニアの人たちもそうだったのです。
それで、ソ連の体制が揺らいでくると、真っ先に独立に動きました。
ソ連が崩壊したのは1991年12月。
リトアニアが「独立宣言」をしたのは、なんと1990年3月です。
独立達成後、彼らは迷うことなく、EU、NATOへの加盟をめざします。
彼らは、ソ連の後継国家ロシアを本当に恐れているからです。
リトアニアは2004年、EUとNATOに加盟しました。
ソ連とナチスドイツに翻弄された小国リトアニア。
高い人権意識をもっています。
「お金」と「人権」。
これは、本当に難しい問題です。
私たちのように、直接中国とビジネスしていない人は、
迷うことなく「人権だ」といえます。
しかし、中国と実際にビジネスしている国、企業にとって
「もちろん人権だ!」と言い切るのはとても勇気のいることです。
なんといっても、売上や利益が激減するリスクがあるのですから。
だから、ユニクロの柳井さんも、
「ウイグル問題は、人権問題ではなく政治問題だ」
などと、発言してしまうのでしょう。
お金は誰にとっても大事です。
しかし、リトアニアのように、大国の狭間で苦しんだ小国が声をあげた。
「いや、ウイグル人を100万人強制収容したらダメでしょ!
ウイグル女性に不妊手術を強制して、民族絶滅政策したらダメでしょ!
ジェノサイドしたら、ダメでしょ!」
「お金も大事だけど、もっと大事なことがある」
と気づき、声をあげる国が増えることで、世界は変わっていきます。
---owari---
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